バッコ博士の構造塾

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建築士の専門分化:意匠屋さん本当に構造わかってる?

科学技術分野の進展は目覚ましく、あらゆる分野で専門分化が進んでいます。建築の分野も例外でなく、建築士が網羅すべき範囲は広く、深くなっていく一方です。

 

□■□疑問■□■

一人ひとりの建築士は住宅のこと、マンションのこと、建物のことをどの程度理解しているのでしょうか。

 

□■□回答■□■

戸建住宅であれば基本的に一人の建築士が全て担当することになるため、住宅の全てを知っておく必要があります。建物が大規模になると意匠・構造・設備の各分野に対しそれぞれ専門の建築士が担当するため、建物の全てを把握することは不可能です。住宅を専門としている建築士は「広く浅い」知識に、各分野を専門としている建築士は「狭く深い」知識になりがちです。何か疑問が生じた場合は、その分野を専門とする建築士に確認したほうがよいでしょう。

 

 

建築の分野はどう分かれる

計画から竣工まで

建物ができるまでの大きな流れを見てみましょう。まず「自分の家を建てたい」から「○○駅の大規模再開発をしよう」まで幅広いですが、企画があります。大まかな予算や概要が決まったら設計です。施主の要望を図面に落とし込んでいきます。並行して施工計画や積算も行われますが、設計図書と予算に対し施主がOKを出せば施工に移ります。工事が始まると、設計図書通りに建物が造られているかの監理が行われます。

 

建築士が設計を行うわけですが、設計者が監理者を兼ねることもありますし、企画段階から関与することも当然あります。直接施工に関わることはありませんが、施工に関する知識も相当程度必要となります。また、施工者が一級建築士である場合も多々あります。

 

設計の専門分野

設計は意匠構造設備の3つに分けられます。設備は電気・設備に分ける場合もありますし、他にも品質管理や施工監理といった追加の分類も可能です。ここでは最も一般的な意匠・構造・設備の3つの分野について簡単に説明しましょう。

 

意匠:格好いい、使いやすい建物を提供するのが使命。外観、各室のレイアウト、内外装、果てはトイレのサインまで、建物全体をまとめ上げる責任者です。おそらく一般の方が「建築士」と聞いて思い浮かべるイメージはこの意匠設計です。設計工程の大部分を担うため、建築士全体の中で最も割合が高いです。全体の調整を行うため、構造および設備の知識は欠かせません。

 

構造:地震、台風、その他あらゆる災害に対し強い建物を提供するのが使命。建築計画を基に、使用する材料(鉄骨、コンクリート、木)、構造部材(壁、柱、梁)の大きさ等を決定します。強さだけでなく、柱のない空間や薄い庇等の建築表現を手助けすることも重要な業務内容です。一級建築士の上位資格である「構造設計一級建築士」の数は2018年12月現在で10029人です。一級建築士が30万人以上(死亡、引退含む)いることを考えると非常に少ないです。また、建築士における構造設計者の割合は1割程度と言われています。

 

設備:住み心地の良い、快適な建物を提供するのが使命。電気、照明、空調その他建物内のあらゆる機械・電気機器を取りまとめます。セキュリティラインの設定や細かい仕様の変更等、建物の着工以降も忙しく打ち合わせを行います。一級建築士の上位資格である「設備設計一級建築士」の数は2018年12月現在で5529人です。やはり一級建築士全体からみると非常に少ないです。

 

専門分野外の知識量

一級建築士試験は2009年に改正され、計画、環境設備、法規、構造、施工の5科目の学科試験と、製図試験に合格すれば晴れて一級建築士の仲間入りとなります。つまり、どの分野を専攻している建築士でも建築全般に関する最低限の知識を持ち合わせています。

 

施主と直接やり取りすることが多く、構造・設備の調整役という側面もある意匠設計者は、「構造設計より設備設計がわかり、設備設計より構造設計がわかる」というのが一般的です。ただ、当然ながら「構造設計から見れば構造をわかっておらず、設備設計から見れば設備をわかっていない」わけです。

 

住宅を工務店に頼むとき

通常の戸建住宅では構造計算は必要ありません。決められた仕様を守れば最低限の耐震性を有するであろう、ということになっています。住宅の構造を専門とする建築士もいますが、構造計算が不要な建物を担当することはないでしょう。

木造住宅に構造計算は必要か?計算よりも大事なこと

 

四角い建物であれば問題ありません。パッと見て「普通」と思えるような建物でも問題ありません。ただ「中二階がある」だとか「南側が窓だらけ」といった場合は少し注意が必要です。担当する建築士が「当たり」ならいいのですが、「仕様さえ守っていれば大丈夫」という「はずれ」の建築士もいます。

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「はずれかも」と不安になった場合は構造を専門とする建築士に相談してみましょう。