バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

耐震・制振・免震

切替え型ダンパーが免震構造を守る:巨大地震に備えた新たな制御技術

近い将来に発生が予測されている南海トラフ地震では、東北地方太平洋沖地震を上回る揺れが首都圏、関西圏に生じるでしょう。 □■□疑問■□■ 設計時に想定した地震よりも大きな地震が発生した場合、免震建物はどうなるのでしょうか。 □■□回答■□■ 免震建物の下部…

慣性質量ダンパーができること:モード制御と変位増幅

今まで構造設計者は、建物の硬さをコントロールすることはできましたが、建物の重さをコントロールすることはできませんでした。 □■□疑問■□■ 慣性質量ダンパーとはなんでしょうか。通常の制振ダンパーとは何が違うのでしょうか。 □■□回答■□■ 慣性質量ダンパ…

超長周期化した免震構造はどうなる?固有周期8秒の免震の是非

免震構造では「免震層」と呼ばれる柔らかい層の効果により地震の力を大幅に低減することができます。 □■□疑問■□■ 「免震層」をもっと柔らかくしていくとどうなるのでしょうか。柔らかいほど地震の力を小さくできる気がします。 □■□回答■□■ 免震層を柔らかく…

時刻歴応答解析がよくわかる:免震建物・超高層ビル検証の必須技術

免震建物や超高層ビルは通常の建物に比べてゆっくり揺れます。揺れ方が違うということは地震の時に生じる力が違うということです。地震の力を算定するには「時刻歴応答解析」を行います。 □■□疑問■□■ 「時刻歴応答解析」がよくわかりません。通常の構造計算…

中低層マンションに住むなら免震:コスト増でもそれだけの価値がある

耐震・制振・免震の違いを知ることも大切ですが、戸建住宅かマンションか、中低層か高層かで適した構造は違ってきます。 □■□疑問■□■ 耐震・制振・免震のメリット、デメリットを考慮したうえで、中低層のRC造マンションにはどの構造が最適でしょうか。 □■□回…

免震構造の設計方法:免震層の基本的な数値を押さえよう

免震構造の普及に伴い、今や大手設計事務所やゼネコンだけが手掛けるものではなくなりました。地方や中小の企業でも免震構造の設計を行うようになっています。 免震構造の設計で最も重要なのは「免震層」の設計です。免震層は建物の基礎や建物下部に設置され…

免震構造がよくわかる:固有周期・振動モード・エネルギー吸収

1995年の兵庫県南部地震以降、免震建物の着工数は大幅に上昇しました。今ではかなりの数の免震建物が日本中にあります。 □■□疑問■□■ 免震構造とは結局のところどういう建物を指すのでしょうか。「地震を免れる」と言われてもよくわかりません。 耐震・制振・…

竹中工務店の超高層制振マンション:THE制振ダブル心柱システムの考察

スーパーゼネコン各社のタワーマンション用の制振、免震システムの考察もとりあえず最終回となる5回目です。 □■□疑問■□■ 竹中工務店の独自技術、THE制振ダブル心柱を採用したマンションの性能はどうでしょうか。 大林:DFS(デュアル・フレーム・システム) …

空気で浮かぶエアー断震は免震よりも優秀か?法律は置いておくとして

空を飛んでいれば地震も怖くない、構造設計者なら誰しも一度は考えたことがあるアイディアです。 □■□疑問■□■ 宙に浮く建物「エアー断震」がテレビで取り上げられていました。耐震や制振はもとより、免震よりも優れた性能を発揮するのでしょうか。 □■□回答■□■…

大成建設の超高層制振マンション:TASS Flex-FRAMEの考察

スーパーゼネコン各社のタワーマンション用の制振、免震システムの考察も4回目となりました。 □■□疑問■□■ 大成建設の独自技術、TASS Flex-FRAME(タス・フレックス・フレーム)を採用したマンションの性能はどうでしょうか。 大林:DFS(デュアル・フレーム…

清水建設の超高層免震マンション:スイングセーバーの考察

スーパーゼネコン各社がタワーマンション用の制振、免震システムの開発を競っています。 □■□疑問■□■ 清水建設の独自技術、スイングセーバーを採用したマンションの性能はどうでしょうか。 大林:DFS(デュアル・フレーム・システム) 鹿島:スーパーRCフレー…

