バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

木造・二級・一級建築士の違い:業務範囲から資格試験までを徹底比較

一口に建築士と言っても、一級、二級、木造建築士がありますし、2008年からは一級建築士の上位資格である構造設計一級建築士、設備設計一級建築士も新設されています。 □■□疑問■□■ 木造建築士、二級建築士、一級建築士の違いは何でしょうか。建築士を目指す…

新入社員必見!構造設計者が最初の3年間でやっておくべき3つのこと

入社して3年もすれば、いろいろなことを任せてもらえるようになります。 □■□疑問■□■ 春から新社会人となり構造設計の仕事を始めます。どんなことを意識して仕事に取り組めばいいでしょうか。 □■□回答■□■ 今さらながら「あの時ああしておけばよかった」と思う…

共振現象の恐怖:建物と地盤の固有振動数・固有周期の関係

地震が起こったとき、大きく揺れる建物とあまり揺れない建物があります。建物が倒れるかどうかは、耐震性が高い、低いだけではありません。 □■□疑問■□■ 東北地方太平洋沖地震では、耐震性が高いと言われている超高層ビルがとても揺れたと聞きました。超高層…

耐震性・地震・構造に関する間違いや嘘 Part1:構造設計一級建築士が是正します

ご存知の通り、インターネット上には有益な情報もありますが、誤った情報も大量にあります。その他の分野はわかりませんが、建築のこと構造に関してはかなりひどい状況と言えます。 素人が思い込み・勘違いで書いても1記事、構造を専門としない建築士がよく…

塔状比の限界はいくらか?スレンダーなビルの設計は難しい

うまくデザインされた細い柱や薄い庇は軽やかで恰好いいです。建物も高層になってくると、シルエットが細い方が洗練されて見えます。 □■□疑問■□■ 間口が非常に狭く、それなりに高さがあるビルや、とても細い超高層ビルなどがあります。どのくらいまで細くで…

一級建築士の転職事情:設計業務に疲れたら

転職市場が開かれ、会社をやめることのハードルがどんどん下がってきています。 □■□疑問■□■ 建築の設計業務は激務と聞きます。体調を崩したり、仕事が合わなかったりしたらと考えると不安です。資格があれば転職も容易でしょうか。 □■□回答■□■ 近年は過重労…

断面係数・断面二次モーメントとは:梁せいの2乗・3乗に比例する理由

大学の講義でも建築士の試験でも、構造力学につまずいてしまう人が非常に多いです。カッコいい建物をデザインしたくて建築士を志しているのに、まさかこんなに数式が出てくるとは、、、といったところでしょうか。 力学を理解するのに数式は避けて通れません…

建物観測は誰のためのもの?構造ヘルスモニタリングで被災度チェック

地震により建物のどこがどの程度損傷したのかがわかれば、その後の避難や補修計画に生かすことができます。 □■□疑問■□■ 地震の後、建物から避難したほうがいいのか、建物内に留まったほうがいいのか、どうやって判断したらいいでしょうか。 □■□回答■□■ 基本…

タワーマンションに住むなら制振か免震か?専門家でも決めかねる難問

近年建設されるタワーマンションの大半が制振構造または免震構造となっています。 □■□疑問■□■ スーパーゼネコン各社がタワーマンション用の高性能な制振システムを開発しています。それでも免震構造が耐震性に最も優れた構造なのでしょうか。 □■□回答■□■ 基…

切替え型ダンパーが免震構造を守る:巨大地震に備えた新たな制御技術

近い将来に発生が予測されている南海トラフ地震では、東北地方太平洋沖地震を上回る揺れが首都圏、関西圏に生じるでしょう。 □■□疑問■□■ 設計時に想定した地震よりも大きな地震が発生した場合、免震建物はどうなるのでしょうか。 □■□回答■□■ 免震建物の下部…

RC造がよくわかる:構造設計一級建築士&コンクリート主任技士が解説

分譲マンションではその大半が鉄筋コンクリート造(RC造)です。学校や病院も多くがRC造であり、コンクリートは非常に身近な建築材料と言えます。 □■□疑問■□■ RC造について、いろいろなサイトで説明がなされています。しかし、サイト間で矛盾があるなど何が…

地震予知・予測は構造設計を変えるか?オーダーメイドの設計用地震動

予め、いつ、どこで、どんな地震が起こるかわかる、防災の面でこれほど助かることはありません。 □■□疑問■□■ 地震の発生を予め知ることはできないのでしょうか。もしできるとすれば、建物の設計にはどんな影響があるでしょうか。 □■□回答■□■ いろいろな研究…

慣性質量ダンパーができること:モード制御と変位増幅

今まで構造設計者は、建物の硬さをコントロールすることはできましたが、建物の重さをコントロールすることはできませんでした。 □■□疑問■□■ 慣性質量ダンパーとはなんでしょうか。通常の制振ダンパーとは何が違うのでしょうか。 □■□回答■□■ 慣性質量ダンパ…

柱・梁に生じる力と変形を理解する:曲げモーメント・せん断応力・軸応力

柱や梁などの構造部材は、重力や地震により作用する力に耐えなくてはなりません。 □■□疑問■□■ 構造力学の講義では「モーメント」、「せん断力」、「軸力」といった言葉がよく出てきますが、それぞれにいろいろな式があってよくわかりません。 □■□回答■□■ 構…

建物の力の流れを把握する:せん断・軸・曲げによる応力の伝達

建物に生じる重力や地震の力を地盤まで伝えるのが柱や梁などの構造部材の役割です。 □■□疑問■□■ 構造設計では「力の流れをイメージしろ」とよく言われます。具体的にどういったことを指すのでしょうか。 □■□回答■□■ 建物は地盤に支えられています。そのため…

