バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

耐震・制振・免震

建物の滑り量と地震力の関係:効果の薄い製品に騙されないように

地震によって建物が揺れるのは、地面と建物が基礎を介してつながっているからです。地面の揺れが建物に伝わってくることで被害が生じます。もし建物と地面とがつながっていなければ、地震によって建物が揺れることはありません。 建物と地面とのつながりを切…

TMDがよくわかる:その原理と押さえておきたいポイント

世の中には揺れてしまうと困るものがたくさんあります。揺れによって不具合を起こす・壊れるといったモノへの影響から、居心地が悪くなる・ケガをするといった人への影響もあります。最悪の場合、人命に関わるということもあります。 そのため、揺れを小さく…

免震の今と昔:免震の歴史と変わりゆく常識

地震対策技術のひとつである「免震」ですが、すでにかなり確立された技術となっています。最先端の技術であった時期はとうに過ぎ、誰でも設計できるとは言いませんが、もはや汎用的な技術になったと言ってもいいでしょう。 免震とは もちろん未解明な部分は…

中間層免震がわかる:揺れ方の特徴とメリット・デメリット

今現在、最高の地震対策技術は「免震」です。そしておそらくこれからも最高の技術であり続けるでしょう。 免震構造がわかる 1995年の兵庫県南部地震以降、免震建物はその数を急激に伸ばしており、今や戸建て住宅から超高層建物まで、幅広く適用されています…

アクティブ制振装置の誤作動による安全性への影響

2022年9月18日、仙台市のホテルにて「建物が大きく揺れたため宿泊客が避難する」という事態が起こりました。制振装置の誤作動が原因ではないかとされています。 本来は建物の揺れを小さくするための装置がなぜ逆に建物を揺らしてしまったのでしょうか。装置…

鉛ダンパーとは:免震効果と注意点について

地震時に建物に生じる振動のエネルギーを吸収する装置を「ダンパー」と言います。 ダンパーは、使用する材料の違いや、エネルギーを吸収する機構の違いなどによって分類することができます。それぞれに特徴があるため、設計する建物に応じて使い分ける必要が…

すべり支承とは?種類・使い方・摩擦係数を解説

地震対策技術として「耐震・制振・免震」の3つがありますが、この中でもっとも性能が高いのが「免震」です。建物の下に「免震層」と呼ばれる柔らかい層を設置し、地震の揺れを伝わりにくくしています。 免震構造がわかる 免震層をどのように構成するかで性能…

トグル制震:飛島建設の特許工法を解説

制振構造とは、地震や強風による揺れを小さくするために「エネルギーを吸収する装置」を備えた建物のことです。 制振・制震構造とは エネルギーとは「力×変位」です。たくさんのエネルギーを吸収するには、できるだけ大きな力で、できるだけ大きく動く必要が…

石場建ての耐震性能:免震効果は期待できるのか

建築基準法には「土台は基礎に緊結すること」と書かれています。 土台とは柱の下に水平に敷いた木の材、基礎とは建物を支える鉄筋コンクリートの部材です。通常は基礎にアンカーボルトという鋼製の部材を埋め込んでおき、これに土台を通してから締め付けます…

ソフトストーリー制振とは:国立競技場にも採用された振動制御技術

建物を地震に強くするためのアプローチには「耐震・制振・免震」の3つがあります。どんなに新しく見える技術であっても、このうちのどれかに該当します。 耐震・制振・免震 この中で最も効果が高いのは「免震」です。揺れてから対処する「耐震」や「制振」と…

UFO-Eの解析結果:地震力半減の効果はあったのか

基礎と建物との間に挟み込むだけで地震の力を半減できるという触れ込みの「UFO-E」という金物があります。 本当に効果があるのか、2記事を使って検討してみました。そして結論は「効果はあるが、限定的」というものでした。 構造設計のプロがUFO-Eの摩擦減震…

球面すべり支承とは:金属を用いた合理的な免震システム

1995年の阪神淡路大震災以降、数多くの免震建物が建てられてきました。近年では高層マンションや一定規模以上の病院ではかなりの確率で免震構造が採用されています。 免震構造がよくわかる 免震構造を「ゴムの上に載っていて地震の揺れが伝わらない建物」と…

アンボンドブレースがわかる:座屈しないとこんなにも使いやすい

建物に作用する地震の力にどうやって抵抗するか、それにはいろいろな方法があります。「曲げ」によって抵抗する「ラーメン構造」、「せん断」によって抵抗する「壁式構造」、そして「伸び」により抵抗する「ブレース構造」などがあります。 ラーメン構造がわ…

減震パッキン『UFO-E』の効果を再考する

基礎と建物との間に挟み込む、直径90mmの小さな「UFO-E」という金物があります。この金物を設置するだけで、建物に伝わる地震の力を大幅に減じることができるということです。 もし本当に素晴らしい効果があるのであれば、画期的な商品です。非常に興味を引…

免震構造を科学する:簡単な力学で免震の効果を理解しよう

「免震」というと、なんだか最新の技術のように思われる方もいますが、実際にはかなり長い歴史があります。 1890年代にはすでにアイデア自体はあり、その後いくつも特許が出されています。建物を縦横に並べた丸太の上に載せる、ボールの上に載せる、ヒョロヒ…

