バッコ博士の構造塾

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誰でもできる基礎の配筋検査:施主の立会いはとても効果的

家を建てるなら木造でしょうか、鉄骨造でしょうか、あるいは鉄筋コンクリート造でしょうか。どの材を選ぶかで家づくりは大きく変わってきます。

 

ただ、どの材を選んでも絶対に基礎は鉄筋コンクリート造になります。建築基準法に定められているからです。

 

基礎は建物に作用する力を地盤に伝達する重要な部分です。また、土や水といった建物の劣化要因に直接触れる部分でもあります。

 

しかし、鉄筋コンクリートでできているため、建物完成後に検査することは容易ではありません。工事中にしっかりと監理しておく必要があります。

 

とはいえ、施主は建築の専門家ではありません。全てを完璧に監理するのは不可能です。

 

そこで、ここでは一般の方に押さえておいてほしいチェックのポイントと注意点をお伝えします。

 

 

配筋検査とは

まず、「配筋(はいきん)」とは「鉄筋を設計図書にしたがって所定の位置に配置すること」です。そして、「配筋検査」とは文字通り配筋の検査を行うことです。

 

鉄筋コンクリート造では、鉄筋とコンクリートが一体化してそれぞれの欠点を補うことで性能を発揮します。鉄筋を設計図書の通り配置することは非常に重要です。

RC造がわかる

 

配筋検査にはいろいろな項目があります。

 

一般の方でもわかりやすいのは鉄筋の種類太さ位置でしょうか。鉄筋のつなぎ方端部の納め方となると難しくなってきます。

 

現場では、所定の本数より鉄筋が多い場合、鉄筋が錆びている場合もよくあります。この場合はどう対応すべきでしょうか。

 

また、設計図書に記載されていないイレギュラーな部分があることもあります。こうなると専門家でないと対応は無理です。

 

当然ながら、一般の方では全てのことに対応できるわけではない、ということを覚えておきましょう。

 

気にすべきこと

鉄筋の太さは13mmにする、鉄筋の本数は3本にする、こういった「誰でもわかること」というのはミスが少ないものです。作業員や現場監督のチェック段階で是正されることがほとんどです。

 

ぜひ施主のみなさんにはもっと違ったところ、ミスが多いところに目を向けてほしいと思います。

 

配管(パイプ、スリーブ)からのかぶり厚さ

コンクリートの基礎にはいくつも孔が開いています。お風呂やトイレの排水を下水に流すためです。

 

コンクリートが固まった後に孔をあけるのは大変なので、あらかじめ塩化ビニルのパイプを仕込んでおくことになります。コンクリートを流し込んだ時にパイプがズレないよう、パイプはしっかりと固定しなくてはなりません。

 

このとき、パイプを直接鉄筋にくっつけて固定してはいけません

 

鉄筋が錆びないよう、鉄筋はコンクリートの中に所定の量埋め込まなくてはなりません。これを「かぶり厚さ」といい、建物の耐久性を大きく左右します。

かぶり厚さとは

 

しかし、鉄筋とパイプが直接くっつくということは、鉄筋の周囲にしっかりとコンクリートが充填されないということです。

 

「基礎 配筋」で画像検索すると、パイプが鉄筋に密着してしまっている写真がたくさん見つかります。しかも「基礎の配筋完了です」というように工務店自身がアップしているのです。

 

つまり、建築のことを理解せずに工事を行っている業者がいる、ということです。ぜひ施主自身で確認しておきましょう。

 

ズレれるかズレないか

住宅くらいの規模であっても、基礎に配置する鉄筋はかなりの本数になります。たくさんの鉄筋がきれいに並んでいるのを見ると「大工さんってすごいな」と感心します。

 

しかし、工事監理のときは遠慮してはいけません。力を入れて鉄筋を揺すってみてください。

 

せっかく大工さんが丁寧に並べてくれた鉄筋をずらそうとするなんてとんでもない、ということは全くありません。むしろこれでズレるのであれば問題です。

 

