バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

戸建住宅

SE構法(SE工法)の耐震性:本当に在来工法よりも強いのか

日本の戸建て住宅のほとんどは木造です。鉄骨造やコンクリート造の住宅を取り扱う大手ハウスメーカーもありますが、戸建て住宅全体から見ればまだまだ少数です。 基本的に日本人の大多数は木の家が好きなのでしょう。森林が豊富な国ですので、それも当然のこ…

3Dプリンタによる家づくり:構造設計者の目から見た課題

3Dプリンタが登場するや否や、「家をプリントアウトできる日がくるかも」と期待する声が上がりました。そしてそれはもう現実のものとなり、海外ではいくつもの実例があります。 大工や鳶といった建設業従事者は減少の一途ですが、3Dプリンタが人手不足解消の…

耐力壁を理解する:木造住宅の耐震性を決めるのは耐力壁の量

巷間で言われている「耐震性の高い木造住宅の条件」をいくつか挙げてみます。凸凹の少ない整形な平面・立面であること、壁の配置バランスがいいこと、上下階で柱や壁が連続していること、などなど。 確かに、どれも構造設計を行う際に留意する点であり、これ…

火打ち梁がよくわかる:建物の重量を負担しない変わった梁

鉄骨造やコンクリート造の建物に比べ、木造の建物は細かな多数の部材で構成されています。自然材料であるため、大きな断面の部材が使いにくいことや、材料の強度が低いことが影響しています。 そのため、他の構造ではあまり見られないような部材が必要になる…

減震パッキン『UFO-E』の効果を再考する

基礎と建物との間に挟み込む、直径90mmの小さな「UFO-E」という金物があります。この金物を設置するだけで、建物に伝わる地震の力を大幅に減じることができるということです。 もし本当に素晴らしい効果があるのであれば、画期的な商品です。非常に興味を引…

耐震等級3と耐震等級2+制振はどっちが強い?構造設計のプロが回答

建物の耐震性能を表す指標として「耐震等級」があります。等級は1から3まであり、3が最高評価です。 耐震等級1は現行の建築基準を満たす耐震性を有していることを示しており、耐震等級2ではその1.25倍、耐震等級3では1.5倍の強さを有していることになります…

構造設計のプロがUFO-Eの摩擦減震効果について徹底検証

戸建て住宅では、高層ビルでは使用しないような変わった技術があります。建物規模が小さく重量が軽いこと、特例により構造計算が必要ないこと等が影響していると考えられます。 特徴的なものとして、「制震テープ」や「エアー断震」が挙げられます。他に例を…

屋根をリフォームしよう:木造住宅の最も間違いのない耐震補強法

建物の最上部にあり、雨や日射から内部空間を守っているのが「屋根」です。 外壁と同様、屋外の過酷な環境に置かれているので、定期的なメンテナンスが必要になります。雨漏りが生じてしまえば、建物の耐久性にも悪影響を及ぼします。 昔は、屋根と言えば「…

ハウスメーカーの耐震性ランキングは無意味:素人にわかれば苦労は無い

家を建てる際、何を優先するかは人それぞれですが、予算に余裕がある人ほど「耐震性」を重視する傾向があるそうです。 地元の工務店ではなくハウスメーカーに依頼する人は予算が高い場合が多いので、結果として耐震性重視の人が多くなります。 当然ハウスメ…

木造住宅購入前に知っておきたい耐震性に関する3つの基本

どうせ家を買うなら地震に強い家がいい、そう考える人も多いです。 ただ、建物を外から眺めていても耐震性が高いかどうかはわかりません。営業担当者に聞いたところで物件のよい点しか言いませんし、本質を理解しているわけでもありません。 では、どうすれ…

ハウスメーカーの実大振動実験から各社の耐震性はわかるのか?

日本には世界最大の「振動台」であるE-ディフェンスがあります。日々いろいろな試験体が運び込まれ、実験が繰り返されています。 E-ディフェンスでは過去に発生した地震動を再現することができます。兵庫県南部地震や熊本地震、東北地方太平洋沖地震であって…

仕口ダンパーとは?お手軽に導入できる制振装置の代表格

地震や強風による建物の揺れのエネルギーを吸収し、揺れ幅を低減する装置を制振ダンパー、あるいは制振装置と呼びます。 戸建て住宅用の小型のものから超高層ビルにも使用できる大型のものまで、いろいろなサイズがあります。最近の大手ハウスメーカーの注文…

壁量計算がよくわかる:4分割法の意味と構造計算との違い

2階建ての木造住宅のほとんどは「構造計算」をせずに建てられている、と言うと驚かれるでしょうか。建設業界ではよく知られていることですが、一般的にはあまり知られていないようです。 とはいえ最近は簡単になんでも検索できるので、住宅購入を検討された…

地震後の通電火災はこれで防げる!スイッチ断ボールは信頼性抜群

今ではめっきり聞かなくなくなりましたが、日本人の怖いものと言えば「地震、雷、火事、親父」でした。地震大国日本では、やはり地震が一番怖かったようです。 そのせいか、「地震に強い家に住みたい」、「絶対に壊れない家にしてください」という要望をよく…

二階リビングだけじゃない:耐震性の高い間取りとは

東北地方太平洋沖地震以降、日本各地で地震が頻発しています。住宅を建てる際に、耐震性を気にする方も増えているようです。 これから建てられる家は全て、現行の建築基準法の規定以上の耐震性を有することになります。近年の地震被害の状況から見て、人命保…