耐震等級3と耐震等級2+制振はどっちが強い?構造設計のプロが回答

建物の耐震性能を表す指標として「耐震等級」があります。等級は1から3まであり、3が最高評価です。 耐震等級1は現行の建築基準を満たす耐震性を有していることを示しており、耐震等級2ではその1.25倍、耐震等級3では1.5倍の強さを有していることになります…

構造設計のプロがUFO-Eの摩擦減震効果について徹底検証

戸建て住宅では、高層ビルでは使用しないような変わった技術があります。建物規模が小さく重量が軽いこと、特例により構造計算が必要ないこと等が影響していると考えられます。 特徴的なものとして、「制震テープ」や「エアー断震」が挙げられます。他に例を…

免震装置の種類と特徴:免震支承から免震ダンパーまで

東洋ゴム工業の免震ゴム、KYBの免震ダンパー、免震構造に関する不祥事が社会問題となりました。連日テレビで取り上げられる大変な事態でした。しかし、その割に免震に関する理解が十分に広がっていないように感じられます。 東洋ゴム工業の免震ゴムデータ不…

オイルダンパーの原理と仕組み:制振ダンパーから免震ダンパーまで

以前に比べ、「制振」・「免震」という用語が一般化してきたように思います。 住宅展示場に行けば、いろいろなハウスメーカーが制振や免震を進めてきます。タワーマンションのパンフレットを見ても制振や免震の文字が躍っています。 この制振や免震に欠かせ…

残留変位・残留変形とは?制振・免震建物の応答に与える影響

針金をほんの少しだけ曲げてから手を離すと、針金は元に戻ります。しかし、グイっと曲げてしまうと、手を離しても元に戻らなくなります。 建物の場合も同様で、小さな地震の後では元に戻ったとしても、大きな地震の後では元に戻らないことがあります。変形し…

仕口ダンパーとは?お手軽に導入できる制振装置の代表格

地震や強風による建物の揺れのエネルギーを吸収し、揺れ幅を低減する装置を制振ダンパー、あるいは制振装置と呼びます。 戸建て住宅用の小型のものから超高層ビルにも使用できる大型のものまで、いろいろなサイズがあります。最近の大手ハウスメーカーの注文…

免震レトロフィットとは:最も効果のある耐震補強工法

1981年以前に建てられた建物は、現行の耐震基準に適合していない可能性があります。2016年の熊本地震では、建設年が1981年以前か以後かで建物の倒壊率に大きな差がありました。 建物の耐震性を向上させるには耐震改修を行うしかありません。しかし、実際に工…

KYBの免震・制振装置のデータ改竄:構造設計者が思うこと

2018年10月、KYBとその子会社のカヤバマシナリーが「免震用オイルダンパー」および「制振用オイルダンパー」の検査データを改竄していることが明らかになりました。 横浜での杭打ちデータ不正、東洋ゴム工業の免震装置データ不正と建築業界で不祥事が続いて…

制震テープの効果は?構造設計のプロが本当の性能を徹底解説

世の中にはいろいろな種類の制振ダンパーが出回っていますが、その中でも異彩を放っているのが「制震テープ」です。 制震テープ単体では制振ダンパーとは呼べません。耐力壁にこのテープを貼り付けることで、ただの耐震の壁が制振の壁へと変化するのです。 …

構造設計のプロが住友ゴムの「ミライエ」をお薦めする4つの理由

今一番売れている木造住宅用の「制振ダンパー」と言えば、住友ゴム工業の「ミライエ(MIRAIE)」でしょう。 木造住宅を手掛ける大手ハウスメーカーの大半は、独自の「制振ダンパー」を開発しています。自社の耐震性能の高さをアピールするためなので、「A社…

不動産投資のリスク低減:地震対策は免震にすべき3つの理由

日本人は諸外国に比べ銀行預金が好きと言われますが、株式やその他いろいろな投資を行っている方も増えてきているかと思います。 投資にリスクは付き物ですが、中でも単価が大きい不動産投資は気を付けて行う必要があるでしょう。また、日本は自然災害が多く…

東洋ゴム工業の免震ゴムデータ不正:構造設計者が考える最善の対応

2015年3月に東洋ゴム工業(現TOYO TIRES)が製造する免震ゴムの不正が明らかになりました。 病院や庁舎を含め多くの建物が対象となっており、建築の品質に関する信頼が大きく揺らいでいます。 不正があったと考えられる免震ゴムの全数を取り換えるということ…

木造住宅に最適な制振・制震ダンパーはどれ?価格・耐久性・耐震性を比較

木造をメインとする大手ハウスメーカーの大半が独自の制振ダンパー(制振装置)を開発しています。 □■□疑問■□■ 数ある制振ダンパーの中で、木造住宅に最も適しているのはどれでしょうか。 □■□回答■□■ 耐震構造でも十分安全な建物にすることは可能ですが、も…

軟弱地盤こそ免震構造にするべき:地盤と免震に関する勘違い

平成12年の建設省告示2009号の第6による方法では、第3種地盤と呼ばれる軟弱な地盤や液状化の恐れがある地盤では免震構造の設計を行うことができません。 □■□疑問■□■ 軟弱な地盤では免震の効果を発揮できないため、免震建物を建設することはできないと聞きま…

タワーマンションに住むなら制振か免震か?専門家でも決めかねる難問

近年建設されるタワーマンションの大半が制振構造または免震構造となっています。 □■□疑問■□■ スーパーゼネコン各社がタワーマンション用の高性能な制振システムを開発しています。それでも免震構造が耐震性に最も優れた構造なのでしょうか。 □■□回答■□■ 基…