コンクリート技士の上位資格であるコンクリート主任技士。少し前の話になってしまいますが、合格までの体験を記したいと思います。
ゼネコン設計部社員がコンクリート主任技士を受けるまで
なんのことはありません、突然上司に指示されただけです。「バッコ、お前この資格取れ」と。
上司の指示は、会社が「一級建築士やコンクリート主任技士の有資格者を増やす」という方針を打ち出したためです。有資格者数というのは会社の技術力を測る一つの指標になるようです。
当時はまだ入社2年目の若手社員でした。一級建築士は新入社員時に取得済みだったので、ちょうどいいと思われたのでしょう。
コンクリート主任技士の受験には大学(土木、建築系)を卒業後、4年以上の実務が必要となります。大学院での2年間も実務扱いでしたが、その時点ではまだ実務経験が足りません。受験は翌年になります。
「じゃあ、勉強時間は十分にあるな」ということで、一発合格を厳命されました。
試験構成と合格率
試験構成
1次試験:四肢択一×30問、小論文
2次試験:口述試験(2013年度より廃止)
合格ラインは70%程度ということで、21問が目安になります。確実に合格するために80%である24問を最低ライン、目標を90%である27問に設定しました。
2次試験が2013年度より廃止されたのは知りませんでした。口述試験は「実施は日曜日で会場が東京のみ」という恐ろしく負担の大きい試験でしたので、廃止されたのも頷けます。折角の休みにスーツで東京まで出向いたのを思い出します。
合格率
ここ10年以上、合格率は12-13%で推移しています。恐ろしいまでの安定感ですので、相対評価であることはまず間違いありません。
なお、廃止される前の口述試験の合格率は90%程度と推察されているようです。東京まで出てきて不合格の10%に入ってしまっては泣くに泣けませんね。
勉強方法:過去問→テキスト→小論文
1年目
おそらくみなさんも同じだと思うのですが、「1年以上先の試験に向けて頑張る」というのは非常に難しいです。しかも働きながら。かなり強い精神力が必要でしょう。そして私にはその精神力がありませんでした。
やったことといえば、講習会に参加して「コンクリート技術の要点」を手に入れたことと、本屋に行って5年分の過去問が載っている問題集を買ったことだけです。
パラパラとページをめくってはみましたが、よくわかりません。早々にデスクの隅の方に追いやりました。ちなみに専門は建築の構造設計なので、力学の問題だけは初見でも解けました。
2年目(試験半年前~)
ようやく重い腰を上げ、勉強に取り掛かることにしました。しかし、当時子どもが生まれたばかりで、子育てだけでぐったり。今思えば、結構きつい状況でのスタートでした。
とりあえず、わかってもわからなくてもいいので、一通り4択の過去問をやってみました。まったくわからない問題がほとんどでした。用語もわからないものが多く、「強熱減量」も「原料だろ?誤植か?」と思っていたほどです。
採点の度に、点数の低さにがっかりしましたが、5年分やることで「テストにはこういう問題が出る」ということがわかりました。
次に「コンクリート技術の要点」を読み始めました。過去問の回答が載っている箇所に赤いボールペンでアンダーラインを引き、重要な用語は緑、重要な数字はピンク、重要な図・表は黄色でハイライトしました。
過去問を参照しながら読み進めることで、「コンクリート技術の要点」の中でも重要なところを押さえることができました。今でも当時使用した「コンクリート技術の要点」は貴重な参考書として活用しています。
2年目(試験一か月前)
2週間に1度、図書館に行って勉強することを妻に許してもらったものの、基本的には休日も子どもの相手をしなくてはいけませんでした。勉強自体は苦ではありませんでしたが、これは堪えました。
この時点で過去問は5年分を3回か4回解いており、目標である90%以上を取れるようになっていました。4択は十分ということで、小論文に向けた対策を始めました。
対策と言っても、結局は過去問をやるだけです。実際に出題に沿って書いてみて、読み直す。そして手直しをする。これを4択同様5年分やりました。あまり準備し過ぎても仕方がないかという気分だったので、時間配分と起承転結だけ意識していました。
