バッコ博士の構造塾

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地震後の通電火災はこれで防げる!スイッチ断ボールは信頼性抜群

今ではめっきり聞かなくなくなりましたが、日本人の怖いものと言えば「地震、雷、火事、親父」でした。地震大国日本では、やはり地震が一番怖かったようです。

 

そのせいか、「地震に強い家に住みたい」、「絶対に壊れない家にしてください」という要望をよく耳にします。そして建築の構造に関わる技術者は、それに応えるべく努力してきました。

 

しかし、地震が怖いのは、地震だけで終わらないことです。巨大地震のあとには決まって火事が頻発します。

 

戸建住宅の大部分は木造です。もちろん木は燃えますので、火事は大敵です。

 

マンションは燃えにくい鉄筋コンクリート造である場合がほとんどですが、室内から出火すればただでは済みません。また、熱の影響によって耐震性が損なわれる場合もあります。

RC造がよくわかる:構造設計一級建築士&コンクリート主任技士が解説

 

耐震補強工事には何百万円と費用がかかる場合があります。しかし、地震後の火災を防ぐには数千円でできることもあります。

 

建物の耐震性について気を使っているのであれば、ぜひ火災に対しても備えておいてほしいと思います。

 

 

地震後の火災による被害

火災による被害が大きかった地震と言えば、関東大震災が真っ先に挙げられます。地震の発生が昼食時だったので、多くの火災が発生しました。

 

地震による被害者は10万人を超えますが、そのうちの9割以上が火災による被害です。地震発生時は風が強く、火災旋風を引き起こすなど、大変な状況だったようです。

 

一方、阪神淡路大震災では建物の倒壊による圧死が被害者の大部分を占めています。

 

ただ、火災による被害が小さかったかと言うと、そうではありません。火災による被害者数は500人を超えており、決して少なくない方が亡くなっているのです。

 

そして、火災の原因の6割が「通電火災」によるものだという調査結果もあるようです。

 

通電火災とは

地震による火災の発生は、必ずしも地震直後に起こるというわけではありません。ストーブが倒れた、というのだけが原因ではないのです。

 

大地震が起こると、家の中はぐちゃぐちゃになります。家具は倒れ、食器も散乱します。

 

当然大規模な停電も発生しています。真っ暗な中冷静さを失い、とにかく避難を優先することでしょう。

 

しかし、電気の復旧は意外に早い場合もあります。あなたが避難所にいる間にまた街は明るくなっているかもしれません。実は、これが非常に危険です。

 

電子レンジが落ちて、コードが抜けそうになっていないでしょうか。倒れた家具がコードを傷つけていないでしょうか。

 

はたまた、割れた花瓶の水でコンセントが濡れていないでしょうか。ガス管の損傷でガス漏れが生じていないでしょうか。

 

そんなときに、止まっていた電気が再び流れ出したらどうなるでしょう。そう、火が出ます。

 

地震直後でなくても火災が起こるのはこれが理由です。停電復旧時に様々な要因で起こる、こうした火災を通電火災と呼びます。

 

通電火災を防ぐには

地震に対する備えは大変です。古い耐震基準を満たしていない建物であれば耐震補強が必須です。その場合、かなりの費用が発生します。

自分でできる木造住宅の耐震補強:DIYで命を守れるか

 

では、通電火災はというと、非常に簡単に防ぐことができます。その方法とは、「ブレーカーを落とすこと」、ただこれだけです。

 

「え、それだけ?」という感じですね。ブレーカーが落ちていれば復旧しても電気が流れないので、発生のしようがないのです。

 

やること自体は、知ってさえいれば誰でもできることです。ただ、大地震でパニックの中、夜中であれば真っ暗な中、「ブレーカーを落とさなきゃ」と冷静に行動できる人が一体どれだけいるでしょうか。

 

スイッチ断ボール

通電火災を防ぐためにブレーカーを落とす、これをあなたに代わって確実に実行してくれる優れモノがあります。それが「スイッチ断ボール」です。

3,000円で家族の命を守ります。【スイッチ断ボール】

 

スイッチ断ボールの機構

非常に簡単な機構です。

 

まず、ブレーカーのスイッチに紐を括りつけます。紐の反対側にはオモリが取り付いています。そしてそのオモリは不安定な台の上に載せられています。

 

地震が発生すると、オモリが台の上から落ちます。すると紐がオモリに引っ張られ、その結果ブレーカーが落ちる、という寸法です。

 

パッシブという考え方

スイッチ断ボールの作動に電気は一切使用していません。地震の揺れ自体をうまく利用して作動する簡単な機構です。

 

そのため電池切れはもちろんのこと、故障の可能性もありません。いつ、どんな時でも揺れれば作動します。

 

地震に対して能動的(アクティブ)に働きかけるのではなく、受動的(パッシブ)に待つというのは非常に信頼性の高い方法です。

 

地震の揺れを低減する「制振構造」にもアクティブとパッシブがありますが、維持管理が簡単で信頼性の高いパッシブの方が主流です。数年、数十年に一度起こるかどうかの地震に対しては、パッシブが最適なのです。

制振・制震構造がよくわかる:アクティブ制振からパッシブ制振まで

 

 

構造設計者の思い

「まず地震で壊れることのない家」は実際に設計可能です。絶対はありませんが、常識的な範囲で考えれば壊れない家は造れます。

 

ただ、燃えてしまえばどうしようもありません。外装を耐火仕様にしても室内から出火すれば燃えますし、室内から完全に可燃物を無くすことはまず不可能です。

 

せっかく地震に強い家にしたのに意味がなかった、ということにならないよう対策を講じておいてほしいものです。かかる費用は地震対策よりも2ケタ、3ケタ小さいですから。