バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

2023-01-01から1年間の記事一覧

標準層せん断力係数Coとは:地震の大きさを考える重要な指標

地球の誕生以来、これまで数多くの地震が発生してきました。近年は観測網が発達し、たくさんのデータが蓄積されています。 しかし、いまだかつて一度も「まったく同じ地震」というのは発生していません。 似たような規模、似たような震源の地震であっても、…

読者からの相談事例②:「この家どう思います?」

家の耐震性というのは通常、日常生活の中で感じることはできません。いざ地震や台風といった災害が起こったときに初めてわかるものです。 「どうせわからないのだから」と気にすることなく過ごせる方もいる一方、「本当のところはどうなのだろうか」と不安に…

Ai分布とは:式の意味とその根拠

地震に対して安全な建物を設計するには、どのような情報が必要になるでしょうか。 まず何よりも、建物に作用する地震の力がどのくらいになるかを知ることが重要です。これが分からなければ何も始められません。 しかし、地震時の建物の動きは複雑です。建物…

軽量鉄骨造ブレース構造建物の耐震性:木造との比較、ハウスメーカーによる違い

家を新築したいと思ったとき、決めなくてはならないことがたくさんあります。 中でも「どんな構造の家にするか」というのは大きなポイントです。採用する構造によって、できること・できないことがある程度決まってしまいます。 まずは建物の骨組をどんな材…

土台とはなにか:基礎との違い、火打ち土台の必要性

木造の建物はたくさんの材によって構成されています。それぞれの材は使う場所によって呼び名や役割が違い複雑ですが、建築に携わる人間ならちゃんと覚えておかなくてはなりません。 また、家づくりに興味がある人も知っておいて損はないでしょう。建築士や大…

ハニカム構造とは:建築との親和性とその欠点

できるだけ少ない材料で、できるだけ強いものをつくりたい。昔からたくさんのエンジニアが取り組んできた課題であり、今も研究や開発が続けられています。 これまでたくさんの構造が提案されていますが、一般の方にも広く知られているものとして「ハニカム構…

設計用地震動とは:観測波・告示波・サイト波・基整促波

科学技術は日進月歩ですが、いまだ地震を予測することはできません。近い将来に地震の予測ができるようになるということもないでしょう。 地震予知・予測は構造設計を変えるか? どんな地震が起こるかわからないからといって、「どんな地震が起こっても絶対…

微小変形理論のエッセンス:大変形理論との違いと使い方

何ごともコストパフォーマンスというのは大事です。 1週間頑張って勉強して試験で100点を取るのも素晴らしいですが、もし前日に1時間勉強すれば90点を取れるとわかっていれば前日から勉強を始める人も多いかと思います。単位を取るためには98点以上が必要と…

平面保持の仮定:知っておくべき二つの使いどころ

物理学ではいろいろな自然現象を数式で表現することで未来を予測したり、今起こっていることの説明を試みたりします。最も身近なものとしては天気予報が挙げられるでしょう。 予測精度を高めるためには、その現象を精確に数式で表す必要があります。ただ、そ…

トルコ・シリア地震について知っておくべきこと:その震度と被害

2023年の2月6日、トルコ南部、シリアとの国境付近でマグニチュード7.8(Mw)の巨大地震が発生しました。そしてその約9時間後、今度はマグニチュード7.5(Mw)の地震が発生しました。執筆時点(2023/3/18)でトルコ・シリア両国を合わせて5万人を超える方が亡くなら…

TMDがよくわかる:その原理と押さえておきたいポイント

世の中には揺れてしまうと困るものがたくさんあります。揺れによって不具合を起こす・壊れるといったモノへの影響から、居心地が悪くなる・ケガをするといった人への影響もあります。最悪の場合、人命に関わるということもあります。 そのため、揺れを小さく…

免震の今と昔:免震の歴史と変わりゆく常識

地震対策技術のひとつである「免震」ですが、すでにかなり確立された技術となっています。最先端の技術であった時期はとうに過ぎ、誰でも設計できるとは言いませんが、もはや汎用的な技術になったと言ってもいいでしょう。 免震とは もちろん未解明な部分は…