日本人は諸外国に比べ銀行預金が好きと言われますが、株式やその他いろいろな投資を行っている方も増えてきているかと思います。
投資にリスクは付き物ですが、中でも単価が大きい不動産投資は気を付けて行う必要があるでしょう。また、日本は自然災害が多く、特に地震の際には一気に資産を失うリスクがあります。
しかし、世の中には成功事例の情報が溢れています。稼いでいるサラリーマン大家さんの話などはとても魅力的に映ります。
また、株式は企業が倒産してしまえば紙くずになってしまいますが、不動産の価格は比較的安定しています。実際のモノを扱うので、急に価値がゼロになることもありません。
では、できるだけ地震のリスクを減らし、安心して不動産投資を行うにはどうすればいいのでしょうか。
日本中どこでも地震は起きる
地震のリスクをゼロにしたいなら、地震が起こらないところにあるビルに投資するのが最善です。ただ、残念ながら日本にはそういう土地は無さそうです。
まだ記憶に新しい2016年の熊本地震、そして2018年の北海道胆振東部地震、このどちらも地域係数が1以下の地域です。
地域係数とは、「この地方はあまり地震が起こらないから、地震の力をこれだけ低減して設計してもいいよ」という値です。つまりこの値が1以下ということは、地震のリスクが小さいと思われていたということです。
やはり日本国内では、地震が無いと断言できるようなところはありません。地域係数が1である首都圏、関西圏はさらにリスクが高いと言えます。
事実、南海トラフや相模トラフ沿いの巨大地震の発生が危惧されており、両都市圏は長時間に渡って大きな揺れが続くと予想されています。こられの地震が発生すれば、大きな被害は免れないでしょう。
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地盤が良ければ安心か
地震の揺れ
「地震が怖いなら地盤のいいところに住む」、これを住宅購入の際の指標にしている人もいるかもしれません。
しかし、実際には地盤だけで被害の大小が決まるわけではありません。地震時の建物の揺れというのは、地盤の特性だけでなく、建物の特性によっても大きく変わります。
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また、地盤が悪いことを考慮して、設計用の地震の力を割り増している場合もあります。建物自体が強くなっている可能性もあるのです。
「地盤が悪い=建物被害が大きい」ではありません。逆に言えば「地盤が良い=建物被害が小さい」ではありません。
液状化
北海道胆振東部地震では液状化の被害が出ました。被害が出たのは沢や谷を埋め立てた地盤の緩い地域です。
地盤が良好であれば液状化の被害は生じないのは確かです。しかし、被害を受けるのは戸建住宅ばかりです。ビルが液状化の被害を受けたという話は聞きません。
それはなぜかと言うと、ビルの建設時には戸建て住宅よりもしっかりと地盤調査をするからです。調査結果を基に、しっかりとした液状化対策がなされています。
周辺道路の陥没等はあり得るかもしれませんが、建物自体には影響は少ないでしょう。
地盤にこだわり過ぎて投資ができない、というのはもったいないです。
免震は最高の地震対策技術
地震のリスクについて気になって調べている方は、建物の地震対策技術として「耐震」「制振」「免震」の3つがあることをご存知かもしれません。
そして「あれがいい」、「これがいい」といろいろな情報が入り乱れていることに気が付くことでしょう。
耐震・制振・免震:メリット・デメリット以前に知っておくべき性能の違い
もちろんそれぞれメリット、デメリットはあります。しかし、こと不動産投資に関しては「免震一択」だと思います。
PML(Probable Maximum Loss)の比較
「PML」とは、50年間のうちに10%以上の確率で起こるであろう地震に対する被害額の程度を建設費に対する割合で示したものです。
要するに、この値が大きければ地震のリスクが大きく、復旧にお金がかかるということです。
現行の基準に従って建設されたビルであれば概ね15%以下になりますが、かなり性能を高めた耐震、制振の建物では10%程度まで下がります。しかし免震の場合は、普通に設計しても5%程度にはなります。
他の構造に比べ、圧倒的に免震は性能が高いのです。もちろんイニシャルコストも高くなります。
自分の居住用に購入する場合、「起こるか起こらないかわからない」地震に対して費用をかけるかどうかはある意味賭けになります。
しかし、複数不動産を購入することを考えているのであれば、「必ず起こる」ものとして対処すべきです。
イニシャルは多少高くても、ランニングコストでは免震の方が安くなります。PMLは確率論的に導かれた指標であり、所有不動産数が増えれば増えるほど免震にする方が合理的になります。
中古市場での価値
まだまだ中古の免震建物の流通量が少ないため、免震であることがどこまで物件の価値を高めるか正確な評価は下りていません。
しかし、地震が頻発する昨今、その価値は高まっているものと思われます。実際、熊本では地震以降、割高の家賃設定をしていた免震アパートが満室になったということです。
大手デベロッパーも免震を前提としていることが多いようです。特にマンションではその傾向が顕著です。
今後中古市場でも免震が多く出回り始めるでしょう。そのとき、免震の物件と免震でない物件とでは大きく値段に差が付けられるかもしれません。
既存不適格
大きな地震があると耐震基準の見直しが行われます。そうすると、古い建物はどんどんと現行の基準を満たさない「既存不適格」の物件になっていきます。
既存不適格になってしまうと、現行の法律に合致していないため改修や増築に制限がかかることがあります。また、市場価値も下がることになります。
大地震によって直接被害を受けなくても、資産価値が目減りするリスクがあるということです。
しかし、こと免震に関しては既存不適格になる可能性は極めて低いと言えます。耐震や制振に比べ圧倒的に性能が高いので、多少基準が変わったところで適合しなくなることはないでしょう。