バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

戸建住宅

建物の滑り量と地震力の関係:効果の薄い製品に騙されないように

地震によって建物が揺れるのは、地面と建物が基礎を介してつながっているからです。地面の揺れが建物に伝わってくることで被害が生じます。もし建物と地面とがつながっていなければ、地震によって建物が揺れることはありません。 建物と地面とのつながりを切…

軽量鉄骨造ブレース構造建物の耐震性:木造との比較、ハウスメーカーによる違い

家を新築したいと思ったとき、決めなくてはならないことがたくさんあります。 中でも「どんな構造の家にするか」というのは大きなポイントです。採用する構造によって、できること・できないことがある程度決まってしまいます。 まずは建物の骨組をどんな材…

土台とはなにか:基礎との違い、火打ち土台の必要性

木造の建物はたくさんの材によって構成されています。それぞれの材は使う場所によって呼び名や役割が違い複雑ですが、建築に携わる人間ならちゃんと覚えておかなくてはなりません。 また、家づくりに興味がある人も知っておいて損はないでしょう。建築士や大…

耐震住宅ってなんだ?家を建てる前に知っておきたい知識

「地震に強い家を建てたい」と思ったときに、みなさんならまずどうするでしょうか。「住宅展示場に行ってみる」、「近所の工務店で聞いてみる」という人もいるでしょうが、「まずはネットで検索してみる」という人の方が多いのではないかと思います。 ではど…

土壁は地震に強いか:耐震性を数字で評価した結果は

古民家や寺社などの伝統的な木造の建物の壁には「土壁」が使用されています。現代の住宅の壁は合板を釘打ちしただけのものが大半ですが、昔は手間暇かけて一つずつ土を塗っていたのです。 土壁には遮音や調湿の効果がありますが、地震が起こったときには建物…

耐力壁に打つ釘の本数を減らすという話について

現代の木造住宅にはたくさんの「釘」が使われています。住宅一軒当たり数万本も使用されているとか。 釘のおかげで材と材を簡単に接合することができます。建物の弱点となる材のつなぎ目を留める、小さいながらも非常に重要な部品なのです。 その中でも特に…

キラーパルスとは:木造住宅の被害とその対策

震度6強や震度7の大きな地震が過去に何度も発生しています。この規模の地震が起こると、ほとんどの場合人的被害が発生してしまいます。 しかし、同じ震度の地震であっても被害の程度が大きいものと、そうでもないものとがあります。この違いは一体何によるも…

通し柱がある家は強いのか:耐震性を高めるために必要なこととは

建築基準法には建物を建てる際の決まり事が書かれています。その中には当時の最新の知見をもとに盛り込まれたものもありますし、慣習的に行われてきたことが明文化されたものもあります。 しかし、時代と共に建物は少しずつ変化していきます。当時の建物にと…

“下町では木造住宅が壊れ、山の手では土蔵が壊れる”という話について

住宅を建てる際、地盤の良し悪しを気にする人も多いです。 硬い地盤であればそのまま建物を建てることができますが、軟弱な地盤であれば地盤改良や杭打ちが必要となることもあります。当然それには費用がかかりますので、その分だけ建物にかけられる費用が少…

蟻害と耐震性の関係は:シロアリを見つけたらご用心

鉄骨造や鉄筋コンクリート造で自宅を建てた理由として「木造は耐久性が低いから」ということを挙げる方がいます。確かに、鉄やコンクリートと比べ、自然材料の木は周囲の温度や湿度の影響を受けやすいと言えます。 神社やお寺など、何百年と歴史のある木造建…

三井ホームの耐震性は?プレミアム・モノコック構法はとっても硬い

耐震性の高さを売りにしているハウスメーカーは多く、大手では振動台実験の結果を用いて大々的に宣伝しています。 以前はいかに大きな地震に耐えたかがポイントでしたが、熊本地震以降は複数回の揺れに耐えられるというのが一つのトレンドになっています。 …

ミサワホームの木質パネル接着工法の耐震性について構造設計者が考察

大手ハウスメーカーであれば耐震性が高いことは最早あたりまえとなっています。実大建物を用いた振動実験により、震度7の揺れに複数回耐えられることが確認されています。 一般的な建売住宅の性能をはるかに超える耐震性を有しており、どこのメーカーで建て…

石場建ての耐震性能:免震効果は期待できるのか

建築基準法には「土台は基礎に緊結すること」と書かれています。 土台とは柱の下に水平に敷いた木の材、基礎とは建物を支える鉄筋コンクリートの部材です。通常は基礎にアンカーボルトという鋼製の部材を埋め込んでおき、これに土台を通してから締め付けます…

耐震基準の変遷:建築基準法の改正と建築年代による耐震性の違い

古い建物ほど地震時に大きな被害を受けます。古くても地震に強い建物はありますが例外的で、基本的には新しいものほど強い傾向にあります。 建物を新築する際は現行の耐震基準を満足する必要がありますが、建築基準法が改正されるたびに要求性能は高くなって…

液状化現象の被害とその対策:命と資産を守るために必要なこと

土地を購入する際、地盤がよいかどうかを気にする方は多いです。地盤の良し悪しが地震時の建物被害に影響を与えることを考えれば自然なことです。 地盤の被害でもっとも広範囲に影響を及ぼすのが「液状化」です。日本国内のみならず、世界の地震国では液状化…

