建物の構造を専門にし、安全性に責任を持つ建築士を「構造設計者」と呼びます。
家をつくる際、耐震性にこだわりたいのであれば、ぜひ優秀な構造設計者に担当してもらってください。きっと満足のいく設計をしてくれるでしょう。
しかし、どうすれば担当する構造設計者が優秀であるとわかるのでしょうか。
以前、建築士が構造のことがわかっているかどうかを確認するための簡単な質問について書きました。この質問にしっかりと答えてくれるのであれば最低限のことはわかっているはずです。
ただ、構造設計者は建築士の中でも構造を専門にしているわけですから、簡単な質問に答えられるのは当たり前です。もっとマニアックな質問にも答えられるはずです。
ここではちょっと構造のことをかじっただけでは答えられないであろう、マニアックな質問を3つほど紹介します。
質問1:偏心率ってなんですか?
もしかしたらこの質問を見て、「そんなの素人でも簡単に答えられるよ」と思いませんでしたか?
確かにちょっとネットで調べれば出てくるような情報です。計算方法まで丁寧に解説されているサイトもあります。
そして、大抵の建築士は「偏心率○○以下ですから大丈夫ですよ」なんてコメントもしてくれるでしょう。
では意味の無い質問かというと、そんなことはありません。逆に、知ったかぶりしていること、あるいは「知らない」ということを知らないことが明らかになるかもしれません。
おそらく多くの建築士は、偏心率の定義や法律上の制限値は知っていることでしょう。しかし構造設計者であれば、その値が物理的にどのような状態を表しているかまでわかっている必要があります。
ぜひ「偏心率が2倍になると、建物は2倍ねじれやすくなるんでしょうか?」と聞いてみてください。「はい、そうです」なんて答えが返ってくるようだと心配です。
質問2:地震の力ってなんですか?
地震時に建物がどんな風に揺れるかを正確に計算することはできません。いくら難しい解析をしても精度はそこまで高められませんし、住宅一棟ごとにそんな高度な解析をすることもできません。
にもかかわらず、建築基準法に適合した建物であれば、地震に対して倒壊する可能性は非常に低くなっています。
なぜ建物が倒壊しないのか。
それは「地震時には大体このくらいの力が建物に作用する」ということを仮定し、その力に対して安全なように設計しているからです。
そのため、もしこの仮定した力の大きさが小さ過ぎれば、建物は安全ではなくなります。力の設定が非常に重要であることがわかります。
しかし、重要な値である割には、決め方は非常にシンプルです。「建物の重さを0.2倍した力」というのがそれです。一般的な木造住宅であれば、建物の形状や大きさ、階数に依らず一定の値です。
なんだか不安になるくらいシンプルな決め方ではありますが、実際に大きな問題が生じていない以上、有効な決め方と言えます。
しかし、なぜ0.2倍でいいのか、その根拠くらい構造設計者なら知っておいてほしいと思いませんか?「法律にそう書いてありますので」とか「昔の偉い先生が決めたんですよ」と言うのであれば、何も考えずに設計しているのと同じことです。
質問3:Ai分布ってなんですか?
最後の質問は少しレベルが上がりましたね。「Ai分布」という言葉自体聞いたことがない人も多いかと思います。
簡単に説明すると、「建物は上の方が大きく揺れるので、その分を考慮して地震の力を割り増しするための係数」です。
さきほど、地震の力は「建物の重さ×0.2」と書きましたが、これは建物の一階にかかる力です。二階や三階だと、この係数を掛けて割り増ししてやる必要があります。
電卓さえあれば簡単に求められるのですが、地震時の建物の複雑な動きを表現する値です。この値を決めた裏には先人の知恵が詰まっています。
細かいことまで知る必要はありませんが、この値が3つの部分でできていること、そしてそれぞれが何を意味しているかくらいは知ったうえで設計してほしいものです。
回答の正否の確認の仕方
上記の3つの質問に対し、しっかりとした回答があれば安心して設計を任せられるでしょう。
このとき、あなた自身が回答を理解できる必要はありません。一般の方からはなかなかされないであろう、少しレベルの高い質問に対してどう対処するかを見ればいいだけです。
落ち着いて丁寧に回答してくれるのか、適当に言葉を濁したり笑って誤魔化したりするのか、構造設計者としての姿勢の問題です。
もしかしたら、ちゃんと回答できない構造設計者がいるかもしれません。
そんなときは、「こんなことも知らない構造設計者はダメだ!」と交代を告げてもいいでしょう。ただ、個人的には「すみません、勉強不足でした」と真摯に対応してくれるのであれば、きっといい結果になると思います。