バッコ博士の構造塾

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住友林業のビッグフレーム構法の耐震性について構造設計者が考察

「家を建てるなら木造がいい」と考えている人も多いかと思います。では、さらに一歩踏み込んで「木造にするなら○○工法(構法)がいい」とまで考えている人はどれくらいいるでしょうか。

 

日本で最も一般的な木造の工法は「木造軸組工法(在来工法)」、ついで「木造枠組壁工法(2×4工法)」です。ほとんどのハウスメーカー、工務店ではこの2つの工法のどちらかを採用しています。

 

そんな中、大手ハウスメーカーである住友林業では「ビッグフレーム構法(BF構法)」という独自の構法を採用しています。これは一体どのような構法なのでしょうか。

 

パンフレットからだけではわからない部分について、構造設計者として考察してみます。

 

 

住友林業の「ビッグフレーム構法(BF構法)」とは

耐力壁ではなく大断面の柱と梁で地震に対抗する木造の構法、それが「ビッグフレーム構法」です。

 

ラーメン構造

BF構法の大きな特徴として「ラーメン構造」であることが挙げられます。ラーメン構造とは、柱と梁で構成されたフレームにより地震の力に抵抗する構造です。

ラーメン構造がよくわかる

 

柱が地震の力に抵抗するのは当たり前のように感じるかもしれませんが、実はそうではありません。一般的な木造の住宅の柱は建物の重さを支持しますが、地震の力には抵抗しないのです。

 

柱と梁は元々別の材ですから、ただ金物によってくっつけられているだけです。この金物は緩みやすいので、柱を横から押すと簡単に回転して倒れてしまいます。

 

そのため筋違や壁によって横からの力(地震や風)に対して補強しなくてはなりません。

 

しかしBF構法では柱と梁の接合部に独自の金属製の部材を用いており、強固に固定することができます。これにより柱と梁が相互に力を伝達できるようになり、地震にも抵抗できるようになります。

 

柱が重さだけでなく地震にも抵抗するようになれば、壁が不要になります。その結果、開放感のある間取りを実現しやすくなります。

 

梁勝ち・柱勝ち

パンフレットによると、BF構法は日本初の「木質梁勝ちラーメン構造」だそうです。

 

「木質」は「木でできている」ということですね。「ラーメン構造」は先ほど説明しました。では「梁勝ち」とは一体何なのでしょうか。

 

コンクリート造では、型枠を組んだ後、まだドロドロなコンクリートを流し込んで建物を成型していきます。そのため、柱・梁・床の各部は完全に一体化します。

 

しかし細い材を組み合わせる木造や鉄骨造では、必ずどこかに継ぎ目ができます。柱と梁が交差する「+」の部分では、水平な梁「-」か鉛直な柱「l」のどちらかを1本の材で通し、どちらかを2つの材に分割する必要があります。

 

このとき、梁を1本で通して柱を分割するのが「梁勝ち」柱を1本で通して梁を分割するのが「柱勝ち」です。

 

一般的な建物では「柱勝ち」となっている場合が圧倒的に多いです。同じ木造のラーメン構造であるSE構法などでは「柱勝ち」となっています。

SE構法(SE工法)の耐震性

 

柱には上層階の重さを支えるという役割があります。そのため、途中で寸断せず1本で通した方が理に適っているからです。

 

ではなぜBF構法では「梁勝ち」にしているのでしょうか。それは2階の柱位置の制約を減らすためです。

 

もし「上下階で柱の位置をずらさないでください」と言われたら、自由に間取りを決められなくなるでしょう。部屋の割に合わせて、柱を移動したくなります。

 

もちろん上階の柱の直下に柱がある方が合理的な構造になります。ただ、大きな梁が寸断されずに通っていれば、柱位置が多少ズレたとしても問題ありません。

直下率とは

 

また、大きな梁により2階の床面を下階から支えることなく1.8m張り出すことができます。木造では0.9m程度とすることが一般的ですので、2倍もの広さです。

 

戸建て住宅のバルコニーは洗濯物を干すのがやっとというような幅のものが多いですが、マンション並みの広さにすることができます。

 

接合ボルトの効果

BF構法には幅560mmという巨大な柱「ビッグコラム」が用いられています。

 

梁や基礎と接続するため、通常は柱の両端に1本ずつ、計2本のボルトが埋め込まれています。また、2本ずつに増設して計4本とすることでさらに柱が強くなります。

 

「ボルトを増やせば強くなるのは当たり前だろう」と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。どれだけボルトをたくさん入れても、先に柱自体が壊れてしまえば強くなりようがないのです。

 

つまり、ビッグコラムはボルト部分より木材部分の方が強い材なのです。木ではなく金属部分で壊れるということです。

 

木が壊れる場合、一気にボキッといってしまいます。しかし金属が壊れるのはグニーッと十分に伸びた後なので、多くのエネルギーを保持することができます。

 

木材はしなやかで粘り強いようなイメージがありますが、意外とそうではありません。木造建物が粘り強いのはあくまでも接合部の緩み・めり込み、釘の抜け出しによる効果なのです。

 

BF構法は鉄骨造のような粘り強さを持った構造であるということができます。

 

基礎について

液状化が生じた場合は別ですが、そうでなければ戸建て住宅の基礎に地震によって被害が生じることはそれほど多くはありません。上部の木造のフレームより、鉄筋コンクリート造の基礎の方が十分に強いからです。

 

しかし、BF構法の場合は基礎についても設計上の配慮が必要です。従来の木造に比べて非常に強い部材を用いているからです。

 

耐力壁の強さを表す「壁倍率」という指標があります。建築基準法では最大で5までとしているのですが、ビッグコラムはその4倍以上である22.4に相当するそうです。

 

しかも、ボルトを増やすと1.5倍の33.6に、柱を2本重ね合わせると2倍の44.8にまで大きくなります。

 

基礎はその直上にある柱が負担する力に加え、基礎自身に作用する力に耐えなくてはいけません。従来よりもはるかに大きな力が基礎に作用することになります。

 

もちろん計算により安全性を確かめているでしょうが、計算はあくまでも計算です。実験に勝るものはありません。上部建屋の実大実験は行われていますが、基礎部分は省略されているようです。

ハウスメーカーの実大振動実験

 

ぜひ基礎部分についてもなにか実験データを示していただきたいものです。なお、ヘーベルハウスでは基礎を含めた実大実験が行われています。

ヘーベルハウスの耐震性

 

制振装置(ダンパー)

BF構法では特に制振のメニューが無いようです。住友林業自体は制振の技術を有していますので、BF構法には必要ないと考えていると思われます。

 

耐力壁の必要ないラーメン構造を採用しているので、わざわざ制振装置を設けるような仕様にしていないのでしょう。実大実験でも繰り返しの地震に対して耐久性があることが示されています。

 

では制振装置を付けても効果が無いのかといえば、そんなことはありません。付ければ付けただけ強くなります。

 

住友ゴムの「ミライエ」のような市販の装置であればどんな建物にも付けられます。とはいえ、わざわざそんなことをしなくても住友林業にしっかりと設計してもらえば不要でしょう。

住友ゴムの「ミライエ」をお薦めする4つの理由