普段から構造関連の本を読む機会は多いのですが、久しぶりにためになる本に出会いました。
タイトルは『最新 伝統木造建物の耐震入門 耐震診断・補強』です。内容を簡単に紹介させていただきます。
著者について
著者は林康裕先生です。
京都大学を退官されたあと、舞鶴工業高等専門学校で校長をされています。
もともとは大手建設会社の清水建設で研究をされていましたが、京都大学に戻られ、教鞭をとっておられました。
いろいろな研究をされているのですが、私としては「パルス性地震動に対する安全性」に関する研究の印象が強いです。パルス性地震動というのは東北地方太平洋沖地震や南海トラフ地震のように長時間揺れる地震とは違い、兵庫県南部地震のようにドンッと一発だけ強く揺れる地震のことです。
どうすれば建物を真に地震に強くできるかを、真摯に研究された先生だと思います。
読むべき人
この本は、伝統木造に関する仕事をしている方にはぜひ読んでいただきたいです。
はっきり言って、一般の方では最後まで読み通すことは難しいでしょう。学術書ではありませんが、ある程度耐震工学に対する知識が無いと読めません。
読むべき理由
伝統木造に関する本というのは、大体が、伝統木造が好きな方が書いています。そして、伝統木造の良さを力いっぱい主張されます。それも、数字的な裏付けもなく、雰囲気や希望的観測に頼った主張です。
それに対し、この本では、なぜ伝統木造が地震で倒れるのか、あるいは倒れないかが、しっかりと理論的に説明されます。雰囲気に頼った主張はなく、どれも数字的根拠があります。
伝統木造の利点・欠点を踏まえ、たくさんの実験と調査を実施してこられた林先生だからこそ書ける本です。
法律がこうなっているから、ルールがこうだから、といった巷に溢れている浅い議論はありません。解析したからこうなった、という実情と乖離した頭でっかちな意見もありません。
はっきり言って、すらすらと読めて面白い本かというと、そうではありません。ゆっくり噛み締めながら、うんうん頷きながら読む本だと思います。
最近気になること
いろいろな情報を得るのが年々簡単になってきていますが、本当に重要な情報を得るのは逆に難しくなっているように感じます。
ブログや動画で見かける情報の大半は、建築基準法ではどうなっているか、というルール上の解説ばかりです。そこに本質的な議論はありません。
また、建築基準法に最新の知見が盛り込まれているとは限りません。慣例や過去との整合のために、おかしな制約が残っていることもあります。
ぜひ、正しい知識を積極的に取りに行ってください。やはり、本が持つ力というのはまだまだ健在です。
なにか気になることがあれば、ぜひこちらまでお問い合わせください。
