バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

コンテナハウスは地震に強いか:耐震性を数字で比較してみた

昔は、家といえば木造で、LDK以外に寝室が3つと客間に使える和室があって、というようなステレオタイプなものが多数ありました。しかし昨今は、もっと多様な中から自分の好みにあったものを選びやすくなっています。 コンテナハウスもその中の一つでしょう。…

『制振はサスペンションと同じ原理』というモヤモヤする例え

なにか難しいことを説明するとき、それに似たなにか別のものに例えるのはよくあることです。当ブログでもこれまでたくさんの例えをしてきました。 例え話には厳密さは必要ありません。そもそも厳密に同じものであれば例えになっていません。要は本質的な部分…

建物の精度:建築は機械と違ってとてもラフ

人間がつくるものには必ず誤差があります。どれだけきれいにできているようでも、実際には図面とはぴったり一致しません。ぴったりでなくても、誤差が許容範囲内であればよしとされます。 高い精度が求められるものとして、まず半導体が挙げられるでしょう。…

地盤被害と耐震性:地震に強い家にするには

耐震基準が改正され、耐震性の高い建物が増えてくるにつれ、地震による建物被害は以前よりも小さく抑えられるようになってきました。非常に大きな地震が発生しても、特に被害が無いという建物もたくさんあります。 とはいえ、最新の基準に適合している建物で…

伝統構法は地震に強いか:被害状況と耐震性、構造計算について

日本では小規模な建物のほとんどが木造でできていますが、同じ木造と言ってもいろいろなものがあります。多数を占めるのが「在来軸組構法」、耐震性が高いと言われ近年増加傾向にある「枠組壁構法」、そして日本古来の方式である「伝統構法」です。 寺社仏閣…

建物の滑り量と地震力の関係:効果の薄い製品に騙されないように

地震によって建物が揺れるのは、地面と建物が基礎を介してつながっているからです。地面の揺れが建物に伝わってくることで被害が生じます。もし建物と地面とがつながっていなければ、地震によって建物が揺れることはありません。 建物と地面とのつながりを切…

固有モードとは:固有モードがわかればモノの振動が見えてくる

モノの振動を勉強していると、途中で必ず出てくるものの一つに「固有モード」があります。 「1つのオモリがどう動くか」を終えて、次に「複数のオモリがどう動くか」に進むときに現れます。複雑なモノの揺れ方を理解するためには避けて通れない用語です。 し…

標準層せん断力係数Coとは:地震の大きさを考える重要な指標

地球の誕生以来、これまで数多くの地震が発生してきました。近年は観測網が発達し、たくさんのデータが蓄積されています。 しかし、いまだかつて一度も「まったく同じ地震」というのは発生していません。 似たような規模、似たような震源の地震であっても、…

読者からの相談事例②:「この家どう思います?」

家の耐震性というのは通常、日常生活の中で感じることはできません。いざ地震や台風といった災害が起こったときに初めてわかるものです。 「どうせわからないのだから」と気にすることなく過ごせる方もいる一方、「本当のところはどうなのだろうか」と不安に…

Ai分布とは:式の意味とその根拠

地震に対して安全な建物を設計するには、どのような情報が必要になるでしょうか。 まず何よりも、建物に作用する地震の力がどのくらいになるかを知ることが重要です。これが分からなければ何も始められません。 しかし、地震時の建物の動きは複雑です。建物…

軽量鉄骨造ブレース構造建物の耐震性:木造との比較、ハウスメーカーによる違い

家を新築したいと思ったとき、決めなくてはならないことがたくさんあります。 中でも「どんな構造の家にするか」というのは大きなポイントです。採用する構造によって、できること・できないことがある程度決まってしまいます。 まずは建物の骨組をどんな材…

土台とはなにか:基礎との違い、火打ち土台の必要性

木造の建物はたくさんの材によって構成されています。それぞれの材は使う場所によって呼び名や役割が違い複雑ですが、建築に携わる人間ならちゃんと覚えておかなくてはなりません。 また、家づくりに興味がある人も知っておいて損はないでしょう。建築士や大…

ハニカム構造とは:建築との親和性とその欠点

できるだけ少ない材料で、できるだけ強いものをつくりたい。昔からたくさんのエンジニアが取り組んできた課題であり、今も研究や開発が続けられています。 これまでたくさんの構造が提案されていますが、一般の方にも広く知られているものとして「ハニカム構…

設計用地震動とは:観測波・告示波・サイト波・基整促波

科学技術は日進月歩ですが、いまだ地震を予測することはできません。近い将来に地震の予測ができるようになるということもないでしょう。 地震予知・予測は構造設計を変えるか? どんな地震が起こるかわからないからといって、「どんな地震が起こっても絶対…

微小変形理論のエッセンス:大変形理論との違いと使い方

何ごともコストパフォーマンスというのは大事です。 1週間頑張って勉強して試験で100点を取るのも素晴らしいですが、もし前日に1時間勉強すれば90点を取れるとわかっていれば前日から勉強を始める人も多いかと思います。単位を取るためには98点以上が必要と…