コンクリートの密度は水の2倍以上です。砂や砂利がまざったドロドロの非常に重たい物体です。

 

基礎をつくるには、この重たいコンクリートを流し込み、かつ、しっかり充填されるよう振動まで与えます。手でちょっと揺すったくらいでズレているようではいけないのです。

 

とはいえ、もちろん本気で揺すればズレます。常識的な範囲で力加減してください。

 

きれいかどうか

優秀な職人さんのいる現場はとてもきれいです。明らかに散らかっているような現場の場合、それだけで要注意です。

 

まず型枠の中がきれいに掃除されているか見てみましょう。これからコンクリートを流し込むというのに、型枠が汚れていたり型枠内に瓦礫があったりすれば即指摘しましょう。

 

少し目線を落として遠くから鉄筋を眺めれば、鉄筋がきれいに一直線に並んでいるかどうかがわかります。鉄筋の並びがきれいではないということは、所定の位置からズレている可能性大です。

 

細かいところを逐一見ていくよりは、パッと全体を見渡して気になったところを集中して見てみましょう。

 

気にしなくてもいいこと

ネットで検索をかければ、配筋検査でのチェックポイントが事細かに挙げられています。

 

しかし、そのどれもが同じように重要なわけではありません。あんまり気にし過ぎても仕方がない項目もあります。

 

鉄筋の間隔

設計図書に置いて、「鉄筋は○○本」と本数が指定してあるところもあれば、「鉄筋は200mmごとに配置」と間隔が指定してあることもあります。広い範囲の鉄筋の量を示す場合には間隔の指定が一般的です。

 

しかし、当然そこには誤差があります。数mmはズレているものと考えましょう。

 

そもそも200mmごとに3本鉄筋が並んでいるのと、150,150,300mmというように3本並んでいるのとで、大した差はありません。どちらもほぼ同じだけの強さがあります。

 

明らかに間隔が不均一で見た目に美しくなければ直してもらうべきですが、多少であればそのままでいいでしょう。

 

配管まわりの鉄筋の切断

前述のように、コンクリートの基礎にはいくつも孔があきます。

 

孔があれば当然そこには鉄筋が通りません。パイプ周辺に配置される予定だった鉄筋はそこで切断されることになります。

 

鉄筋は基礎に生じる引っ張る力を負担するために入っています。切断されてしまうと力が鉄筋から鉄筋へと直接伝わっていきません。

 

ではまったく用を成さないかというと、そうではありません。周辺のコンクリートを介して少し離れた鉄筋まで力を伝えることができます。

 

そのため、鉄筋が切断された位置の近くに補強用の鉄筋を追加してやれば何の問題もありません。

 

工事監理における注意点

不具合はあるものと心得よ

建物というのは一品生産です。

 

どうしても予期せぬ問題やミスが発生してしまうものです。図面に不備があれば図面の通りにつくるのが不可能ということもあります。

 

そういうときにどうすればよりよい結果になるか、その場で職人さんや現場監督と協議しながら決めていくのが工事監理者(建築士)の仕事であり、腕の見せ所です。ミスをあげつらうだけの監理者はいりません。

 

しかし、一般の方は完璧を求めがちです。どうして図面通りやらないのか、ルール上はこうなっているのではないか、といように全てを改善してもらおうとしがちです。

 

職人さんたちも人間です。細かい手直しを毎回毎回させられてはモチベーションが低下します。

 

大事なところを譲らないのは当然ですが、それ以外の細かいところは大らかに対応することが結果的にいい建物につながることも多いです。

 

第三者を活用せよ

多くの人にとって住宅は人生で最も高い買い物です。誰しもが失敗したくないと思うでしょう。

 

であれば、少しくらいコストをかけてでもプロに見てもらうのが最も確実です。住宅を専門とする第三者の建築士に工事監理を依頼してみてはいかがでしょうか。

 

この先何十年と住む我が家です。安心料としてはそれほど高くはないと思います。

 

ただ、「鉄筋とパイプが密着した写真をアップ」しているような建築士ではないことのチェックだけはしておきましょう。