バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

地震に強い家に住みたいと思ったら読む本:構造設計一級建築士がお薦めします

検索をかければ大抵のことが簡単に、無料で、しかも詳しく調べられる世の中になりました。当ブログを含め、耐震安全性に関する情報も大量にあります。

 

しかし、信頼性の高い情報が欲しい、より詳細な情報が欲しいとなった場合はまだまだ書籍に優位性があるように思います。少なくとも素人ではなく業界に精通した人が書いていますし、出版社による校閲もなされています。

 

ではどんな本でもいいかと言うとそうではなく、やはり良い本、悪い本はあります。せっかくお金を出し、時間をかけて読んでも、内容が悪ければ意味がありません。

 

「地震に強い家に住みたい」と思ったときに、どんな本を読めば有用な情報が得られるのでしょうか。

 

ブログを始めてから参考のために一般の方向けの建築に関する本を数十冊読んでみました。その中で感じたバッコなりの良い本の選び方を伝授します。

 

 

著者の経歴を確認

名誉教授

どこの誰だかわからない人が書いた本より、有名大学の先生が書いた本の方が売れ行きはいいでしょう。「○○大学の名誉教授が執筆」と聞けば、なにかすごいことが書いてあるような気がします。

 

しかし、あなたが知りたいのは建物の耐震性に関する一般的な内容についてではないでしょうか。難しい数式を解説してほしいわけではないはずです。

 

であれば、何もそんなすごい先生が書いた本である必要はありません

 

名誉教授の方々が書く本は、どうもわかりづらい気がします。厳密さにこだわるせいか、一般の方が読むには難しい表現がチラホラ混ざっていることが多いです。

 

また、実務経験が無い方も少なくありません。となると内容も実務より学問の方に寄りがちです。

 

自分のこれからの住まいについて考えるとき、学問的な話よりも実務的な話の方が役に立ちます。それに、読んでいて楽しいです。

 

初めて耐震に関する本を読むのであれば、名誉教授の肩書がある人の本は避けた方がいいかもしれません。

 

建築士

建築の実務について一番詳しいのは大学の先生ではなく、実際に業務を執り行っている建築士です。少なくとも建築士資格を有している方が書いた本がよいでしょう。

 

ただ、建築士といっても業務は細分化されており、構造を専門としている建築士はそれほど多くはありません。

建築士の専門分化

 

構造のことがよくわかっていない建築士が書いた本もありますのでご注意ください。著者が一級建築士の上位資格である「構造設計一級建築士」を保有していれば、悪い本である可能性は下がります。

構造設計一級建築士

 

なお、木造の住宅に関する内容であれば、構造設計一級建築士でなくとも構造に詳しい方はたくさんいらっしゃいます。面白そうだと思えば、資格の有無だけにこだわる必要はないでしょう。

 

設計事務所・ゼネコン出身の先生

建築は工学ですので、学問と実務、その両方をバランスよく理解しておく必要があります。数式だけ眺めていてもダメですし、現場を見ているだけでもダメです。

 

ということで一番のお薦めは、設計事務所やゼネコンでの実務経験がある大学の先生が書いた本です。

設計事務所・ゼネコン設計部出身の先生方

 

その中でも40代から50代前半くらいの先生の方が良いかもしれません。あまり年齢が上がると前述のような「名誉教授っぽさ」が出てきてしまいます。

 

出版時期

大きな地震が発生するたびに耐震に関する新たな知見が得られます。当然ながら新しい本ほど最新の知見が取り入れられています。

 

近年建築業界に大きな影響を与えた地震と言えば2011年の「東北地方太平洋沖地震」と2016年の「熊本地震」です。東北地方太平洋沖地震では「長周期地震動」が、熊本地震では「震度7が2回」が注目されました。

長周期地震動の恐怖

 

専門書であれば良書と呼ばれる昔から読み継がれているものがありますが、一般向けであれば比較的新しい本が書店には並んでいます。

 

そのため書店で購入する場合は特に気にしなくてもいいでしょう。しかし、図書館等で借りる場合は少なくとも2011年以降に出版された本かどうかを確認しましょう。

 

お薦めの本

『地震に負けない家づくりと住まいかた。』

命を守るための具体的な方法が丁寧に解説されています。今住んでいる家の耐震性に不安がある方の参考になるかと思います。

 

おそらく著者は構造の専門家ではないと思います。いくつかそれを感じさせる箇所がありました。ただ、一般の方が読む分には全く問題ありません。

 


地震に負けない家づくりと住まいかた。

『耐震被覆による活動期の地震防災』

新築建物ではなく既存建物を対象とした本です。木造住宅ではなく、中低層の鉄筋コンクリート造(RC造)の耐震補強方法について書かれています。

 

著者は大成建設のOBの方です。

 

一般の方にはやや難解な部分もありますが、良い本だと思います。古い中低層マンションにお住まいの方にはぜひ読んでいただきたいと思います。

 


耐震被覆による活動期の地震防災
 

 

本を読む必要があるか

いろいろなブログ、企業のホームページを隈なく見ればかなりの知識を得ることができます。ただ、その中にある本当に有用な情報は極々一部です。

 

限られた時間の中で効率的に情報を集めようと思えば、やはり本を読んだ方がよいのではないでしょうか。住宅展示場やモデルルームに行く前に一冊読んでおけば、理解度がグッと違ってくるはずです。

 

しかし、これまで読んだどの本も個人的には満足できませんでした。手前味噌ですが、当ブログの方がためになるのではないか、そんな気がしています。

 

ということで誰かこの記事を読んでいる出版社の方、バッコに執筆を依頼してみませんか。ほんのちょっぴりですが期待しています。

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