「総合建設業」を表す「ゼネコン」ですが、その中でも最大手5社である大林、鹿島、清水、大成、竹中を「スーパーゼネコン」と呼びます。
各社売上高は1兆円を超えており、業界6位以下とは大きく水をあけています。また、新国立競技場をはじめ、国家プロジェクトには必ず顔を出します。
「それだけすごい会社ならスーパーと呼ばれるのもわかる」、果たしてそうでしょうか。
スーパーにはスーパーと呼ばれるだけの所以があります。しかし、それは売上高や企業規模といったものだけに留まりません。
スーパーゼネコンに対する共通認識
バブル期に比べて縮小しているとは言え、建設業の市場規模は50兆円を超えます。建設業従事者は500万人近くにも上り、その動向が日本経済に与える影響は小さくありません。
建設業界で働く人であれば、そのほとんどが「スーパーゼネコン」とはどの会社を指すか知っているでしょう。業界外でも「2社はわかる」、「聞いたことがある」、という人が多くても不思議ではありません。
日本を代表する企業であるスーパーゼネコンですが、誰かが「スーパーゼネコンとはこういうものだ」と定義したわけではありません。みんなが慣例でそう呼んでいるに過ぎません。
しかし、「こういうものだよな」という共通の認識はあります。「売上高が大きい」、「企業規模が大きい」、「歴史がある」というのが一般的なところでしょう。
ただ、スーパーゼネコンより歴史がある会社もあります。そうした会社が合併してスーパーゼネコンと同程度の売り上げ、規模になった場合、新たにスーパーゼネコンの一角となれるのでしょうか。
恐らくそれは無理だと思います。その理由を以下で挙げていきましょう。
ブランド力
安心感
中古マンションの内覧会に参加したところ、販売会社の営業さんは「スーパーゼネコン○○の設計、施工です」ということを強くアピールしてきました。スーパーゼネコン以外の大手ゼネコンではこうしたアピールをされたことがありません。
スーパーゼネコンの作業現場についてデベロッパーに聞くと、必ずこういう答えが返ってきます。「○○のところは本当に人が多い」と。現場につく社員の数が他社とは違うのです。
実際に工事をする職人の数は適正値があります。多すぎると逆に作業しにくくなってしまいます。しかし、監理する人(=社員)が多ければ、それだけ細部まで目が行き届くということです。
職人からすれば監督者が増えて嫌かもしれませんが、施主からすれば安心です。この安心感を与えられる、ということが重要です。
高い工事費
スーパーゼネコンの社員の給料は、同業他社に比べて非常に高いです。「給料は会社規模に比例する」と言いますが、ゼネコンにも当てはまります。
では、1つの現場あたりの社員数が多いのに、どうやって高い給料を払うのでしょうか。明らかに作業効率は悪いように見えます。
答えは単純で、「工事費が高い」ということに尽きます。
多少高くてもそれ以上の安心感が得られる、販売金額に転嫁できる、これがブランド力です。
プロジェクトの歴史
「歴史がある」とは、ただ長く会社を続けていればいいという意味ではありません。単なる創業からの歴史の長さだけであれば、スーパーゼネコンよりも長い会社はあります。
ゼネコンに求められる歴史は、プロジェクトの歴史です。大規模な橋やダムなどの国家プロジェクト、地域のランドマークとなる超超高層ビル、これらの実績が歴史になります。
だからこそスーパーゼネコン各社は赤字覚悟で入札に望むのです。各社本気で受注しに行ったスカイツリーや新国立競技場が黒字とは思えません。
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目の前の利益だけ考えれば受注しない方がいい工事です。人や資源を割いて、大変な労力をかけて儲からない工事を行うのです。
ただ、長期的に見ると会社の利益になると考えているわけです。これができるのはスーパーゼネコンだけです。
本当の技術力の指標
超高層ビルの高さ
「スーパーゼネコンは他社とは技術力が違う」という人がいますが、どこを見てそう判断しているのでしょうか。
「200mを超える超高層ビルはスーパーゼネコンでしか建てられない」なんて思っている人は日本の建設業のレベルをわかっていません。
ブルジュハリファに抜かれるまで世界一の高さを誇った台湾の「台北101」は熊谷組を中心として施工が行われました。その高さは500mを超え、日本一高いビルである「あべのハルカス」の300mとは比較になりません。
熊谷組の従業員数や売上高はスーパーゼネコンの1/3以下です。スーパーゼネコン以外であっても超高層ビルを建てることはできるのです。
特許
では、技術力に差はないかというと、そうではありません。大きく差が見られるのが特許の数です。
構造技術に関するあるキーワードで各社検索をかけてみたことがあります。すると、スーパーゼネコンと他の大手ゼネコンでは引っかかる特許の数に数十倍の開きがありました。
超高層ビル、免震、高強度コンクリート、これらの技術はそれほど特別ではなくなってきています。大手であれば大体どこでもできてしまいます。
しかし、そこからもう一歩踏み込んだ技術、特許になるような新技術においてはスーパーゼネコンが圧倒的にリードしています。
利益になる、ならないはさておき、研究開発に注いでいる力が違います。他社がどれだけ売り上げを伸ばそうが、この差を埋めない限りはスーパーゼネコンと呼ばれることはないでしょう。