バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ブレース構造がわかる:大切なのは角度と座屈と接合部

建物を構成する骨組のうち、地面と垂直な部材が「柱」、水平な部材が「梁」です。そして、垂直でも水平でもなく、斜めになっているのが「ブレース(=筋違:すじかい)」です。 ブレースにより地震や風の力に抵抗する構造形式を「ブレース構造」と言います。…

木造住宅購入前に知っておきたい耐震性に関する3つの基本

どうせ家を買うなら地震に強い家がいい、そう考える人も多いです。 ただ、建物を外から眺めていても耐震性が高いかどうかはわかりません。営業担当者に聞いたところで物件のよい点しか言いませんし、本質を理解しているわけでもありません。 では、どうすれ…

マンションの耐震等級:なぜ耐震等級2・3が少ないのか

建物の耐震性を表す指標として「耐震等級」があります。耐震等級は1から3まであり、3が最高評価です。 耐震等級1は現行の建築基準を満たす耐震性を有していることを示しており、耐震等級2ではその1.25倍、耐震等級3では1.5倍の強さを有していることになりま…

座屈がわかる:座屈の種類と座屈荷重・座屈長さの基本を押さえる

通常、ある物体に横から力を加えると横に変形し、縦から力を加えると縦に変形します。 なんだか当たり前のような気もしますが、そうとも限りません。ある条件の下では、縦に押したのに横に曲がってしまうということが起こります。 プラスチックの定規や細長…

ハウスメーカーの実大振動実験から各社の耐震性はわかるのか?

日本には世界最大の「振動台」であるE-ディフェンスがあります。日々いろいろな試験体が運び込まれ、実験が繰り返されています。 E-ディフェンスでは過去に発生した地震動を再現することができます。兵庫県南部地震や熊本地震、東北地方太平洋沖地震であって…

ボイドスラブ(中空スラブ)がよくわかる:その性能と設計と施工

建物の床板(スラブ)は、梁と呼ばれる水平な部材の上に乗っかっています。 梁が支えてくれるおかげで、床自身はあまり厚みがなくても床が抜けたり、たわみが大きくなったりすることはありません。しかし、梁と梁の間隔が広くなり過ぎると床板を厚くせざるを…

剛床とは?剛床仮定は構造計算・構造設計の基礎の基礎

地震に強い建物を造るには、柱や壁をバランスよく配置することが重要です。ただ、いくら柱や壁だけを強くしてもうまくいかないことがあります。 建物の重量の大半は屋根や床に集中しています。そして、地震の力は各部の重量に比例します。 屋根や床に生じた…

塑性断面係数と全塑性モーメント:H形鋼ではなぜ変化が小さいか

建築の力学では、他の分野ではあまり積極的に取り扱わない「非弾性」の範囲についても考える必要があります。 非弾性とは、ある材料を引っ張った後、力を抜いても元の状態まで戻らなくなる状態を指します。材料の特性が変わるため、非弾性を取り扱うにはそれ…

マンションと一戸建ての耐震性能比較:本当に地震に強いのはどっち?

結婚や子供の誕生、その他人生の節目を迎えると、自分の家を購入するかどうか検討する人が増えます。 昔から「賃貸が得か、購入が得か」の議論は尽きませんが、購入するとしたら「マンションか、一戸建てか」というのも大きなテーマです。 結局、どちらの問…

仕口ダンパーとは?お手軽に導入できる制振装置の代表格

地震や強風による建物の揺れのエネルギーを吸収し、揺れ幅を低減する装置を制振ダンパー、あるいは制振装置と呼びます。 戸建て住宅用の小型のものから超高層ビルにも使用できる大型のものまで、いろいろなサイズがあります。最近の大手ハウスメーカーの注文…

鉄筋のかぶり厚さとは?厚ければ厚いほどいいとは限らない

鉄筋コンクリートとは「鉄筋」と「コンクリート」を組み合わせた複合材料です。木や鉄のような単一の材料ではないため、複雑な特性を示します。 RC造がよくわかる:構造設計一級建築士&コンクリート主任技士が解説 また、その組み合わせ方にはいろいろなル…

層間変形角・層間変位がよくわかる:その意味と計算方法と制限値

どんなに硬いものでも、力を加えれば変形します。建物も例外ではなく、物を置いたり風が吹いたりすれば、それに応じて揺れたり変形したりしています。 ただその程度が小さいため、普段生活している分にはあまり気づかないだけです。歩道橋の真ん中で立ち止ま…

壁量計算がよくわかる:4分割法の意味と構造計算との違い

2階建ての木造住宅のほとんどは「構造計算」をせずに建てられている、と言うと驚かれるでしょうか。建設業界ではよく知られていることですが、一般的にはあまり知られていないようです。 とはいえ最近は簡単になんでも検索できるので、住宅購入を検討された…

地震後の通電火災はこれで防げる!スイッチ断ボールは信頼性抜群

今ではめっきり聞かなくなくなりましたが、日本人の怖いものと言えば「地震、雷、火事、親父」でした。地震大国日本では、やはり地震が一番怖かったようです。 そのせいか、「地震に強い家に住みたい」、「絶対に壊れない家にしてください」という要望をよく…

免震レトロフィットとは:最も効果のある耐震補強工法

1981年以前に建てられた建物は、現行の耐震基準に適合していない可能性があります。2016年の熊本地震では、建設年が1981年以前か以後かで建物の倒壊率に大きな差がありました。 建物の耐震性を向上させるには耐震改修を行うしかありません。しかし、実際に工…

談合はなぜなくならない?建設業・ゼネコンとは切っても切れないその理由

一昔前の建設業を取り扱う小説では必ず題材にされる「談合」。建設業と言えば談合、というイメージすらありました。 現在は規制の強化により、その数は大幅に減りました。とはいえ、「どうせまだやってるんでしょ」という印象はぬぐい切れていません。 実際…

弾性・非弾性・弾塑性とは?設計の際に欠かせない視点

建築物の骨組となる部分は主として木、コンクリート、鉄で造られています。地震に対して安全な建物を造るには、これらの材料の特性をよく知っておく必要があります。 材料の最も一般的な特性として「剛性(硬さ)」と「強度(強さ)」があります。建物を変形…