平面保持の仮定:知っておくべき二つの使いどころ

物理学ではいろいろな自然現象を数式で表現することで未来を予測したり、今起こっていることの説明を試みたりします。最も身近なものとしては天気予報が挙げられるでしょう。 予測精度を高めるためには、その現象を精確に数式で表す必要があります。ただ、そ…

トルコ・シリア地震について知っておくべきこと:その震度と被害

2023年の2月6日、トルコ南部、シリアとの国境付近でマグニチュード7.8(Mw)の巨大地震が発生しました。そしてその約9時間後、今度はマグニチュード7.5(Mw)の地震が発生しました。執筆時点(2023/3/18)でトルコ・シリア両国を合わせて5万人を超える方が亡くなら…

TMDがよくわかる:その原理と押さえておきたいポイント

世の中には揺れてしまうと困るものがたくさんあります。揺れによって不具合を起こす・壊れるといったモノへの影響から、居心地が悪くなる・ケガをするといった人への影響もあります。最悪の場合、人命に関わるということもあります。 そのため、揺れを小さく…

免震の今と昔:免震の歴史と変わりゆく常識

地震対策技術のひとつである「免震」ですが、すでにかなり確立された技術となっています。最先端の技術であった時期はとうに過ぎ、誰でも設計できるとは言いませんが、もはや汎用的な技術になったと言ってもいいでしょう。 免震とは もちろん未解明な部分は…

耐震住宅ってなんだ?家を建てる前に知っておきたい知識

「地震に強い家を建てたい」と思ったときに、みなさんならまずどうするでしょうか。「住宅展示場に行ってみる」、「近所の工務店で聞いてみる」という人もいるでしょうが、「まずはネットで検索してみる」という人の方が多いのではないかと思います。 ではど…

中間層免震がわかる:揺れ方の特徴とメリット・デメリット

今現在、最高の地震対策技術は「免震」です。そしておそらくこれからも最高の技術であり続けるでしょう。 免震構造がわかる 1995年の兵庫県南部地震以降、免震建物はその数を急激に伸ばしており、今や戸建て住宅から超高層建物まで、幅広く適用されています…

境界梁とはなにか:その効果・役割と設計時の注意点

地震の力に耐える部材というと、柱や壁のような上の階と下の階とをつなぐ「縦」の部材を連想しがちです。しかし、実際には縦の部材同士をつなぐ「横」の部材である梁(はり)も大きな役割を果たします。 梁がよくわかる 電柱や煙突などの細長い構造物は柱一…

アクティブ制振装置の誤作動による安全性への影響

2022年9月18日、仙台市のホテルにて「建物が大きく揺れたため宿泊客が避難する」という事態が起こりました。制振装置の誤作動が原因ではないかとされています。 本来は建物の揺れを小さくするための装置がなぜ逆に建物を揺らしてしまったのでしょうか。装置…

土壁は地震に強いか:耐震性を数字で評価した結果は

古民家や寺社などの伝統的な木造の建物の壁には「土壁」が使用されています。現代の住宅の壁は合板を釘打ちしただけのものが大半ですが、昔は手間暇かけて一つずつ土を塗っていたのです。 土壁には遮音や調湿の効果がありますが、地震が起こったときには建物…

耐力壁に打つ釘の本数を減らすという話について

現代の木造住宅にはたくさんの「釘」が使われています。住宅一軒当たり数万本も使用されているとか。 釘のおかげで材と材を簡単に接合することができます。建物の弱点となる材のつなぎ目を留める、小さいながらも非常に重要な部品なのです。 その中でも特に…

読者からの相談事例①:基礎のやり直し

構造設計に関するブログを書いていると、家づくりの相談に乗ってほしいという問い合わせがきます。専門家からすると意外なところで悩んでいる方もおり、まだまだ情報発信をする価値はあるのかなと感じます。 ここでは比較的よくある相談内容である「基礎の配…

建物の減衰:減衰の種類とその設定

実は通常の構造設計では、地震によって建物がどのように揺れるかは計算しません。ルールに沿って地震の力を決めるだけなので、電卓さえあれば計算できてしまいます。 構造設計者の三種の神器 形が整った建物、高さの低い建物であれば、ルールに従うだけでそ…

大型振動台一覧と振動台実験:大手ゼネコンから法人まで

地震が起こったときにどんな被害が出るか、それを確かめるには実際に地震が起こったときと同じように揺すってみるのが一番です。そのための装置として「振動台」があります。 しかし、建物のように巨大なもので実験するには大型の振動台が必要です。大型にな…

減衰係数と減衰定数:違い・単位・求め方

地震が起こったり、風が吹いたり、あるいは人がぶつかったりするとモノが揺れます。しかし、いつまでも揺れているわけではありません。いつかは揺れが収まります。 揺れが収まるのは「減衰」があるからです。「減衰」とはモノが振動するエネルギーを吸収・発…

振動特性係数Rtとは:求め方とその意味

地震時に建物に生じる揺れは複雑です。地盤と建物の動きが相互に影響しあうため、地盤と建物の両方の情報が必要になります。 建物だけであればある程度のことはわかりますが、地盤は非常にやっかいです。高い費用をかけて建設地の地盤をあれこれ調査しても、…