バッコ博士の構造塾

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仕口ダンパーとは?お手軽に導入できる制振装置の代表格

地震や強風による建物の揺れのエネルギーを吸収し、揺れ幅を低減する装置を制振ダンパー、あるいは制振装置と呼びます。

 

戸建て住宅用の小型のものから超高層ビルにも使用できる大型のものまで、いろいろなサイズがあります。最近の大手ハウスメーカーの注文住宅や、超高層ビルにはかなりの確率で導入されています。

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うまく制振ダンパーを利用することで安全性の高い建物を造ることができます。しかし、この制振ダンパーにも欠点と呼べる部分があります。

 

それは装置の設置に場所を取るということです。上の階と下の階を繋ぐように装置を設置しなくてはならないので、開口部を塞いだり、建築計画の支障になったりするのです。

 

邪魔にならず、それでいてエネルギーを吸収してくれるような都合のいい装置は無いものでしょうか。

 

実は、それに応えるべく開発された装置があります。それが「仕口ダンパー」です。

 

 

仕口ダンパーとは

通常の制振ダンパーの設置位置

制振ダンパーの最も効果的な設置場所は、地震や強風時に建物に生じる変形が大きくなるところです。

 

建物が揺れると、2階と3階、あるいは3階と4階など、上下階で変形差が生じます。通常はその変形差に作用するように制振ダンパーを設置します。

 

そうすると確かに効果はあるのですが、建築計画の支障になってしまうわけです。できるだけ邪魔にならない場所を探して設置することになります。

 

仕口とは

「仕口」とは、柱と梁の接合部のことです。

 

建物の変形とは、柱や梁が曲がったり伸び縮みしたりすることで生じます。しかし、柱や梁以外にも変形している部分があります。

 

それが仕口です。仕口が閉じたり開いたり、つまり接合部がズレて回転することでも建物は変形しているのです。

 

仕口ダンパーとは

変形が生じるところに設置するのが制振ダンパーですから、仕口に制振ダンパーを設置しても効果があります。この仕口に設置する制振ダンパーを「仕口ダンパー」と言います。

 

実際には「柱の仕口に近い部分」と「梁の仕口に近い部分」を繋ぐように設置します。開口部の角部分に少し出っ張りができるだけで、ほとんど邪魔にならない大きさです。

 


カネソウ 仕口ダンパーQMタイプ

 

とてもコンパクトで、構造も非常にシンプルです。柱に取り付く部分と梁に取り付く部分の間に「粘弾性体」と呼ばれるネバネバした物体を挟み込んであるだけです。そのため、1台当たりのコストも低いです。

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仕口ダンパーは木造と相性抜群

大半の木造住宅では、地震の力の大半を耐力壁と呼ばれる壁で負担しています。柱は建物の重さを支えるだけで、地震にはほとんど抵抗しません。

 

それは、柱や梁などの木材同士をしっかりと接合して、力をうまく伝達できるようにするのが難しいからです。

 

接合部が全くずれないようにしたものを「剛接合」と言いますが、木造では特殊な工法でなければ実現できません。通常は「半剛接合」というズレを伴う接合部になります。

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そのため木造住宅には、ただズレるだけの力を負担しない部分が無数にあることになります。そしてそこに仕口ダンパーを設置さえすればエネルギー吸収ができるようになるのです。

 

仕口ダンパーは木造住宅に打ってつけの装置と言えます。

 

では鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート造)はどうかというと、木造とは逆で「剛接合」以外の接合部にすることが難しいです。どうしてもがっちりと繋がってしまいます。

 

鉄骨造用の仕口ダンパーもあることにはありますが、わざわざ接合部が自由に回転できるよう工夫を凝らしています。

 

元々力を負担できる部分だったものを負担できないように変え、その上で仕口ダンパーを設置するわけです。

 

もちろん効果が無いわけではないのですが、本当に合理的かと言うと疑問が残ります。個人的にはあまり好きなアイディアではありません。

 

仕口ダンパーの効果

建築計画の支障にならずエネルギー吸収効果も抜群、となればいいのですが、さすがにそこまでうまい話はありません。やはり仕口ダンパーにも欠点はあります。

 

いくら仕口が変形すると言っても、上下階の変形差ほど大きなものではありません。制振ダンパーの効果は変形量に依存するので、一箇所当たりの効果としては通常の制振ダンパーに見劣りします。

 

あまり邪魔にならない装置なので、たくさん数を入れることでその欠点を補うというのが正しい使い方でしょう。しかし1台あたりのコストは低くても、数が多くなればそれなりの値段になります。

 

これから新築する建物であれば、わざわざ仕口ダンパーに頼らなくても強い建物を造ることはできます。通常の制振ダンパーをうまく組み込めばいいのであって、あえて仕口ダンパーを使う理由は少ない気がします。

 

どちらかというと、「耐震性には不安があるけど、補強によって使い勝手を変えたくない」という需要に応える耐震補強に向いた技術ではないかと考えています。

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お薦めの仕口ダンパー

戸建て住宅用の制振ダンパーはたくさんありますが、仕口ダンパーとなるとその数は激減します。

 

いろいろなメーカーの製品がありますが、お薦めはカネソウの仕口ダンパーです。

 

なぜかと言うと、他の製品と違って左右対称なため、柱や梁に対して偏心せずに取り付けることができるからです。

 


カネソウ 仕口ダンパーQMタイプ

 

別に他社の製品も実験により性能を確かめているでしょうが、わざわざ柱・梁の中心線からずらして取り付けているところが少し引っかかります。

 

もし仕口ダンパーを使っての耐震補強を考えているのであれば参考にしてみてください。

 

また、似たような制振ダンパーで「耐震リング」という商品も新たに開発されています。興味がある方はこちらも見てみてはどうでしょうか。