小論文が苦手だという人は、むしろ4択の勉強に力を入れてみてはどうでしょうか。合格点ギリギリだと小論文を厳しく審査されます。口述試験が無くなったのでなおさらです。
4択で25問以上正解して落ちたという人を知りません。苦手な小論文はそこそこにして4択の勉強に時間を割いた方が、もしかしたら合格への近道になるかもしれません。
試験当日
会場
試験は東京で受けたのですが、会場はなぜか東大キャンパス内でした。コンクリート主任技士だけでなく、コンクリート技士も同じ試験会場のようで、かなり込み合っています。
受験者らしき、いかつい作業服のおじさんや、ニッカを履いたおじさん方が煙草をスパスパしていました。キャンパス全体が白く煙で濁り、東大生は何事かと遠巻きに眺めています。ポイ捨て防止のためか、至る所に普段は置かれていないと思しきバケツが置いてあります。せっかくのキャンパスの景観が台無しです。
足早に煙草ゾーンを抜け、コンクリート主任技士の会場にたどり着くと雰囲気は一変。周りにいる受験者の年齢層が明らかに下がりました。技士に受かってから主任技士に挑戦する人が多いようなので、年齢層が上がることを予想していたので驚きでした。
なんだか受験者の見た目も真面目そうです。煙草も吸っていない人が多いです。「技士に早々に受かった真面目な層」と「いつまでも技士に受からない不真面目な層」の違いを目の当たりにしました。
筆記試験
昔から試験を解き終わるのが早いほうなため、4択を終えた時点でかなり時間に余裕がありました。おかげで小論文にしっかりと時間を割くことができました。
ただ、一か所漢字を間違えてしまいました。なぜか「繊維補強」の「繊」が出てこなくなり、適当に書いたのがまずかったです。後で調べたところ、やはり間違っていました。多少なりとも小論文は減点されそうです。
それでも試験後の4択の自己採点は26問正解。目標の27問には届きませんでしたが、合格は間違いないと確信できました。
口述試験
今は廃止されてしまいましたので、書いても誰の参考にもなりませんが、一応書いておきます。
筆記試験後、合格通知が届くまでは全く何もしませんでしたが、通知が届いてもあまりやる気は起きませんでした。合格率が高いため、先輩社員からも落ちるわけがないと言われていたからです。
試験一週間前になり、ようやく筆記試験で間違えた問題の復習と、小論文の内容の確認だけはしておきました。かなり知識も抜け落ちてきており、この時点で筆記を受けたら合格が危ういかも、というレベルでした。
本番は思ったより緊張しましたが、小論文の内容に触れられることもなく、穏便に済みました。「技術を高めるためにしていることは」と聞かれたくらいでしょうか。
無事一発で合格することができ、上司に叱られずに済みました。
コンクリート主任技士の本当の難易度
実は、今この記事を書くまで合格率が10%強しかない試験だとは全く知りませんでした。想像よりもかなり少ないなという印象です。数字だけ見ると難関試験のように見えます。
ただ、実際にはそこまで難しい試験ではないと思います。まず、毎年申込み者数は4,000人前後ですが、実際の受験者数はその80%しかありません。「会場に来る」だけで2割が脱落する試験です。
確かに会場は大都市に限られており、受かる見込みがないのにわざわざ出向くには物理的に大変です。とはいえ、真面目に取り組んでいない人が多いことは明白です。「申し込んだから一応来た」だけの人も相当数いそうです。
試験が早く終わったので周りを観察する余裕があったのですが、早々に寝てしまう人や小論文を書いていなさそうな人も見られました。
真面目に頑張れば受かる試験、そういう風に感じました。
最後に一言不満を
以前までは、コンクリート主任技士に資格更新のための講習はありませんでした。それがいつの間にか更新講習が必要という風に変更になっており、お金と時間を取られてしまいます。
まあ仕方ないかという反面、納得いかないのが「コンクリート技士と全く同じ内容」の講習を受けることです。技士も主任技士も同じ会場に集められ、同じ話を聞かされます。
協会側もまだ制度変更にうまく対応できていないのでしょうが、何のための上位資格、何のための更新講習なのでしょうか。早急に変更してほしいです。