バッコ博士の構造塾

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許容応力度がよくわかる:これだけは知っておきたい設計の基本

建物の耐震安全性を検証する方法はいくつかありますが、損傷するかどうかを検証するには「許容応力度」計算を行う必要があります。各部材に生じる応力度が許容応力度以下となっていることを確認する計算です。

 

□■□疑問■□■
「許容応力度」がよくわかりません。材料の「強度」と何が違うのでしょうか。

 

□■□回答■□■
「許容応力度」とはまさにその材料が「許容」できる「応力度」です。部材に損傷が生じない範囲なら「許容」できます。単位面積あたりに生じている力の大きさが「応力度」です。「単位面積あたりに生じる力の大きさが材料に損傷を与えない範囲である」、これが許容応力度です。曲がる、切る、引っ張る、圧縮すると言ったいろいろな力の状態に応じて許容応力度が設定されています。
「強度」とは、これまたまさにその材料が持っている「強さ」の「度合い」です。許容応力度を超えると部材には損傷が生じますが、すぐに壊れるわけではありません。損傷しながらも力に抵抗することができます。そしてとうとう抵抗できず壊れてしまうときの応力度が強度です。

 

 

許容応力度を理解する

許容って何?

材料がどのくらいの力で壊れるかというのは、実際にその材料を用いて実験すればわかります。しかし、どのくらいの力まで許容できるかというのは、誰かが決めないことには決まりません。つまり、人間の都合により「ここまでは許容できる」と決めたということです。

 

部材が壊れることは許容できません。だからといって、ほんの少しの変形も許容できないということもありません。損傷しないギリギリまでなら許容する、というのが一般的です。「損傷する」とはどういうことか定義するのも難しいですが。

 

応力度って何?

強いコンクリートで造った柱と弱いコンクリートで造った柱があります。この柱にそれぞれ1トンの力を加えると、強いコンクリートの柱だけ壊れてしまいました。それはなぜでしょうか。

 

それは強いコンクリートで造った柱は細く、弱いコンクリートで造った柱は太かったためです。拍子抜けでしょうか。しかし、応力度を理解するためには大事な考え方です。

 

この例では、どちらの柱にも1トンの力が作用していますので「応力」は同じです。しかし、柱が力に耐えられるかどうかはそれだけではわかりません。応力を面積で割った「応力度」にすることで初めてわかります。

 

応力度の単位は力を面積で割ったものです。建築の構造の分野ではMPa(メガパスカル)またはN/mm2(ニュートンパースクエアミリメートル:単に「ニュートン」とも言います)を使用します。

 

柱の面積が小さければ応力度は大きくなり、面積が大きければ応力度は小さくなります。仮にコンクリートの強さが2倍であっても、柱の面積が1/3しかなければ、先に壊れるのは強いコンクリートの方です。

 

難しいわけではありませんが、「応力」と「応力度」の区別は非常に重要です。

 

長期許容応力度と短期許容応力度

許容応力度にも種類があります。「曲げる」や「引っ張る」のような力の作用の仕方による分類もありますが、力の作用する時間による分類もあります。それが「長期許容応力度」と「短期許容応力度」です。

 

建物に長期に作用する力とは、重力のことです。雪の多い地域では、ある程度の積雪を見込む場合もあります。建物ができてから解体されるまで、常に作用し続けます。

 

建物に短期に作用する力とは、地震や風の力のことです。作用する時間としては、地震であれば長くて数分、風であれば1時間程度でしょうか。建物の寿命が数十年とすれば、短期に作用する力はほんの一瞬の出来事と言うことになります。

 

常に作用し続ける力に対しては少し余裕を持っておきたくなります。逆に一瞬のことであれば、ある程度は大目に見てもいいかという気がします。そのため、一般的に短期許容応力度は長期許容応力度の1.5倍や2倍の大きな値となっており、重力に対してはかなり余裕のある設定になっています。

 

建物を施工する際の仮設の部材などでは「中期許容応力度」という考え方をすることもあります。工事期間中の数か月しか使用しないため、「長期許容応力度では余裕を見過ぎてもったいない」ということで用いられます。長期許容応力度の1.25倍としており、長期と短期の中間の値を採用します。

 

建築材料の許容応力度

人間が「このくらいなら許容できる」と材料ごとに決めた「応力度」が「許容応力度」でした。では具体的な建築材料について数値を見ていきましょう。

 

コンクリートの許容応力度

コンクリートはセメント、砂、砂利、水を混ぜ合わせ、水和反応により凝固させたものです。その配合により強度は大きく変化します。ここではコンクリートの特性を表す代表的な要素である「圧縮」について見ていきます。

 

コンクリートに圧縮荷重を加えていきます。このとき、ある荷重を超えると砂利の角を起点として内部にひび割れが生じます。荷重の増加に伴いどんどんひび割れが進展していき、他のひび割れと一体化して大きなひび割れになっていきます。そして最終的には破壊に至ります。

 

このとき部材に生じている圧縮応力度が「圧縮強度」で、この1/3倍がコンクリートの長期許容圧縮応力度、2/3倍が短期許容圧縮応力度になります。

 

強度の2/3倍の応力度までは損傷しない、つまり内部にひび割れは生じないということではありません。コンクリートは複雑な材料なため、明確に損傷する、しないの線引きをするのが難しく、便宜的に1/3や2/3という数値を使っています。

 

コンクリートは強度以下の応力度であっても、繰り返し載荷したり、長時間載荷したりすると壊れてしまうことがあります。コンクリートは謎多き材料であり、強度の2/3までしか使用できません。

 

鋼材の許容応力度

建築用鋼材は工場で管理された特性のばらつきが小さい材料です。製品ごとにばらつきの値は許容値内に収まっています。

 

鋼材を引っ張っていくと、途中からあまり力を加えなくても変形が大きくなっていく軟化現象が起こります。これを「降伏」と呼びます。そして更に伸び続け、最後には切れてしまいます。

 

部材が切れたときに生じている引張応力度が「引張強度」ですが、鋼材の許容応力度には強度が関係しません。鋼材の許容応力度は「降伏」する応力度を基準に決められます。降伏時の応力度が鋼材の短期許容応力度、この2/3倍が長期許容応力度です。コンクリートの圧縮許容応力度は長期と短期で1:2の関係でしたが、鋼材は1:1.5の関係にあります。

 

鋼材は降伏する前までは何回変形させても元の形状に戻ります。降伏してしまうと力を抜いても元に戻らず、損傷が蓄積していきます。