バッコ博士の構造塾

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木造・二級・一級建築士の違い:業務範囲から資格試験までを徹底比較

一口に建築士と言っても、一級、二級、木造建築士がありますし、2008年からは一級建築士の上位資格である構造設計一級建築士、設備設計一級建築士も新設されています。

 

□■□疑問■□■

木造建築士、二級建築士、一級建築士の違いは何でしょうか。建築士を目指す場合、一級建築士が必須になるのでしょうか。

 

□■□回答■□■

取り扱える建物の規模は「木造<二級<一級」ですが、資格試験の合格率は逆に「木造>二級>一級」という順になっています。木造よりも二級、二級よりも一級を取得したほうが望ましいのは確かですが、目指す建築士像によって必要な資格は違います。完全に木造の住宅に特化するなら木造建築士でも事足りる場合もありますし、大手に就職した場合は一級建築士の取得を目指すことになるでしょう。各建築士資格の違いを知り、適切な目標を設定しましょう。

 

 

業務範囲

一級建築士が取り扱える建物の規模、構造、用途に制限はありません。全ての建物が対象となります。

 

二級建築士ではガクッと業務範囲は小さくなります。木造以外では300m2以下のみ、木造でも1000m2を超える場合は平屋限定になります。

 

木造建築士では300m2以下の2階建て以下の木造限定です。一般の人でも100m2以下の木造建物を取り扱えることから、木造建築士取得による業務範囲の拡大は非常に限定的です。

 

受験資格

木造建築士二級建築士で受験資格は同じです。建築系の高専卒、専門卒、短大卒、大卒はすぐに受験可能です。また建築設備士も実務経験なしで受験可能です。また、学校で一切建築について学んでいなくても、実務経験が7年以上あれば問題ありません。早ければ20歳で受験できることになります。

 

一級建築士は学歴だけでは受験できず、最低でも2年以上の実務が必要です。また、二級建築士、あるいは建築設備士としての実務が4年以上あれば受験可能です。早ければ24歳で受験できることになります。

 

大学院の修士課程が実務経験と見なされなくなったので、大学院へ進学すると一級建築士の受験資格取得が遅れることになります。また、建築関連の学校を卒業していない場合は「実務経験7年、二級建築士合格、実務経験2年」を経てようやく一級建築士が受験できるようになります。

 

受験者構成

木造建築士の受験者数は600人前後と、資格試験としてはかなり規模が小さいです。その大半は学生で、85%にもなります。また受験者の年齢は24歳以下が80%を占め、全受験者を平均しても24歳を少し超える程度という非常に若い人が受ける試験です。

 

二級建築士の受験者数は24,000人前後と大幅に増えます。建設会社、建築士事務所に所属している人が半分を占め、学生は2割以下です。24歳以下が半分を占めますが、平均年齢は木造建築士より4年増えて28歳強になります。また、実務経験のみによる受験が2割弱います。

 

一級建築士の受験者数は30,000人強もおり、建築関連資格で最も多いです。建設会社、建築士事務所に所属している人が70%以上を占めます。意匠設計者が40%強、構造設計者が10%弱で、半分以上が設計従事者です。受験要件としては、大学卒が70%、二級建築士が20%程度です。20代が半分、30代が4割、残りが40代以上で、平均年齢は二級建築士より4年近く増えて32歳弱になります。

 

試験構成

建築に関する知識を問われる「学科」と、実際に建物の模擬設計を行う「設計・製図」が課されます。学科合格者のみが後日、設計・製図試験を受けることができます。なお、設計・製図の課題は事前に公開され、対策を行うことができます。また学科合格・製図不合格の人は翌年、翌翌年は学科試験免除で製図試験を受けられます。

 

木造建築士では学科が「計画」「法規」「構造」「施工」の4科目で、2科目ごとに試験時間が3時間の計6時間です。五肢択一、各25問の100点満点で、6割程度の正答率で合格です。また科目ごとに足切り点数があります。設計・製図の課題は「木造2階建ての専用住宅」で、試験時間は5時間です。

 

二級建築士も試験構成は木造建築士と同じです。学科は6割程度の正答率で合格です。ただし、設計・製図の課題は「住宅」ではありますが「専用住宅」とは限らず、「併用住宅」となる場合が多いです。また、まれに木造以外の構造形式となる場合もあります。

 

一級建築士では学科が「計画」「法規」「構造」「施工」の4科目に「環境・設備」が加わった5科目です。「計画」と「環境・設備」が各20問で2時間、「法規」が30問で1時間45分、「構造」と「施工」がそれぞれ30問と25問で2時間45分の計6時間半です。四肢択一の125点満点で、7割強の正答率で合格です。設計・製図の課題は様々で、「免震構造」のような特殊な構造形式の場合もあります。試験時間は6時間半です。

 

建築士試験の合格率

ここ数年間でのおおよその平均値です。

 

木造建築士

学科試験:受験者数520人、合格率53%、合格者数280人

設計製図:受験者数320人、合格率63%、合格者数200人

 

二級建築士

学科試験:受験者数20,300人、合格率35%、合格者数7,100人

設計製図:受験者数10,200人、合格率54%、合格者数5,500人

 

一級建築士

学科試験:受験者数26,200人、合格率18%、合格者数4,700人

設計製図:受験者数9,200人、合格率40%、合格者数3,700人

 

学科と設計製図の合格率を掛け合わせると、木造で33%、二級で19%、一級で7%となり、一回で試験をパスするのはなかなか狭き門であることがうかがえます。

 

一級建築士では20代後半から30代前半の合格率が高く、40代以上では低くなる傾向にあります。また、24-26歳の合格者数も全体の20%以上を占めており、若くして一級建築士になる人もかなりいるようです。

 

資格手当がつく会社も多数ありますので、独立の有無に関係なく早めに取得してしまいたいものです。