バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

構造設計

柱・梁に生じる力と変形を理解する:曲げモーメント・せん断応力・軸応力

柱や梁などの構造部材は、重力や地震により作用する力に耐えなくてはなりません。 □■□疑問■□■ 構造力学の講義では「モーメント」、「せん断力」、「軸力」といった言葉がよく出てきますが、それぞれにいろいろな式があってよくわかりません。 □■□回答■□■ 構…

建物の力の流れを把握する:せん断・軸・曲げによる応力の伝達

建物に生じる重力や地震の力を地盤まで伝えるのが柱や梁などの構造部材の役割です。 □■□疑問■□■ 構造設計では「力の流れをイメージしろ」とよく言われます。具体的にどういったことを指すのでしょうか。 □■□回答■□■ 建物は地盤に支えられています。そのため…

人工知能は構造設計者になれるか?AIができること・できないこと

スーパーゼネコンの一角である竹中工務店が人工知能を活用し、「構造設計の中のルーチン的な作業の70%の削減」を目標に掲げました。 □■□疑問■□■ 近い将来、世の中のいろいろな職業が人工知能に取って代わられると予想されています。構造設計の仕事もなくなっ…

許容応力度がよくわかる:これだけは知っておきたい設計の基本

建物の耐震安全性を検証する方法はいくつかありますが、損傷するかどうかを検証するには「許容応力度」計算を行う必要があります。各部材に生じる応力度が許容応力度以下となっていることを確認する計算です。 □■□疑問■□■「許容応力度」がよくわかりません。…

実大の建物を揺らす疑似動的実験:ハイブリッドシミュレーションとは

解析技術がいかに進もうと、実験無くしては本当の特性は知り得ません。 □■□疑問■□■ 自動車は販売前に衝突試験を繰り返し、安全性の確認を行っています。建物ではどのように安全性の確認を行っているのでしょうか。 □■□回答■□■ 構造計算により安全性を確認し…

耐震スリット・構造スリットとは何か?スリットを入れてはいけない建物に注意

柱と壁の間、あるいは梁と壁の間にスリット(隙間)を設けることで建物の耐震性が向上する場合があります。 □■□疑問■□■ わざわざ建物にスリットを設けることで、どうして建物が地震に強くなるのでしょうか。隙間を埋めた方が強いように感じられます。 □■□回…

構造設計者になるなら知っておきたい建物の力のオーダー

解析ソフトを使えば誰でも構造計算が出来てしまう時代です。だからこそ、実際の建物の寸法、重さ、硬さ、空間、そういったものを感覚的に身に付けておきたいものです。 □■□疑問■□■ 建物のような大きな構造物が地震時に変形すると言われてもピンときません。…

南海トラフ地震で大都市圏が揺れる:長周期地震動の恐怖

東海地震から東海・東南海地震、東海・東南海・南海地震ときて、今では南海トラフ地震という巨大な規模の地震を想定するようになりました。 □■□疑問■□■ 東北地方太平洋沖地震のように、南海トラフでもマグニチュード9クラスの地震が起こるのでしょうか。 □■□…

建物の減衰とは何か:減衰係数と減衰定数の違いと各種減衰の紹介

地震が起こって建物が揺れても、台風が来て建物が揺れても、いつかは揺れが収まります。揺れが収まるのは「減衰」があるからです。 □■□疑問■□■ 減衰がよくわかりません。いろいろな用語があって、混乱します。「減衰とはこういうもの」というのがあれば教え…

現代の心柱:鉄筋コンクリート建物における連層耐震壁の働き

いくつもの層に連なって配置されている耐震壁を「連層耐震壁」と言います。この連層耐震壁を現代の「心柱」として利用しようという設計思想があります。 □■□疑問■□■ 建物の上から下まで連続して壁を配置すると強いということを聞いたことがあります。感覚と…

建築における構造最適化の功罪:アナログ構造設計者のぼやき

世の中、何でもかんでも合理化、最適化がなされ、無駄がそぎ落とされています。建築の世界も遅れてはいますが例外ではありません。 □■□疑問■□■ 建物をもっと合理的に造ることは可能でしょうか。コンピュータの処理能力が向上している昨今、建築物のような巨…

トラス構造とラーメン構造:軸力による伝達と曲げによる伝達の違い

三角(△)の組み合わせでできているのがトラス構造、四角(□)の組み合わせでできているのがラーメン構造です。 □■□疑問■□■ トラス構造とラーメン構造の違いは何でしょうか。実際の設計において、どのように使い分けているのでしょうか。 □■□回答■□■ トラス…

