バッコ博士の構造塾

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壁のダブル配筋:購入前に知っておきたいRC造マンションの構造

コンクリートの壁には縦と横にそれぞれ鉄筋が配置されています。この縦と横の鉄筋の組が壁の中に二重(ダブル)で配置されていることをダブル配筋といいます。

 

□■□疑問■□■

マンションの広告、パンフレット等で、このダブル配筋を行うことで「一重(シングル)より強い」と主張されていることがありますが、どのように評価できるでしょうか。

 

溶接閉鎖鉄筋:購入前に知っておきたいRC造マンションの構造

コンクリート強度:購入前に知っておきたいRC造マンションの構造

 

□■□回答■□■

シングル配筋になるかダブル配筋になるかは、基本的に壁厚によって決まります。壁厚が厚くなれば自動的にダブル配筋になるため、ダブル配筋にしているからと言って特別に構造に配慮した設計であるわけでは決してありません。そのため、他のマンションと比較する際に重要な指標とはなり得えないでしょう。ただ、外壁が薄いためにシングル配筋となっている場合は要注意です。

 

 

コンクリートに鉄筋を入れる意義を知ろう

まず、なぜ鉄筋を入れる必要があるかを考えてみましょう。

 

鉄筋コンクリート造はRC造と表記されることが多々あります。これはReinforced Concreteのコンクリートの略で「補強されたコンクリート」という意味です。この「補強」というのが鉄筋のことです。

 

コンクリート自体は遥か昔から建築用材料として使用されており、ローマのパンテオン等が有名ですが、これらの古い建物には鉄筋が入っていません。鉄筋コンクリートの歴史は意外に浅く、19世紀に入ってからの発明です。

 

コンクリートとは主としてセメント、砂、砂利、水を混ぜ合わせ、それらをセメントと水の水和反応により凝固させたものです。圧縮力にはめっぽう強く、逆に引張力に対しては非常に弱く脆性的(=脆い)な材料です。そこで引張力に強く、靭性(=粘り強さ ⇔ 脆さ)がある鉄筋と組み合わせることで短所を補っています。

 

その鉄筋、十分ですか?

「鉄筋がたくさん入っている ⇒ 短所が十分に補強されている ⇒ 強い」ということが一般的には言えます。そのため、同じ太さの鉄筋を使用すれば、ダブル配筋はシングル配筋の倍の量を入れることになるので「強い」と主張することは間違っていないように思われます。

 

しかし、本当に重要なことはシングル配筋かダブル配筋かという鉄筋の「量」の問題ではなく、壁の厚さに対してどれだけの鉄筋を入れたかという「比率」の問題です。壁の厚さが120mmと300mmではその意味が大きく異なります。厚い壁には厚いなりにたくさんの鉄筋が入っていなければなりません。

 

壁が薄くてもダブル配筋?

鉄筋の配置には物理的な制約もあります。

 

鉄筋はサビにより劣化しないよう、強アルカリであるコンクリート内に一定の深さ以上埋め込まなくてはいけません。この埋め込み量を「かぶり厚さ」と言い、壁の仕上げの状況や設置場所(屋外か屋内か)によりこの値が変化します。

 

今かぶり厚さを40mmとすると、壁の表側と裏側の両方に必要となるので80mmとなります。シングル配筋の場合はこれに縦と横の鉄筋の太さが一本分ずつ加わるので、細い鉄筋を使用しても100mm以上となります。縦の鉄筋同士または横の鉄筋同士は隙間をあけて設置しなければならないため、120mmの厚さの壁ではダブル配筋自体が不可能であることがわかります。

 

逆に300mmの壁をシングル配筋とした場合、壁の真ん中に鉄筋がくることになるため、表側・裏側ともに140mm程度鉄筋が無い範囲ができることになります。前述したようにコンクリートは脆い性質を持っているため、鉄筋の入っていない範囲が大きくなり過ぎると欠け等の不具合が生じやすくなります。そのため300mmの厚さの壁は自動的にダブル配筋となります。

 

ではその中間の厚さの壁ではどうなるかですが、新築の場合で厚さ180mm以上の壁であればまず間違いなくダブル配筋になっていると思います。150mm程度の場合、「千鳥配筋」といってシングル配筋とダブル配筋の中間のような配筋を採用しているかもしれません。

 

「ダブル配筋は強い」のか?

構造設計では目標とする耐震安全性をできるだけ安価に達成できるよう設計作業を行っています。鉄筋の量を増やせば増やすほど建設コストは上昇しますので、壁一つ一つに過不足なく適切な量の配筋を行うのが常です。その結果がたまたま「全ての壁がダブル配筋」であっても、何ら誇るべき内容ではありません。

 

「壁のダブル配筋」は特に耐震安全性を判断する材料にはなり得ないです。「ダブル」が普通、「シングル」なら理由を確認、というところでしょう。

 

屋内のあまり重要でない立ち上がりの壁等であればシングル配筋でも差し支えありませんが、外壁やバルコニーの手摺りを薄くしてしまったがためにシングル配筋としている場合は注意が必要です。「そんなところまでケチってしまう業者」と言えるかもしれません。