バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

構造設計:実務

アンボンドブレースがわかる:座屈しないとこんなにも使いやすい

建物に作用する地震の力にどうやって抵抗するか、それにはいろいろな方法があります。「曲げ」によって抵抗する「ラーメン構造」、「せん断」によって抵抗する「壁式構造」、そして「伸び」により抵抗する「ブレース構造」などがあります。 ラーメン構造がわ…

線形・非線形とは:知っておくべき違いと解析における使い分け

中学生の頃、「フックの法則」というものを習ったかと思います。バネを引っ張るとき、バネの伸びと引っ張る力の大きさは比例する、というものです。 10kgfの力で引っ張ると3cm伸びるのであれば、20kgfの力で引っ張れば6cm伸びるわけです。簡単な話ですね。比…

エキスパンションジョイント(EXP.J)とは?橋から免震まで

橋や高速道路と言った土木構造物、スタジアムや超高層ビルと言った建築構造物、これらは人間が造るものの中で最も大きなものの一つでしょう。 大きいということは、それだけで特別なことです。大きいが故にいろいろな問題を引き起こす場合があります。どれだ…

柔構造・剛構造とは?結局どちらが地震に強いのか

もし突然、「硬い家と柔らかい家、どちらに住みたいですか?」と聞かれたらなんと答えるでしょうか。 「柔らかい家になんて住めないだろ」という人が多いかもしれませんが、「柔らかい方が地震の力を受けにくい、と聞いたことがある」という人もいるかもしれ…

異形鉄筋と丸鋼:基本的性質と構造設計者が知っておくべきこと

コンクリートでできた建物には、コンクリートを補強するための「鉄筋」と呼ばれる細い鋼の棒が入っています。鉄筋には「異形鉄筋」と「丸鋼」の2種類があります。 昭和40年代頃までは丸鋼が主流だったようですが、今では完全に異形鉄筋に置き換わっています…

ヤング係数比がわかる:なぜ純粋なヤング係数の比ではないのか

「鉄筋コンクリート造(RC造)」は異種材料である鉄筋とコンクリートを組み合わせた複合構造であり、非常に複雑な特性を持っています。その複雑さゆえ、RC造の建物の各部に生じる力を正確に求めることは容易ではありません。 しかし、各部に生じる力の大きさ…

梁がよくわかる:役割と種類、梁のサイズの決め方

建物の骨組の中で最も大切な部材は「柱」です。重力や地震の力に耐えるために不可欠な部材です。 では、その次に大切な部材はなんでしょうか。「鉛直(縦)」の部材である柱の次は、「水平(横)」の部材である、あれです、あれ。 そう、正解は「梁」です。…

残留変位・残留変形とは?制振・免震建物の応答に与える影響

針金をほんの少しだけ曲げてから手を離すと、針金は元に戻ります。しかし、グイっと曲げてしまうと、手を離しても元に戻らなくなります。 建物の場合も同様で、小さな地震の後では元に戻ったとしても、大きな地震の後では元に戻らないことがあります。変形し…

座屈がわかる:座屈の種類と座屈荷重・座屈長さの基本を押さえる

通常、ある物体に横から力を加えると横に変形し、縦から力を加えると縦に変形します。 なんだか当たり前のような気もしますが、そうとも限りません。ある条件の下では、縦に押したのに横に曲がってしまうということが起こります。 プラスチックの定規や細長…

層間変形角・層間変位がよくわかる:その意味と計算方法と制限値

どんなに硬いものでも、力を加えれば変形します。建物も例外ではなく、物を置いたり風が吹いたりすれば、それに応じて揺れたり変形したりしています。 ただその程度が小さいため、普段生活している分にはあまり気づかないだけです。歩道橋の真ん中で立ち止ま…

主筋とせん断補強筋(帯筋・あばら筋):各鉄筋の役割と違い

「鉄筋コンクリート造(RC造)」は、マンションや病院、その他多くの建物に採用されています。 RC造とはその名の通り、コンクリート内に鉄筋を組み込んだコンクリートと鉄の複合構造です。コンクリートは「圧縮」には強いですが、「引張」には弱いため、それ…

靭性・脆性とは:材料の特性を知って安全な構造物を設計しよう

何か構造物を設計する際、使用する材料の「強さ」や「硬さ」を知る必要があります。 「強さ」と「硬さ」の違い この二つがわかれば、想定した力に対して構造物が「壊れるかどうか」がわかります。しかし、その構造物が「どう壊れるか」までは分かりません。…

断面係数・断面二次モーメントとは:梁せいの2乗・3乗に比例する理由

大学の講義でも建築士の試験でも、構造力学につまずいてしまう人が非常に多いです。カッコいい建物をデザインしたくて建築士を志しているのに、まさかこんなに数式が出てくるとは、、、といったところでしょうか。 力学を理解するのに数式は避けて通れません…

許容応力度がよくわかる:これだけは知っておきたい設計の基本

建物の安全性を検証する方法はいくつかあります。その中で最も基本となるのが、「建物の各部材に損傷が生じていないか」を確認する計算です。 そして、損傷が生じているかいないかの判断に用いられる指標が「許容応力度」です。 許容応力度は材料ごとに違い…

偏心するのは悪いこと?偏心率と力学と構造バランスの話

同じ工務店が、同じ規模、同じ壁の量で、建物を隣同士で建てます。しかし、地震が起こった時に片方は倒壊したが、もう片方は軽微な損傷で済んだ、そんなことが起こり得ます。これは壁配置のバランスの良し悪しが影響しています。壁配置の評価の基本である偏…