バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

学生必見!構造設計者になる前にやっておきたい3つのこと

あの時もっと勉強しときゃ良かった。エンジニアに限らず、社会人がよく嘆いています。

 

□■□疑問■□■

将来、設計事務所かゼネコンの設計部で構造設計をやりたいと考えています。今のうちにやっておいた方がよいことはあるでしょうか。

 

□■□回答■□■

仕事をしているとよく「あの時やっときゃよかったなぁ」と思う場面があります。これは職種に関わらずあることだと思いますが、高い専門性を求められる分、エンジニアはその機会が多いかもしれません。しかし、だからといって勉強したほうがいいとは言いません。何を勉強すればいいかは就職するまでわかりません。それよりももっと大切なことを3つ、ついでにしなくてもいいことをいくつか紹介します。

 

 

インターンシップ

まず一つ目はこれです。「設計の現場を見ておいた方がいい」、「働くということがよくわかる」とかは正直あまり関係ありません。単純に「一級建築士試験を受けるのに必要な実務経験の一年にカウントしてもらえる」ことだけを言っています。

 

一級建築士試験を受けるには「大学の建築学科を卒業してから2年の実務経験」が必要です。以前は大学院も実務認定してもらえたので、院卒であれば新入社員でも試験を受けることができました。会社側も勉強時間確保のための配慮がしやすく、試験までは残業無しということも普通にあり得ます。

 

しかし今は新入社員に受験資格はありません。そうなると、「早く一人前の設計者にしてやろう」といらない気を使ってくれる先輩社員や上司がたくさんいます。日に日に仕事が忙しくなっていくでしょう。

 

2年目になるとかなりのスキルアップをしています。学校での勉強と実際の業務が繋がってきている頃でしょう(繋がらない勉強のなんと多いことか)。しかし当然3年目では更に先に行っています。ある程度の業務なら指示無しでもできますし、先輩社員の助言を仰ぎながらも一人でプロジェクトを担当させてもらっているかもしれません。できる仕事の幅、量が段違いになっています。

 

つまり、2年目で受験できるか3年目で受験できるかで、一級建築士試験に割ける勉強の時間が大いに変わってくるのです。しかも院卒で3年目ともなると結婚している可能性もそれなりにあります。公私ともに忙しいのに、資格試験の勉強なんてやっていられるでしょうか。

 

10年目社員の1年と新入社員の1年では価値が違います。一級建築士なんて取ってなんぼ、その次には構造設計一級建築士も待っています。どうせ取らなければならないなら早めにやってしまいましょう。そのためにはインターンシップです。

 

修士論文

いや、言われなくてもやらなきゃ修了できないし、ということではありません。「実務のことをもっと知っておかなきゃ」、「地盤のこと全然わかってなくてやばい」といろいろ心配するくらいなら、その時間をしっかり修士論文に充てろ、ということです。

 

いざ構造設計に就職が決まると、なんだか自分が構造設計のことを何にも知らないということで不安になってくる人が一定数います。でもそんなことは当たり前です。会社も即戦力だと考えて採用しているわけではありません。

 

もちろん「構造設計事務所でバイトしていました」みたいなのは時々います。ものすごいスタートダッシュを切っているように思えるかもしれません。しかしそんなものは誤差の範囲です。構造設計者なら誰でも持っている知識なら、仕事をしているうちに誰でも習得できます。

 

構造設計者と言っても、構造の全てに精通しているわけではありません。コンクリートなのか鉄なのか、あるいは大空間なのか振動なのか、それぞれに専門を有しています。その専門家集団の中にあっても、仮に狭い範囲であれ、この分野のことなら先輩社員にも負けない、と言えることが強みになります。

 

学生時代に頑張って「ブレースの端部の納まりがわかります」、「鉄骨梁の接合部の設計ができます」と言えるようになっても「へぇ、すごいね」以上のことはありません。当然誰でもできるからです。

 

自分の武器、強みを作るには修士論文を高いレベルに仕上げるのが一番の近道です。大手であれば「勉強会」であったり「グループ」であったり呼び名は様々ですが、同じ専門の人達が集まって技術開発や意見交換を行う場があります。そういう場で活躍することも、自分の評価を高めてくれます。

 

よくわからないけど、なんだか不安だから、そんな気持ちで新しく何か勉強するよりは、修士論文に真剣に取り組む方がよっぽど有益です。

 

パートナー探し

早めに結婚したい、というなら必須です。学生時代からの彼氏彼女がいる人は入社3年以内でほとんどが結婚します。社会人になってからの付き合いであれば入社5年前後、あるいはそれ以降に結婚する人が多い印象です。

 

周りを見渡してみると、結婚相手とは学生時代から付き合っていた、もしくは友人だったというのが半分を占めます。それ以外の1/4が社会人になってからの相手と結婚、残りの1/4が30代半ば、40代になっても独身です。

 

忙しい、出会いがない、これは構造設計に限らず、世の中のほとんどの職場で共通のことでしょう。「いつかは結婚するよ」という人は大抵結婚していません。別に結婚する必要はありませんし、子供も欲しくなければ全く構いませんが、したい気持ちがあるなら早め早めの行動がお勧めです。

 

職場結婚もゼロではありませんし、「亭主元気で留守がいい」というのがお望みの女性には絶好の結婚相手とも言えます。設計部は学歴が高い人が大半ですし、残業代ももらっていますので、婚活市場でも需要はあります。

 

自分のライフプランをなんとなくでも描いておくと、あとあと助かるかもしれません。

 

これはやらなくてもいいかも

資格試験勉強

受験資格があるから、という理由で二級建築士を取ってしまう人もいます。偉いなぁとは思いますが、それ以上のことはないです。

 

一級建築士は設計部にいる限り必須です。仕事しながらの勉強は大変ですし、できるだけ早く取ってしまいたいものです。しかし、だからと言って学生のうちからやっておくほどかというと疑問です。

 

昔であれば入社してすぐ受けられますので、新入社員の半分くらいは程度の差こそあれ学生時代から勉強していました。しかしインターンシップを経験していたとしても試験までまだ1年以上あります。それまでモチベーションを保てますか?

 

そして何より、あなたは設計部に入社できるくらいに優秀です。難関資格だからと言ってそんなに身構える必要はありません。新入社員から受けられた時代の話ですが、4月の半ばから勉強を始めたにも関わらず学科を突破する人は半分くらいいます。学科だけでも合格率20%を切る試験なので、なかなかすごいです。

一級建築士試験体験記:学科と製図と勉強法と

建築士試験の本当の難易度:大手ゼネコンマンは思う

 

資格学校に通う、通わないに関わらず、入社してからで全く問題ないと思います。それよりも上記3つや、他の大事なことをやりましょう。

 

英語

もちろんやってもいいです。むしろ、やりたいならやったほうがいいです。しかし、将来海外研修に行ってみたい、海外プロジェクトに興味津々、という人以外はやめておきましょう。

 

海外の仕事に関しては、基本的にはやりたい人、得意な人に回されます。「あいつは優秀だから先々海外に出す」という理由で英語が嫌いでもやらされる人は稀にいますが。

 

就職に関してもそれほど有利に働きません。もちろんできるに越したことはありませんが、海外事業部でもなんでもなく、構造設計をするわけです。一番大切なのは専門に関するスキルです。

 

上述したように、それは実務の設計能力ではなく、ましてや言語能力でもありません。基本は修士論文です。

 

ちなみに、英語の論文を読むのはお勧めですよ。