有限要素法(FEM)と建築の親和性:安易な適用にはご用心

建物の構造解析モデルは線材要素(太さを考慮しない要素)とばねの組み合わせでできています。 □■□疑問■□■ 有限要素法を用いれば各部材の厚さ、太さを考慮した高精度な解析が可能です。解析の制度が向上することで新しい建物の設計が可能になることはあるで…

あえて壊すという設計はありか?マンションの雑壁に見る余剰耐力

大地震後、建物が倒壊に至らなくても補修が困難な場合は建て替えが行われます。 □■□疑問■□■ 地震後に壁という壁が全てビリビリにひび割れたマンションの映像を見ることがあります。しっかりと設計されていてもあれだけの被害が生じるのでしょうか。 □■□回答■…

超高強度材料は建築を変えるか:超高張力鋼と超高強度コンクリート

建物が巨大化、高層化するにつれ、材料の高強度化も進んでいます。 □■□疑問■□■ 昔に比べてとても強いコンクリートや鋼材が開発されています。もっと細い材料だけでできた軽快な建築物が今後増えていくのでしょうか。 □■□回答■□■ 従来の製品に比べコンクリー…

静定構造と不静定構造の実建物における違い:力学と実現象の架け橋

構造力学の授業でまず習うのが「静定構造」、その次に習うのが「不静定構造」です。 □■□疑問■□■ 「静定構造」と「不静定構造」が具体的にどういうものなのかわかりません。また、構造設計の際にどのように使い分けするのでしょうか。 □■□回答■□■ 「静定構造…

自己修復コンクリートは有用か?構造設計者の視点から考察

日々新しい構法、材料が生まれています。技術者は常にアンテナを張っておかなくてはなりません。 □■□疑問■□■ 自己修復コンクリートというものがあると聞きました。コンクリートのひび割れが自然に修復するのであれば、複数回の地震にも問題なく耐えられるの…

月に家を建てよう:重力が無くなると家の構造はどうなるか

「重力が無ければなぁ」、これは構造設計者より、構造設計者に「できません」と言われる意匠設計者の方が感じることかもしれません。 □■□疑問■□■ 将来人間が地球外の惑星に住むとしたら、その家はどのような構造になるでしょうか。重力が小さくなれば、非常…

実建物におけるピン接合と剛接合:構造設計における本音と建て前

構造力学の授業で必ず出てくるのが「ピン接合」と「剛接合」です。 □■□疑問■□■ 「ピン接合」と「剛接合」が具体的にどういうものなのかわかりません。また、構造設計の際にどのように使い分けするのでしょうか。 □■□回答■□■ 「ピン接合」、「剛接合」ともに…

偏心するのは悪いこと?構造バランスがいい建物と力学の話

同じ工務店が、同じ規模、同じ壁の量で、建物を隣同士で建てます。しかし、地震が起こった時に片方は倒壊したが、もう片方は軽微な損傷で済んだ、そんなことが起こり得ます。これは壁配置のバランスの良し悪しが影響しています。壁配置の評価の基本である偏…

最上階であっても柱を細くできない3つの理由:振動モードと力学の基本

通常、建物の柱や壁は下の階ほど強くなっています。 □■□疑問■□■ 下の階ほど柱や壁の負担が大きくなるのは感覚的によくわかります。それなら上の階の柱ほど細くできると思うのですが、大して細くなっているようにも思えません。 □■□回答■□■ 上の階ほど柱が細…

木造住宅に構造計算は必要か?計算よりも大事なこと

小規模な建築物は、建物の安全性を検証する「構造計算」を行わなくても建設することができます。 □■□疑問■□■ 一般の木造住宅では構造計算がなされていないと聞きました。大地震に対して十分な耐震性が確保されているか不安です。 □■□回答■□■ 構造計算されて…

耐震偽装事件:姉歯建築士の構造設計を再考する

2005年の11月に、姉歯元一級建築士が建物の安全性を検証した「構造計算書」の偽装を行っていることが明らかになりました。 □■□疑問■□■ 耐震性が国の基準を全く満たせていないといった報道が当時なされていましたが、2011年には東北地方太平洋沖地震が起こっ…

構造設計の基本を押さえる:建物の重さの話

構造設計を行う際、建物の重さは非常に重要な指標になります。重力にせよ地震にせよ、構造部材が負担しなくてはならない力は重さに比例します。 □■□疑問■□■ 建物が重いことはわかりますが、いったいどのくらい重たいのでしょうか。 □■□回答■□■ 構造の種類、…

五重塔はなぜ倒れない:構造のわからなさがわかる話

1400年以上の歴史を誇る法隆寺五重塔。その他、日本全国にいくつもの五重塔が現存しており、今なお構造技術者を惹き付けて止みません。 □■□疑問■□■ 五重塔は非常に耐震性が高く、地震で倒れたものは無いと言われています。それはなぜでしょうか。そして現代…