「地震に強い家を建てたい」と思ったときに、みなさんならまずどうするでしょうか。「住宅展示場に行ってみる」、「近所の工務店で聞いてみる」という人もいるでしょうが、「まずはネットで検索してみる」という人の方が多いのではないかと思います。
ではどんなワードで検索すればいいでしょうか。地震に対する性能を表す「耐震」はよさそうです。自分が住む家のことなので「住宅」と入れるのもいいでしょう。
その両方を組み合わせた「耐震住宅」であれば専門用語っぽいですし、何か有益な情報が手に入りそうな気がします。実際、「耐震住宅」というワードはそれなりに検索数があるようです。
では実際に「耐震住宅」で検索した場合に得られる情報を専門家の目で精査してみましょう。
そもそも耐震住宅とは
専門用語?
まず、この記事を書き始める少し前まで「耐震住宅」という言葉自体知りませんでした。普段構造設計の仕事をするうえで一度も見たことがありません。
おそらく耐震工学の教科書や建築基準法の中では使用されていない用語なのではないでしょうか。
なんだかそれっぽい用語ではありますが、少なくとも専門家の口から聞いたことはありません。専門家ではない人たちが勝手に使っているのではないかと思います。
地震に耐える家?
どうやら耐震住宅とは文字通り「地震に耐える家」だとか「地震の揺れに強い家」という意味のようです。むしろ字面から意味が想像できるからこそ使用されている、と言えるかもしれません。
ただ、あまりにも抽象的な表現です。
建築基準法が制定された1950年時点ですでに「地震に耐えられるよう、壁を設けなさい」ということが規定されています。その理屈で言えば、1950年以降に建てられた建物は全て耐震住宅になり、何も特別なことではなくなります。
しかし、どうやら建築基準法の耐震基準や、品確法の耐震等級といった法的な裏付けのあるものとは別のものとして書かれているようです。にもかかわらず、その具体的な性能については何も言及されていません。
誰かが最初に「耐震住宅」という言葉を使った後、なんとなく専門用語っぽいのでコピペされて増殖していったのではないでしょうか。
正しくは「耐震構造」
正しい専門用語で「耐震住宅」に一番近そうな意味を持つ語としては「耐震構造」があります。この用語であれば理解できます。
一番大きな枠組みで言うと「地震に耐える構造」という抽象的な意味になってしまいますが、より細かな部分も具体的に説明ができます。
まず「中小地震に対して損傷しない、大地震に対して倒壊しない」という性能を持つことです。そしてその性能を満足するために特殊な装置等を使用せず、建物の骨組み(柱、梁、壁)だけで頑張るということです。
さらに細かく規定することもできますし、使用する文脈によって意味する範囲も変わることはありますが、専門家であれば基本的に意味を取り違えることはありません。
用法・用語に気を付けて
よほど普段から興味のある人以外は、いざ自分の家を建てるという段になってから初めて家づくりに関する情報を集め出します。
インターネットを使うことで有益な情報を簡単に集めることができますが、出だしで失敗すると大きく遠回りすることになってしまいます。それを避けるには、間違った用語に気を付けることです。
専門用語ではないのに専門用語かのように使用している場合(耐震住宅)、間違った字をあてている場合(免振×、免震○)であれば、検索したワードそのものに比べて他の結果が多く表示されます。
専門用語を間違った用法で使用している場合、いくつかのサイトを見比べるとわかることも多いです。間違った用法・用語のあるサイトは信頼性が大きく劣ります。
とはいえ、一見正しそうで、一般の人では正誤の判断がつかないような情報もあります。そんなときはバッコまでお気軽にお問い合わせいただければと思います。