バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

耐風梁がよくわかる:吹き抜けからALC受けまで

建物を構成する骨組のうち、水平な部材一般を「梁(はり)」と言います。 梁の主たる役割は、床などの重量を柱まで伝達することです。支える床の面積や柱間の距離に応じて梁の大きさを決定します。 梁がよくわかる しかし、建物に作用する力は重力だけではあ…

地震に強い家に住みたいと思ったら読む本:構造設計一級建築士がお薦めします

検索をかければ大抵のことが簡単に、無料で、しかも詳しく調べられる世の中になりました。当ブログを含め、耐震安全性に関する情報も大量にあります。 しかし、信頼性の高い情報が欲しい、より詳細な情報が欲しいとなった場合はまだまだ書籍に優位性があるよ…

地震で倒れない家とはどんな家:建物の強さと耐震性の話

2016年の熊本地震では震度7の強烈な揺れが二度も発生しました。 建築基準法では一度の揺れに耐えられるよう設計することとなっており、二度目の揺れは想定されていません。一度目の揺れには耐えられた建物も、二度目の揺れによって倒れたとの報告がなされて…

住友林業のビッグフレーム構法の耐震性について構造設計者が考察

「家を建てるなら木造がいい」と考えている人も多いかと思います。では、さらに一歩踏み込んで「木造にするなら○○工法(構法)がいい」とまで考えている人はどれくらいいるでしょうか。 日本で最も一般的な木造の工法は「木造軸組工法(在来工法)」、ついで…

タワーマンションは地震に強いのか:耐震性とその検証方法

タワーマンションの耐震性について、疑問を持たれている方が多くいます。 首都圏や関西圏の超高層ビルに大きな揺れをもたらした東日本大震災の影響が大きいのだと思います。 すでにタワーマンションの「地震時の揺れ方」、「制振と免震の優劣」については記…

剛性率を考える:高さ方向の構造バランスと力学の話

「地震に強い建物にするにはバランスのいい構造にするのが重要です」とはよく言われます。 なるほど、確かにバランスが悪いよりはいい方が強そうです。では、建物のバランスとは一体何を指しているのでしょうか。 そもそも、一口にバランスと言っても、色々…

ヘーベルハウスの耐震性について構造設計者がまじめに考察してみた

「家を新築したい」と思ったときにまず何をするでしょうか。検索をかければいろいろとわかる世の中ではありますが、「実物を見てみたい」と住宅展示場を訪れる方も多いのではないかと思います。 住宅展示場探訪記 住宅展示場では邸宅と呼ぶに相応しい立派な…

SE構法(SE工法)の耐震性:本当に在来工法よりも強いのか

日本の戸建て住宅のほとんどは木造です。鉄骨造やコンクリート造の住宅を取り扱う大手ハウスメーカーもありますが、戸建て住宅全体から見ればまだまだ少数です。 基本的に日本人の大多数は木の家が好きなのでしょう。森林が豊富な国ですので、それも当然のこ…

3Dプリンタによる家づくり:構造設計者の目から見た課題

3Dプリンタが登場するや否や、「家をプリントアウトできる日がくるかも」と期待する声が上がりました。そしてそれはもう現実のものとなり、海外ではいくつもの実例があります。 大工や鳶といった建設業従事者は減少の一途ですが、3Dプリンタが人手不足解消の…

耐力壁を理解する:木造住宅の耐震性を決めるのは耐力壁の量

巷間で言われている「耐震性の高い木造住宅の条件」をいくつか挙げてみます。凸凹の少ない整形な平面・立面であること、壁の配置バランスがいいこと、上下階で柱や壁が連続していること、などなど。 確かに、どれも構造設計を行う際に留意する点であり、これ…

構造計算におけるモデル化:モデル化でわかる構造設計者のセンス

ほんの数十年前までは計算機を使用せず、紙と鉛筆をつかっての手計算により建物の安全性を確認していました。海外にある超高層建物は築100年程度のものもありますので、それらの建物は当然高度な計算による検証はなされていません。 では「そんな建物は怖く…

プレストレストコンクリートとは:知っておきたい基本性能

世の中にはいろいろな材料がありますが、短所の無い材料はありません。「コンクリート」は安価で耐久性に優れ、圧縮に強い材料ですが、引張に弱いという性質があります。そのため、引張に強い「鉄筋」と組み合わせることで弱点を補っています。 鉄筋とコンク…

アンボンドブレースがわかる:座屈しないとこんなにも使いやすい

建物に作用する地震の力にどうやって抵抗するか、それにはいろいろな方法があります。「曲げ」によって抵抗する「ラーメン構造」、「せん断」によって抵抗する「壁式構造」、そして「伸び」により抵抗する「ブレース構造」などがあります。 ラーメン構造がわ…

線形・非線形とは:知っておくべき違いと解析における使い分け

中学生の頃、「フックの法則」というものを習ったかと思います。バネを引っ張るとき、バネの伸びと引っ張る力の大きさは比例する、というものです。 10kgfの力で引っ張ると3cm伸びるのであれば、20kgfの力で引っ張れば6cm伸びるわけです。簡単な話ですね。比…

火打ち梁がよくわかる:建物の重量を負担しない変わった梁

鉄骨造やコンクリート造の建物に比べ、木造の建物は細かな多数の部材で構成されています。自然材料であるため、大きな断面の部材が使いにくいことや、材料の強度が低いことが影響しています。 そのため、他の構造ではあまり見られないような部材が必要になる…

