バッコ博士の構造塾

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モード解析(モーダルアナリシス)の基本・考え方を理解する

複雑で難解な問題を考える場合、複数の簡単な問題に切り分けるのが効果的です。切り分けた問題を一つひとつ解き明かしていくことで全体像が見えてくることがあります。

 

何にでも使える効果的な方法ですが、実は物体の振動を考える際にも似たような方法が用いられています。それが「モード解析(モーダルアナリシス)」です。


では実際にどうやれば物体の振動を切り分けて考えることができるのでしょうか。そして切り分けることで何がわかるのでしょうか。

 

順番に見ていきましょう。

 

 

モード解析の意味

言葉の意味

モード解析を英語でmodal analysis(モーダルアナリシス)といいます。どちらも使われることがあるので、同じ意味であることを知っておきましょう。

 

「モーダル」は「モードの」という意味です。“mode”は広い意味を持つ言葉なので日本語訳もたくさんありますが、ここでは「形態」という訳がしっくりくるように思います。辞書によれば「形態」とは「物事が持つ外観や構造、状態を指す言葉」だそうです。

 

つまりモード解析とは、「モノが持っている固有の状態を利用して解析する」ことです。これではまだよくわかりませんね。

 

モードの意味

短いもの・小さいものに比べて、長いもの・大きいものは、揺れ方も複雑です。例えば、超高層ビルなどの長く・大きいものは、ある部分は右に、またある部分は左にとクネクネと好き勝手に揺れているように見えます。

 

しかし、一見複雑なようですが、実は単純な動きの組み合わせであることが知られています。30階建てなら30個の、50階建てなら50個の単純な動きを組み合わせれば再現が可能です。

 

この一つひとつの動きが「モード」です。そのモノごとに決まっている固有の動きなので「固有モード」と呼ばれます。

 

固有モードをもっと具体的に

固有モードとはなにか、“固有モードとは”に少し詳しく書いてあります。なので、ここでは説明は省いて、具体的な例を挙げることにします。

 

3階建ての建物の場合を考えます。本来はいろいろな揺れ方が考えられるのですが、本当に大切な揺れ方は3つしかありません。3階建てなので3つ、階数と同じ数だけあります。

 

それは、①1階、2階、3階がそれぞれ同じ方向に揺れる、②1階と3階が別方向に揺れる、③1階と3階が同じ方向、2階が別方向に揺れる、です。これが建物の固有モードです。

 

 

これらの固有モードのうち、建物全体の揺れに対する影響が大きいのは①で、②、③と数字が増えるにしたがって影響は低下します。また、数字が小さいほどゆっくり揺れます。多少階数が増えて固有モードの数が増えても、①②③くらいまで考えておけば十分な精度で計算できます。

 

各固有モードがそれぞれ「どんな形状」で、「どんな周期」で揺れるかは重要です。同じ「①1階、2階、3階がそれぞれ同じ方向に揺れる」であったとしても、各階が「/」と一直線に並ぶのか、それとも3階だけが大きく動くのか、それだけでも建物の揺れ方の特徴がわかります。

 

応答スペクトルを使う

モーダルアナリシスで絶対に欠かせないのが「応答スペクトル」です。これも“応答スペクトルとは?”で詳しく書いていますので、ここではものすごく単純化して説明します。

 

応答スペクトルとは、ある地震に対する揺れを考える場合に、建物の周期がわかれば、その建物がその地震で最大でどれだけ揺れるかがすぐにわかる図です。縦軸に揺れ幅、横軸に建物の周期を取ったグラフです。

 

下の図に示しているのは最大変位がわかる応答スペクトルですが、①②③それぞれの代表点が29cm、37cm、38cm揺れることを示しています。面倒くさい計算をする必要は一切ありません。

 

もし①の揺れ方の代表点が3階の床面(下から2個目の●)にあったとしたら、そこが29cm揺れるということなので、その上は44cmくらい、その下は15cmくらい揺れることがわかります。

 

モーダルアナリシス≒モードの足し合わせ

各モード①②③がそれぞれ最大でどれだけ揺れるかが分かれば、今度はそれを足し合わせてやれば建物が全体としてどれだけ揺れるかがわかります。これがモーダルアナリシスなのです。

 

しかし、ここで注意が必要です。それぞれの揺れの最大値はわかりましたが、どのタイミングで最大になるかは不明のままです。すべてのモードが同じタイミングで最大値に達するわけではないので、そのまま足し算すると揺れを過大に見積もることになります。

 

やり方としては、A)過大になってもいいから最大値をすべて足す、B)二乗和平方根(√(①2+②2+③2)とする、C)最大値を足したものと二乗和平方根の平均値(=(A+B)/2)とする、というのが代表的な方法です。

 

A)は揺れを大きめに見積もることになるので、必ず安全側の評価となります。B)とC)は明確になぜそうすればいいのかの説明はつきませんが、まじめに計算(時刻歴応答解析)した場合と概ね近い値となることが多いです。

 

モードに分けて、値を出して、足し合わせる、これがモーダルアナリシスです。