木造の建物はたくさんの材によって構成されています。それぞれの材は使う場所によって呼び名や役割が違い複雑ですが、建築に携わる人間ならちゃんと覚えておかなくてはなりません。
また、家づくりに興味がある人も知っておいて損はないでしょう。建築士や大工と話すときにちゃんと使い分けができていれば、「む、ちゃんと勉強しているな」といつもより気を引き締めて仕事をしてくれるかもしれません。
ここでは重要な材でありながら、別の材と混同されたり、勘違いされたりしがちな「土台」について説明します。
土台とは
「土台」とは、木造建物の一番下にある部材のことです。基礎の上に水平に置かれ、アンカーボルトによって基礎に緊結されています。
土台を理解するには「基礎」についても知る必要があります。「土台=基礎の上にある材」と言われても、そもそも基礎がわからなければ意味がありません。
ということで、次に基礎について説明します。
基礎とは
「基礎」とは建物と地面が接する部分のことで、建物の重さを地面まで伝える役割があります。基本的に基礎は鉄筋コンクリートでつくられています。
建物が安定して立っていられるようにするには、建物に生じた力を地面まで伝えなくてはなりません。そのためには建物の下部を地面にいくらか埋め込む必要があります。
しかし木造建物の場合、地面に直接木が触れると湿気で腐りやすくなってしまいます。湿気を避けるため、ある程度地面から浮かせる必要があります。
「地面に埋め込む」と「地面から浮かせる」、この相反する要求を満たすため、地面と木造部分との間に鉄筋コンクリートでつくった基礎が設けられているわけです。
土台の役割
基礎は鉄筋コンクリート造ですので、木材とつなぐのが難しいです。簡単に柱を立てたり、床を敷いたりといったことはできません。
基礎の上にぐるりと木でできた土台が回っていることで、釘や金物を使って柱や床を敷くための材を自由に設置できるのです。
つまり土台とは鉄筋コンクリート部材と木部材とのつなぎ役なのです。柱や床からの力が土台に伝わり、それがさらに基礎、地面へと伝わっていきます。
なお、土台と基礎とをつなぐためのアンカーボルトは、基礎のコンクリートが固まる前にあらかじめ設置しておきます。
火打ち土台は必要か
土台と名の付く部材に「火打ち土台」があります。
「火打ち」とは斜めに配置された部材を指します。火打ち土台の他にも「火打ち梁」があります。
土台は縦と横に配置されているので、土台と土台は90°で交差します。この角の部分を補強するよう斜めに設置した材を火打ち土台と言います。
土台と土台、そして火打ち土台によって直角三角形ができます。三角形は四角にくらべて力学的に安定しているので、火打ち土台のおかげで変形しづらくなります。
古い建物では基礎が石でできており、建物はその上に載っているだけです。地震時に建物がバラバラに動かないよう、土台が変形しないようにすることには意味がありました。
しかし、現在基礎は鉄筋コンクリートで一体化されており、バラバラに動くような心配はありません。そのため火打ち土台で補強しなくても問題ないでしょう。
猫土台(ねこどだい)
建築には動物の名前が付いているものが多数あります。その一つとして「猫土台」が挙げられます。
土台と言ってもこれまで説明してきた土台とは違います。比較的最近できたもので、基礎と土台との間に挟む、ゴムや金属などでできた材です。「基礎パッキン」などとも呼ばれます。
古い建物では、床下に湿気がこもらないよう、鉄筋コンクリートの基礎に「換気口」を設けていました。しかしこの部分が基礎の弱点となってしまいます。また施工も大変です。
そこで基礎と土台との間に設置し、わずかに隙間をつくって換気ができるようにしたものです。最近の木造の住宅ではかなり高い確率で採用されています。
土台と基礎
土台という言葉は建築の専門用語としてだけでなく、日常でも使われます。「物事の基礎、根本」という意味があります。
専門用語としては「土台」と「基礎」では全く違う部材を指していますが、日常的に使う言葉としてはどちらも同じような意味になります。英訳ソフトに入れると、どちらも”foundation”や”basis”と訳されます。
そのため混同されがちではありますが、それだけにちゃんと使い分けられるとポイントが高いです。ぜひ覚えておいてください。