貫とは:柔らかい構造は現代建築にマッチするか

現在、木造住宅の耐震性能は壁の量が足りるかどうか(壁量計算)により確認されることがほとんどです。基本的に「壁の量さえあれば大丈夫」という考え方です。 壁量計算がわかる しかし、寺や神社、古民家など古くからある建物の中には壁のないものも存在し…

UFO-Eの解析結果:地震力半減の効果はあったのか

基礎と建物との間に挟み込むだけで地震の力を半減できるという触れ込みの「UFO-E」という金物があります。 本当に効果があるのか、2記事を使って検討してみました。そして結論は「効果はあるが、限定的」というものでした。 構造設計のプロがUFO-Eの摩擦減震…

CLT住宅の耐震性:高性能木材による家づくりの是非

基本的に高層ビルの骨組はコンクリートや鉄で造られていますが、近年は環境負荷の低減のため「木材」を活用しようという機運が高まっています。 高層ビルの骨組には住宅などの低層の建物に比べて大きな力がかかります。そのため山から切り出してきた木そのま…

熊本地震の被害状況から考える木造住宅の耐震性

2016年の熊本地震では二度の大きな揺れに見舞われました。特に益城町では震度7を二回記録するという、過去に例のないものでした。 建築基準法では二度の大きな揺れは想定していません。そのため一度目の地震には耐えられても、二度目の地震には耐えられなか…

基礎パッキンの耐震性は?基礎上に敷くだけで地震に効果があるのか

自然材料である木にとって湿気は天敵です。高温多湿の日本では換気が非常に重要になります。 特に、地面に近い1階の床下は湿度が高いので換気が欠かせません。 そのため、近年では床下の換気をスムーズに行えるよう「基礎パッキン」と呼ばれる材を住宅の基礎…

家具の転倒防止:必要な対策は戸建てかマンションかで変わる

耐震工学の進んだ日本であっても、大きな地震が起きるたびに人的被害が発生します。死亡者数に目が行きがちですが、負傷者数はその数倍から数百倍とケタ違いに多くなります。 死亡の原因の大半は家屋の倒壊および家具の転倒による圧死です。また、負傷の原因…

誰でもできる基礎の配筋検査:施主の立会いはとても効果的

家を建てるなら木造でしょうか、鉄骨造でしょうか、あるいは鉄筋コンクリート造でしょうか。どの材を選ぶかで家づくりは大きく変わってきます。 ただ、どの材を選んでも絶対に基礎は鉄筋コンクリート造になります。建築基準法に定められているからです。 基…

地震地域係数とは:過去の地震との対応とその意義

日本が地震大国であることは周知の事実です。人的被害を伴うような大きな地震が少なくとも数年に一度は起こっています。 そのため、日本のビルと地震のほとんどない国のビルとを比べると、明らかに日本のビルの方が骨太な感じがします。日本では重力だけでな…

耐震等級の最もわかりやすい説明:これを知らずに家を建てるなかれ

家を建てる際、耐震性が気になるという方はたくさんいます。地震に強い家を建てるための情報を求めて、いろいろなワードで検索します。 そのとき必ず出会うのが「耐震等級」という言葉です。いろいろなサイトで耐震等級の説明がなされており、建物の耐震性を…

地震に強い家に住みたいと思ったら読む本:構造設計一級建築士がお薦めします

検索をかければ大抵のことが簡単に、無料で、しかも詳しく調べられる世の中になりました。当ブログを含め、耐震安全性に関する情報も大量にあります。 しかし、信頼性の高い情報が欲しい、より詳細な情報が欲しいとなった場合はまだまだ書籍に優位性があるよ…

地震で倒れない家とはどんな家:建物の強さと耐震性の話

2016年の熊本地震では震度7の強烈な揺れが二度も発生しました。 建築基準法では一度の揺れに耐えられるよう設計することとなっており、二度目の揺れは想定されていません。一度目の揺れには耐えられた建物も、二度目の揺れによって倒れたとの報告がなされて…

住友林業のビッグフレーム構法の耐震性について構造設計者が考察

「家を建てるなら木造がいい」と考えている人も多いかと思います。では、さらに一歩踏み込んで「木造にするなら○○工法(構法)がいい」とまで考えている人はどれくらいいるでしょうか。 日本で最も一般的な木造の工法は「木造軸組工法(在来工法)」、ついで…

剛性率を考える:高さ方向の構造バランスと力学の話

「地震に強い建物にするにはバランスのいい構造にするのが重要です」とはよく言われます。 なるほど、確かにバランスが悪いよりはいい方が強そうです。では、建物のバランスとは一体何を指しているのでしょうか。 そもそも、一口にバランスと言っても、色々…

ヘーベルハウスの耐震性について構造設計者がまじめに考察してみた

「家を新築したい」と思ったときにまず何をするでしょうか。検索をかければいろいろとわかる世の中ではありますが、「実物を見てみたい」と住宅展示場を訪れる方も多いのではないかと思います。 住宅展示場探訪記 住宅展示場では邸宅と呼ぶに相応しい立派な…

SE構法(SE工法)の耐震性:本当に在来工法よりも強いのか

日本の戸建て住宅のほとんどは木造です。鉄骨造やコンクリート造の住宅を取り扱う大手ハウスメーカーもありますが、戸建て住宅全体から見ればまだまだ少数です。 基本的に日本人の大多数は木の家が好きなのでしょう。森林が豊富な国ですので、それも当然のこ…