バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

新入社員必見!構造設計者が最初の3年間でやっておくべき3つのこと

入社して3年もすれば、いろいろなことを任せてもらえるようになります。

 

□■□疑問■□■

春から新社会人となり構造設計の仕事を始めます。どんなことを意識して仕事に取り組めばいいでしょうか。

 

□■□回答■□■

今さらながら「あの時ああしておけばよかった」と思うこともありますし、「やっておいてよかった」と思うこともあります。また、若手社員に対して「なんでこれをやってないのか」と思うこともあります。これから構造設計者になる、あるいはなったばかりの若手に望むことを紹介します。

 

 

一級建築士の取得

まず一つ目はこれです。たかが資格、されど資格です。別に持っているからと言って「すごいね」とはなりませんが、一級建築士にならなければ構造設計者の必須資格である「構造設計一級建築士」の受験資格すら得られません。

 

大学院が実務認定されなくなったため、最短でも「2年目に一級建築士合格、3~7年目で一級建築士としての実務5年、8年目でようやく構造設計一級建築士の受験」です。資格が取れるのは若くても32歳です。

 

そのころには「独立したい、転職したい、何かしたい」と考えているかもしれません。こういう時に資格があると無いとでは大違いです。選択肢を増やすためにも早めに取っておきましょう。

 

一級建築士は難関資格に位置付けられており、合格率はそこそこ低いです。合格率20%弱の学科試験、合格率40%の製図試験を突破する必要があります。

一級建築士の本当の難易度:ここ数年の合格率とゼネコンマンが思うこと

 

とはいえ、やれば受かります。やりさえすれば学科は一発で受かります。大半の受験者が苦手意識のある構造力学を専門としているのですから、すでに一歩リードです。あとはやるだけです。仕事は年々忙しくなっていきます。先延ばしにしても何もいいことはありません。

 

学科に通れば次は製図ですが、「合格率の低い学科さえ通れば、後は半分近く合格する製図試験だけだから大丈夫」、そう思っているとしたら半分正解で半分間違いです。

 

半分に入るということは、隣の席のお兄さんよりいい図面を描くだけでいいわけです。しかし、隣のお兄さんも本気だということを忘れないでください。合格率の低い学科試験を通ってきた手強い競争相手です。

 

幸い製図試験は学科をパスすれば3回までは受けられます。半分受かる試験で、3回連続で落ちるようなことだけはやめましょう。

一級建築士試験体験記:学科と製図と勉強法と

 

一級建築士を持っていないせいで人生設計まで狂ってしまうかもしれません。取得まで「結婚はできない」「子供は作れない」、そう言って人生の大切なイベントを先送りにしている人がいます。逆に「結婚したから」「子供が生まれたから」、そう言い訳していつまでも合格しない人もいます。

 

世代別の合格者数で言うと、「20代が一番多い」なんていう年もあります。できる人はどんどん抜けていき、いつまでも合格しない人が30代、40代になっていくのです。

 

どうせやるなら一発で、それができるのが構造設計者です。

 

構造力学の素養を絶やさない

実は構造力学を大部分忘れてしまっても、構造設計の実務に支障が無い場合があります。本来は必要なはずの知識も解析ソフトが補ってくれるので、難しいマトリックスだの微分方程式だのは使わなくなります。

 

そうすると長く構造設計をやっている人ほど構造力学から離れている期間が長くなってしまい、構造力学的に間違ったことを言い出すこともあります。最近まで学生だった若手社員の方がよっぽど構造力学や最新の理論について詳しいなんてことも起こりかねません。

 

実務に関しては上司の方がよくわかっているでしょうが、こと構造力学に関しては間違っていると思ったら間違っているとはっきり主張すべきです。構造力学に新入社員も上司もありません、正しいものは正しい、違うものは違うのです。

 

「普段こうやっているから」、「解析したらそうなっているから」というような理由にならない理由に対しては「力学的に間違っています」、「こちらの方が合理的です」としっかり主張しましょう。その代わり、上司のプライドを傷つけないよう、言い方には気を付けてください。

 

当然ながら構造設計の基本は構造力学です。構造力学を「昔大学でやったもの」にせず「今仕事で使うもの」と認識してください。最初にしっかり「自分の頭で考える」癖をつけておけば、それが当たり前になります。「当たり前」のレベルを高く持ちましょう。

 

いい印象を付ける

これは構造設計者に限らず新入社員全般に言えることですが、最初の3年間でその人の職場でのイメージは何となく出来上がってしまいます。ブラックな企業でないのなら、まず3年間しっかりといいイメージが付くよう頑張ってください。

 

「締め切り前日には必ず仕上げてくれる」、「資料が丁寧だ」と言ったポジティブなものから「1から10まで説明しないとわからない」、「時間にルーズだ」と言ったネガティブなものまで、一度付いてしまったイメージはなかなか変わりません。一緒に仕事をしたことがない人にもそう思われることになります。

 

同じ仕事を同じようにやっても評価が高い、低いということがイメージによっても変わってきます。ミスしたときに「あいつもたまにはミスするか」と思われるのと、「あいつはまたミスしたのか」と思われるのでは仕事のしやすさが全然違います。

 

また「優秀なやつだ」と思われることで自分自身も「優秀であるべきだ」と意識するようになります。あるいは意識していなくても無意識にそうなるようです。「立場が人を作る」というやつです。この意識の差が10年後に大きな能力の差となって現れます。

 

大半の人が「構造設計がしたいから構造設計者になる」のだと思います。文系就職なら配属が希望と違うことは往々にしてあるでしょうが、専門性の高い構造設計は違います。折角やりたい仕事ができているのなら、その道をしっかり究めてみてはいかがでしょうか。それには最初の3年間に何をするかが非常に重要になってきます。