制振・制震ダンパーの種類と特徴:構造設計者が効果を徹底比較

制振構造はエネルギー吸収を行うダンパー(制振装置)の設置方法やその種類等によって、いろいろと分類することができます。 □■□疑問■□■ いろいろな種類のダンパーがあり、どれがいいのかわかりません。違いや特徴を教えてください。 □■□回答■□■ 使用する材…

制振・制震構造がよくわかる:アクティブ制振からパッシブ制振まで

「制振」と表記されたり「制震」と表記されたり、耐震や免震と比べてわかりにくいのが制振構造。ただ、住宅展示場に行くと木造住宅の多くに適用されており、今や標準装備の様相を呈しています。 □■□疑問■□■ 制振構造とは結局のところどういう建物を指すので…

鹿島建設の超高層制振マンション:スーパーRCフレーム構法の考察

東日本大震災以前から耐震性能の高いタワーマンションを建設するべく技術開発を進めていた会社があります。 □■□疑問■□■ 鹿島建設の独自技術、スーパーRCフレーム構法を採用したマンションの性能はどうでしょうか。 大林:DFS(デュアル・フレーム・システム…

耐震構造がよくわかる:許容応力度計算から保有水平耐力計算まで

住宅展示場やモデルルームで必ず目にする「耐震」「制振(制震)」「免震」という用語。巷にはこれらの用語の説明が溢れていますが、実際のところ玉石混淆で結局は判断を下す材料になり得ていないです。 □■□疑問■□■ 耐震構造とは結局のところどういう建物を…

大林組の超高層マンション:制振システムDFSの考察

タワーマンションが乱立し、タワーマンションであるというだけでは市場で埋没してしまいます。新たな付加価値を持ったタワーマンションが求められています。 □■□疑問■□■ 大林組の独自技術、DFS(Dual Frame System:デュアル・フレーム・システム)を採用し…

免震構造と縦揺れの関係:構造の専門家が丁寧に解説

地震が発生すると、水平方向(横揺れ)だけでなく鉛直方向(縦揺れ)にも地盤が振動します。 □■□疑問■□■ 免震は横揺れにしか効果が無いと聞きました。縦揺れに対しても安全なのでしょうか。 □■□回答■□■ まず問題ありません。縦揺れに対して、耐震建物も免震…

免震建物を支える免震ゴム:強くて柔らかいを実現する秘密

兵庫県南部地震以降、免震建物の建設数は格段に増え、2015年末現在でビル、戸建住宅合わせて約9000棟に達します。 □■□疑問■□■ 免震建物は柔らかいゴムで支えられているというのは本当でしょうか。重量が何千トン、何万トンとある建物を支えられるのが不思議…

五重塔はなぜ倒れない:構造のわからなさがわかる話

1400年以上の歴史を誇る法隆寺五重塔。その他、日本全国にいくつもの五重塔が現存しており、今なお構造技術者を惹き付けて止みません。 □■□疑問■□■ 五重塔は非常に耐震性が高く、地震で倒れたものは無いと言われています。それはなぜでしょうか。そして現代…

木造住宅なら耐震で十分である:構造の専門家がたどり着いた結論

家づくりに正解はありませんし、建て主の数だけ正解があるとも言えます。また、耐震性については地震があるまで正解かどうか答え合わせすらできません。それでも「正解が知りたい」というのが人情です。 □■□疑問■□■ 耐震・制振・免震のメリット、デメリット…

制振構造の限界は?効くほど効かなくなるダンパーのジレンマ

建物が揺れるエネルギーを吸収する装置「ダンパー」を設置した建物が「制振」です。免震でもダンパーを使用しますので、どちらに使用するダンパーなのか区別するために「制振ダンパー」と呼ぶこともあります。 制振・制震ダンパーの種類と特徴:構造設計者が…

耐震・制振・免震:メリット・デメリット以前に知っておくべき性能の違い

いろいろなサイトで「耐震・制振(制震)・免震」の違いや特徴が紹介されています。 超高層マンションのチラシには「ダンパー」や「積層ゴム」といった専門用語が並び、ハウスメーカー各社は建物の揺れを止めるための様々な装置を開発しています。 では結局…