バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

減衰とは何か:減衰振動・自由振動・共振との関係

ばねに吊るしたオモリを引っ張ってから手をはなすと上下にビヨンビヨンと揺れます。プラスチックの定規を指ではじくとブーンと揺れます。

 

しかし、どちらもいつかは揺れが収まり止まってしまいます。揺れが収まるのはなぜか、それは「減衰」があるからです。

 

「減衰」とは、モノが振動するエネルギーを吸収・発散し、時間の経過とともに揺れを小さくしていく効果のことです。

 

モノの揺れ方は「重さ」と「硬さ」、そして「減衰」が大きく関わってきます。重ければゆっくりと揺れ、硬いと素早く揺れる、そして減衰が大きいと揺れが小さくなります。

固有周期とは

 

減衰の設定によってモノの揺れ方が実際にどのように変わるか見てみましょう。

 

 

減衰振動

外から力を加えない状態で揺れていることを「自由振動」といいます。ばねに吊るしたオモリを引っ張ってから手をはなした後、何もしないで眺めているだけなら、オモリは自由振動をしていることになります。

 

しばらく自由振動していると振れ幅が小さくなっていき、最後には止まってしまいます。このとき、振れ幅が小さくなっていく度合いを決めるのが減衰です。

 

しかし、減衰が大きすぎると揺れが1往復する間もなく収まってしまう場合があります。このときの減衰の大きさを「臨界減衰(りんかいげんすい)」といいます。この値を基準(h=100%)として、揺れの収まり方を見てみましょう。

 

揺れが往復するのにかかる時間を1秒としています。まずは減衰が小さい場合です。

減衰ゼロ(h=0%)では時間が経っても最初と同じ振れ幅ですが、その他の場合では少しずつ振れ幅が小さくなっていく様子がわかります。

次は減衰が大きい場合です。

振れ幅が一気に小さくなっていくのがわかります。h=80%ではほんのわずかしかマイナス側にいきません。

減衰と振れ幅の収まり方の関係は下の図に示すように、減衰の値に応じた指数関数によって決まります

最後はさらに減衰が大きい場合です。

もはや減衰が大きすぎて振動しません。ゆっくりと元の位置に戻っていくだけです。減衰が臨界減衰(h=100%)より大きい場合を「過減衰(かげんすい)」といいます。

共振と減衰

自由振動とは逆に、外から力を加えて揺すられている状態を「強制振動」といいます。このとき、加える力の周期とモノの周期とが一致すると、「共振」といって揺れがドンドン大きくなっていく現象が起こります。

共振現象の恐怖

 

加えた力の何十倍もの揺れが生じることもあり、とても危険な状態です。この共振と減衰との関係を見てみましょう。

 

まずは減衰が小さい場合です。

最初は小さかった揺れが時間の経過とともに大きくなっていく様子がわかります。しかし、減衰が大きいとその程度は小さくなります。

次は減衰が大きい場合です。

振れ幅が大きくなっていくのは同じですが、すぐに振れ幅が頭打ちになることがわかります。0.2秒と1.2秒では明らかに違いますが、1.2秒と2.2秒とではそれほど差は大きくなく、2.2秒と3.2秒とではほとんど同じ程度です。

減衰と振れ幅の増大の関係を下の図に示します。減衰がない場合(h=0%)は時間の経過に比例して直線状に振れ幅は大きくなりますが、減衰が少しでもあればいつかは上限値に達します。

減衰のポイント

減衰は揺れを止める力なので、基本的には大きいほうがいいことが多いです。以下、減衰について最低限覚えておいた方がいいポイントを書いておきます。

 

・減衰が大きいと揺れが収まるのが早い

・臨界減衰よりも減衰が大きくなると振動しなくなる

・共振による揺れの増幅を抑えるには減衰が重要

 

ここではごく初歩的なことだけを記しましたが、減衰に関するより詳細な内容は下記をご参照ください。

減衰係数・減衰定数