バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

スーパーゼネコンの違い:技術開発の方向性から会社方針を考察

大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店、この建設大手5社をスーパーゼネコンと呼びます。

 

□■□疑問■□■

スーパーゼネコン各社の技術力に違いはあるでしょうか。外からではその違いが判りません。

 

□■□回答■□■

得意不得意はありますが、全体としては技術力に大きな差はありません。技術力よりも文化・雰囲気の違いが設計した建物および技術開発の方向性に表れています。知人や業界内の噂、実際の設計や開発技術から会社の方針を探ることが可能です。

売上などの数字の比較やHPからも違いは分かるかもしれませんが、表面的で本質を突いていない場合も多いです。狭い範囲ではありますが、構造技術者の視点から考察してみました。

 

 

大林組:バランス重視

地震の揺れをほとんど伝えないスーパー制震「ラピュタ2D」(「制振」ではなく「制震」のようです)を自社の研究施設に用いています。また、2005年の愛知万博では世界初の「動く鉄塔」を造っています。業界で1番になることを狙った技術と言えます。

 

その他の制振技術として、「ブレーキダンパー(摩擦力を利用してエネルギーを吸収する装置)」や「DFS(2棟の建物をダンパーで繋ぐ工法)」を有しています。両技術とも適用件数が多く、一品生産の建築業界において非常に汎用性のある技術です。

 

高い性能を有する技術を求める一方、汎用性に富んだ儲かる技術もバランスよく開発しているという印象です。

 

鹿島建設:品質重視

高くてもいいものを造る、という気概が業界内にいると伝わってきます。過去に京都大学の名誉教授小堀鐸二先生を副社長に招き、関連会社である小堀鐸二研究所を創設していることからもそれが伺えます。また2017年より、これまた京都大学名誉教授である中島正愛先生が研究所の社長に就任しています。

 

民間企業の研究者と大学の研究者ではかなり毛色が異なります。アカデミックな分野での最新の知見を技術開発に組み込むことができるのは大きな強みになります。ただし、最初は採算の取れる技術には成り難いです。

 

独自の制振装置「HiDAX」や「D3SKY」は「高いだろうな」という印象はありますが、同時に「効果はあるだろうな」とも思わせます。高くても売ることができる鹿島のブランド力を感じます。

 

清水建設:オリジナル

面白い技術、尖がった技術があればまずやってみよう、と思っているのではないでしょうか。売れるか売れないかはそのあと、とまでは言いませんがそんな印象の技術開発が多いような気がします。

 

水の中に浮いているような「浮体免震」、支柱からワイヤーでぶら下がった「やじろべえ免震」、これらはもしかしたら一度は思いついたことがあるかもしれません。ただ、普通は思いついただけでお終いです。でもまさか、これを本当に実現してしまうところに驚きを感じます。

 

適用した建物は自社の研究所です。宣伝効果があるからとはいえ、自腹を切ってここまでのことをする会社、楽しそうです。

 

大成建設:儲かる技術

スーパーゼネコン5社の中で、唯一大工の棟梁ではなく商人が作った会社です。その影響か、「よいものを安く」という技術を多く有しています。

 

建物との接合部分に工夫を施した杭「F.T.Pile」や鉄筋コンクリート造建物に鉄骨の梁を組み込む「CSビーム」はその代表例です。建設コストを下げることができ、かつ性能が上がる、技術開発のお手本と言えます。

 

通常のゼネコンであれば「同じものを安く」か「少し品質を落としてすごく安く」となってしまいがちです。そんな中、品質を上げつつコストを上げないようにするには高い技術力が必要でしょう。そのため、「高くてもよい技術」もたくさん有しています。

 

市場の大きさやコストに関してうるさく言われそうですが、世の中に求められる技術を生み出せる職場かもしれません。

 

竹中工務店:For the 設計

自社設計の建物のことを「作品」と呼ぶほどに設計にプライドを持った会社です。他社では「プロジェクト」や「物件」といったところでしょうか。

 

2014年に通常の3倍の力を出せる制振装置を開発しており、実際の建物に適用しています。これは建築空間を有効活用するため、制振装置の設置個所を1/3に縮約するためです。

 

また、免震建物を支える積層ゴムの耐久性の試験を行っています。実際の建物に使用しているゴムを抜き取り、性能を調べています。超高層の免震建物を多く造っているため、そのアフターケアの必要性からかもしれません。

 

設計がまず一番にあって、その設計を実現するために技術開発がある、そういう風に感じる会社です。

 

 

以上、業界内の噂や知人からの情報、技術開発から想像するスーパーゼネコンの違いでした。多分に主観が含まれていますが、就職活動やその他の参考になれば幸いです。