エキスパンションジョイント(EXP.J)とは?橋から免震まで

橋や高速道路と言った土木構造物、スタジアムや超高層ビルと言った建築構造物、これらは人間が造るものの中で最も大きなものの一つでしょう。 大きいということは、それだけで特別なことです。大きいが故にいろいろな問題を引き起こす場合があります。どれだ…

応答スペクトルとは?地震の特性を理解する一番わかりやすい指標

地震の揺れを観測するため、日本中に地震計が設けられています。地震計位置における加速度データは記録され、耐震工学の発展をはじめ、いろいろなことに使用されています。 しかし、その記録された地震波のデータを見ただけではほとんど何もわかりません。せ…

減震パッキン『UFO-E』の効果を再考する

基礎と建物との間に挟み込む、直径90mmの小さな「UFO-E」という金物があります。この金物を設置するだけで、建物に伝わる地震の力を大幅に減じることができるということです。 もし本当に素晴らしい効果があるのであれば、画期的な商品です。非常に興味を引…

柔構造・剛構造とは?結局どちらが地震に強いのか

もし突然、「硬い家と柔らかい家、どちらに住みたいですか?」と聞かれたらなんと答えるでしょうか。 「柔らかい家になんて住めないだろ」という人が多いかもしれませんが、「柔らかい方が地震の力を受けにくい、と聞いたことがある」という人もいるかもしれ…

免震構造を科学する:簡単な力学で免震の効果を理解しよう

「免震」というと、なんだか最新の技術のように思われる方もいますが、実際にはかなり長い歴史があります。 1890年代にはすでにアイデア自体はあり、その後いくつも特許が出されています。建物を縦横に並べた丸太の上に載せる、ボールの上に載せる、ヒョロヒ…

耐震等級3と耐震等級2+制振はどっちが強い?構造設計のプロが回答

建物の耐震性能を表す指標として「耐震等級」があります。等級は1から3まであり、3が最高評価です。 耐震等級1は現行の建築基準を満たす耐震性を有していることを示しており、耐震等級2ではその1.25倍、耐震等級3では1.5倍の強さを有していることになります…

地震の加速度を表すガル(Gal)とは?建物の揺れと計測震度との関係

地震が発生すると、日本各地で観測された地震のデータはすぐに解析されます。震央やマグニチュード、震度の分布状況が速報で流れることで、地震の概要がわかります。 しばらくすると負傷者や倒壊家屋の数が報道され始め、地震による被害の状況も知ることが可…

構造設計のプロがUFO-Eの摩擦減震効果について徹底検証

戸建て住宅では、高層ビルでは使用しないような変わった技術があります。建物規模が小さく重量が軽いこと、特例により構造計算が必要ないこと等が影響していると考えられます。 特徴的なものとして、「制震テープ」や「エアー断震」が挙げられます。他に例を…

免震装置の種類と特徴:免震支承から免震ダンパーまで

東洋ゴム工業の免震ゴム、KYBの免震ダンパー、免震構造に関する不祥事が社会問題となりました。連日テレビで取り上げられる大変な事態でした。しかし、その割に免震に関する理解が十分に広がっていないように感じられます。 東洋ゴム工業の免震ゴムデータ不…

異形鉄筋と丸鋼:基本的性質と構造設計者が知っておくべきこと

コンクリートでできた建物には、コンクリートを補強するための「鉄筋」と呼ばれる細い鋼の棒が入っています。鉄筋には「異形鉄筋」と「丸鋼」の2種類があります。 昭和40年代頃までは丸鋼が主流だったようですが、今では完全に異形鉄筋に置き換わっています…

優れた構造デザインとは:目に見える構造・見えない構造

「構造デザイン」と聞いて、どういったイメージを思い浮かべるでしょうか。 繊細な柱に支持され浮いているかのような建物。厚みを感じさせない大屋根。奇抜な外観を支える複雑な骨組。大空間を覆う幾何学的なトラス。 どれも意匠設計者だけで簡単に実現でき…

ヤング係数比がわかる:なぜ純粋なヤング係数の比ではないのか

「鉄筋コンクリート造(RC造)」は異種材料である鉄筋とコンクリートを組み合わせた複合構造であり、非常に複雑な特性を持っています。その複雑さゆえ、RC造の建物の各部に生じる力を正確に求めることは容易ではありません。 しかし、各部に生じる力の大きさ…

屋根をリフォームしよう:木造住宅の最も間違いのない耐震補強法

建物の最上部にあり、雨や日射から内部空間を守っているのが「屋根」です。 外壁と同様、屋外の過酷な環境に置かれているので、定期的なメンテナンスが必要になります。雨漏りが生じてしまえば、建物の耐久性にも悪影響を及ぼします。 昔は、屋根と言えば「…

梁がよくわかる:役割と種類、梁のサイズの決め方

建物の骨組の中で最も大切な部材は「柱」です。重力や地震の力に耐えるために不可欠な部材です。 では、その次に大切な部材はなんでしょうか。「鉛直(縦)」の部材である柱の次は、「水平(横)」の部材である、あれです、あれ。 そう、正解は「梁」です。…

オイルダンパーの原理と仕組み:制振ダンパーから免震ダンパーまで

以前に比べ、「制振」・「免震」という用語が一般化してきたように思います。 住宅展示場に行けば、いろいろなハウスメーカーが制振や免震を進めてきます。タワーマンションのパンフレットを見ても制振や免震の文字が躍っています。 この制振や免震に欠かせ…