制震テープの効果は?構造設計のプロが本当の性能を徹底解説

世の中にはいろいろな種類の制振ダンパーが出回っていますが、その中でも異彩を放っているのが「制震テープ」です。 制震テープ単体では制振ダンパーとは呼べません。耐力壁にこのテープを貼り付けることで、ただの耐震の壁が制振の壁へと変化するのです。 …

構造設計のプロが住友ゴムの「ミライエ」をお薦めする4つの理由

今一番売れている木造住宅用の「制振ダンパー」と言えば、住友ゴム工業の「ミライエ(MIRAIE)」でしょう。 木造住宅を手掛ける大手ハウスメーカーの大半は、独自の「制振ダンパー」を開発しています。自社の耐震性能の高さをアピールするためなので、「A社…

直下率と耐震性の関係:構造のプロが教えるもっと大切なこと

2016年の熊本地震では最新(2000年)の耐震基準で設計された住宅でも何棟か倒壊しています。また、建築基準法に規定されている耐震性能の1.25倍の強さがあるとされる「耐震等級2」の住宅も倒壊しています。その理由の1つとして「直下率」の低さが挙げられて…

建物の基礎の種類と特徴:ベタ基礎が布基礎よりいいとは限らない

建物を支えるためには基礎をしっかりと造る必要があります。 □■□疑問■□■ 住宅の基礎をどうするか迷っています。基礎の違いによって建物の耐震性は大きく変わるのでしょうか。 □■□回答■□■ 基礎がしっかりしていないと、いくら上部の建物を強くしても意味があ…

木造住宅に最適な制振・制震ダンパーはどれ?価格・耐久性・耐震性を比較

木造をメインとする大手ハウスメーカーの大半が独自の制振ダンパー(制振装置)を開発しています。 □■□疑問■□■ 数ある制振ダンパーの中で、木造住宅に最も適しているのはどれでしょうか。 □■□回答■□■ 耐震構造でも十分安全な建物にすることは可能ですが、も…

木造住宅の四隅に耐力壁は必須か?配置不要なことを力学的に検証

建物の耐震性を高めるには耐力壁をバランスよく配置しなくてはなりません。 □■□疑問■□■ 耐力壁を四隅に配置するのが耐震構造の基本と言われました。木造住宅ではコーナーサッシなどは諦めた方がいいのでしょうか。 □■□回答■□■ 建物の四隅に柱や耐力壁を必ず…

自分でできる木造住宅の耐震補強:DIYで命を守れるか

1981年以前の建物は、現行の耐震基準を満たしていない「既存不適格」の物件が多くあります。また、2016年の熊本地震では2000年以降の最新の基準を満たした建物でも倒壊した事例があります。 □■□疑問■□■ 自分で木造住宅の耐震補強をしたいと思っています。な…

耐震等級3は必要か:構造設計のプロが考える

建築基準法に規定されている耐震性は「人命を保護するための最低限の規定」です。 人命保護が目的がですので、建物自体が損傷することは許容しています。そのため、大地震後にも安心して住み続けたいのであれば、規定よりも耐震性を高める必要があります。 …

軟弱地盤だと地盤改良工事が必要?切っても切れない地盤と地震の関係

世界中どこを見渡しても同じ条件の建物はありません。仮に姿かたちが同じでも、建物が建つ地盤が違います。 □■□疑問■□■軟弱地盤に家を建てるので不安です。建物を設計する際、地盤の影響はどのくらいあるのでしょうか。 □■□回答■□■建物に作用する地震の力は…

空気で浮かぶエアー断震は免震よりも優秀か?法律は置いておくとして

空を飛んでいれば地震も怖くない、構造設計者なら誰しも一度は考えたことがあるアイディアです。 □■□疑問■□■ 宙に浮く建物「エアー断震」がテレビで取り上げられていました。耐震や制振はもとより、免震よりも優れた性能を発揮するのでしょうか。 □■□回答■□■…

鉄筋コンクリートの家づくり:工事監理をしないと大変なことに

一級建築士をやっていると、個人的に「家を設計してくれ」と言われることがあります。構造が専門なので他を当たってもらうのが常なのですが、そのときは同僚の意匠設計者から「構造を見てくれ」と言われたので引き受けました。 RC造、壁式構造、スキップフロ…

コンクリートのひび割れは当たり前?マンションも戸建住宅も

念願の新居を購入し、ウキウキした気分の入居の日、建物にひび割れが入っているのを見つけたらどうしましょう。 □■□疑問■□■ コンクリートの壁や基礎をよく見てみると、そこかしこにひび割れが入っています。強度や耐久性に悪影響はないのでしょうか。 □■□回…

優秀な建築士の見分け方:構造に関するたった2つの質問

建物が地震に対して強いかどうかは「構造設計者の技量で決まる」と当ブログでは一貫して主張しています。 □■□疑問■□■ 優秀な建築士かどうかはどうすれば判断できますか。簡単な判別方法があれば教えてください。 □■□回答■□■ デザインやプランニングに関して…

こんな家住みたくない:構造設計一級建築士が避ける建物

構造設計者だからと言って、強い家に住んでいるとは限りません。でも、わざわざ弱い家に住もうとは思いません。 □■□疑問■□■ 構造設計者が「こんな家にだけは住みたくない」と感じる住宅・マンションがあれば教えてください。 □■□回答■□■ 1981年の耐震基準改…

木造住宅に構造計算は必要か?計算よりも大事なこと

小規模な建築物は、建物の安全性を検証する「構造計算」を行わなくても建設することができます。 □■□疑問■□■ 一般の木造住宅では構造計算がなされていないと聞きました。大地震に対して十分な耐震性が確保されているか不安です。 □■□回答■□■ 構造計算されて…