超高層ビルの耐震補強:2000年以前の建物は要注意

よく建設時期が1981年以前か以後かで耐震性が大きく違うと言われますが、超高層ビルでは2000年が重要な年となります。 □■□疑問■□■ 超高層ビルでも古いものは築数十年以上です。耐震性に問題はないのでしょうか。また、耐震補強の方法はあるのでしょうか。 □■…

CFT構造がよくわかる:超高層ビルにはコンクリート充填鋼管構造

鋼製の柱の中にコンクリートを詰め込んだ構造をコンクリート充填鋼管構造(CFT構造:Concrete Filled steel Tube)と言います。鉄筋コンクリート造では「外側にコンクリート、内側に鉄筋」でしたが、CFT造では「外側に鋼材、内側にコンクリート」という逆の…

人工知能は構造設計者になれるか?AIができること・できないこと

スーパーゼネコンの一角である竹中工務店が人工知能を活用し、「構造設計の中のルーチン的な作業の70%の削減」を目標に掲げました。 □■□疑問■□■ 近い将来、世の中のいろいろな職業が人工知能に取って代わられると予想されています。構造設計の仕事もなくなっ…

超長周期化した免震構造はどうなる?固有周期8秒の免震の是非

免震構造では「免震層」と呼ばれる柔らかい層の効果により地震の力を大幅に低減することができます。 □■□疑問■□■ 「免震層」をもっと柔らかくしていくとどうなるのでしょうか。柔らかいほど地震の力を小さくできる気がします。 □■□回答■□■ 免震層を柔らかく…

許容応力度がよくわかる:これだけは知っておきたい設計の基本

建物の安全性を検証する方法はいくつかあります。その中で最も基本となるのが、「建物の各部材に損傷が生じていないか」を確認する計算です。 そして、損傷が生じているかいないかの判断に用いられる指標が「許容応力度」です。 許容応力度は材料ごとに違い…

時刻歴応答解析がよくわかる:免震建物・超高層ビル検証の必須技術

免震建物や超高層ビルは通常の建物に比べてゆっくり揺れます。揺れ方が違うということは地震の時に生じる力が違うということです。地震の力を算定するには「時刻歴応答解析」を行います。 □■□疑問■□■ 「時刻歴応答解析」がよくわかりません。通常の構造計算…

軟弱地盤だと地盤改良工事が必要?切っても切れない地盤と地震の関係

世界中どこを見渡しても同じ条件の建物はありません。仮に姿かたちが同じでも、建物が建つ地盤が違います。 □■□疑問■□■軟弱地盤に家を建てるので不安です。建物を設計する際、地盤の影響はどのくらいあるのでしょうか。 □■□回答■□■建物に作用する地震の力は…

実大の建物を揺らす疑似動的実験:ハイブリッドシミュレーションとは

解析技術がいかに進もうと、実験無くしては本当の特性は知り得ません。 □■□疑問■□■ 自動車は販売前に衝突試験を繰り返し、安全性の確認を行っています。建物ではどのように安全性の確認を行っているのでしょうか。 □■□回答■□■ 構造計算により安全性を確認し…

新国立競技場の次の目玉建築は清水が受注?スーパーゼネコンの施工歴

今、日本でももっとも注目されている建設現場と言えば新国立競技場でしょう。 □■□疑問■□■ 東京オリンピックのメーン会場となる新国立競技場は大成建設が受注しました。次の目玉建築はどこが手掛けることになるでしょうか。 □■□回答■□■ 清水建設が最有力候補…

耐震スリット・構造スリットとは何か?スリットを入れてはいけない建物に注意

柱と壁の間、あるいは梁と壁の間にスリット(隙間)を設けることで建物の耐震性が向上する場合があります。 □■□疑問■□■ わざわざ建物にスリットを設けることで、どうして建物が地震に強くなるのでしょうか。隙間を埋めた方が強いように感じられます。 □■□回…

構造設計者になるなら知っておきたい建物の力のオーダー

解析ソフトを使えば誰でも構造計算が出来てしまう時代です。だからこそ、実際の建物の寸法、重さ、硬さ、空間、そういったものを感覚的に身に付けておきたいものです。 □■□疑問■□■ 建物のような大きな構造物が地震時に変形すると言われてもピンときません。…

南海トラフ地震で大都市圏が揺れる:長周期地震動の恐怖

東海地震から東海・東南海地震、東海・東南海・南海地震ときて、今では南海トラフ地震という巨大な規模の地震を想定するようになりました。 □■□疑問■□■ 東北地方太平洋沖地震のように、南海トラフでもマグニチュード9クラスの地震が起こるのでしょうか。 □■□…

減衰とは何か:減衰振動・自由振動・共振との関係

ばねに吊るしたオモリを引っ張ってから手をはなすと上下にビヨンビヨンと揺れます。プラスチックの定規を指ではじくとブーンと揺れます。 しかし、どちらもいつかは揺れが収まり止まってしまいます。揺れが収まるのはなぜか、それは「減衰」があるからです。…

中低層マンションに住むなら免震:コスト増でもそれだけの価値がある

耐震・制振・免震の違いを知ることも大切ですが、戸建住宅かマンションか、中低層か高層かで適した構造は違ってきます。 □■□疑問■□■ 耐震・制振・免震のメリット、デメリットを考慮したうえで、中低層のRC造マンションにはどの構造が最適でしょうか。 □■□回…

免震構造の設計方法:免震層の基本的な数値を押さえよう

免震構造の普及に伴い、今や大手設計事務所やゼネコンだけが手掛けるものではなくなりました。地方や中小の企業でも免震構造の設計を行うようになっています。 免震構造の設計で最も重要なのは「免震層」の設計です。免震層は建物の基礎や建物下部に設置され…