バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

優秀な社員の共通点:構造設計者として評価されるということ

ゼネコンにおける設計部、特に構造設計は高学歴の人間が集まってきます。有名な大学の院まで出ているのが大半で、勉強ができることは前提条件です。 □■□疑問■□■ 構造設計では、どういう人が評価され、出世していくのでしょうか。学歴は関係がありますか。 □■…

建築における構造最適化の功罪:アナログ構造設計者のぼやき

世の中、何でもかんでも合理化、最適化がなされ、無駄がそぎ落とされています。建築の世界も遅れてはいますが例外ではありません。 □■□疑問■□■ 建物をもっと合理的に造ることは可能でしょうか。コンピュータの処理能力が向上している昨今、建築物のような巨…

博士になって変わること、変わらないこと:ゼネコン博士の現状

ブログタイトルにあるように、著者のバッコは博士(工学)です。 □■□疑問■□■ 民間企業に勤める博士の数はまだまだ少ないようですが、何か特典やインセンティブのようなものはあるのでしょうか。 □■□回答■□■ 企業ごとに様々だと思いますので、ある大手ゼネコ…

トラス構造とラーメン構造:軸力による伝達と曲げによる伝達の違い

三角(△)の組み合わせでできているのがトラス構造、四角(□)の組み合わせでできているのがラーメン構造です。 □■□疑問■□■ トラス構造とラーメン構造の違いは何でしょうか。実際の設計において、どのように使い分けているのでしょうか。 □■□回答■□■ トラス…

有限要素法(FEM)と建築の親和性:安易な適用にはご用心

建物の構造解析モデルは線材要素(太さを考慮しない要素)とばねの組み合わせでできています。 □■□疑問■□■ 有限要素法を用いれば各部材の厚さ、太さを考慮した高精度な解析が可能です。解析の制度が向上することで新しい建物の設計が可能になることはあるで…

あえて壊すという設計はありか?マンションの雑壁に見る余剰耐力

大地震後、建物が倒壊に至らなくても補修が困難な場合は建て替えが行われます。 □■□疑問■□■ 地震後に壁という壁が全てビリビリにひび割れたマンションの映像を見ることがあります。しっかりと設計されていてもあれだけの被害が生じるのでしょうか。 □■□回答■…

超高強度材料は建築を変えるか:超高張力鋼と超高強度コンクリート

建物が巨大化、高層化するにつれ、材料の高強度化も進んでいます。 □■□疑問■□■ 昔に比べてとても強いコンクリートや鋼材が開発されています。もっと細い材料だけでできた軽快な建築物が今後増えていくのでしょうか。 □■□回答■□■ 従来の製品に比べコンクリー…

免震構造がよくわかる:固有周期・振動モード・エネルギー吸収

1995年の兵庫県南部地震以降、免震建物の着工数は大幅に上昇しました。今ではかなりの数の免震建物が日本中にあります。 □■□疑問■□■ 免震構造とは結局のところどういう建物を指すのでしょうか。「地震を免れる」と言われてもよくわかりません。 耐震・制振・…

静定構造と不静定構造の実建物における違い:力学と実現象の架け橋

構造力学の授業でまず習うのが「静定構造」、その次に習うのが「不静定構造」です。 □■□疑問■□■ 「静定構造」と「不静定構造」が具体的にどういうものなのかわかりません。また、構造設計の際にどのように使い分けするのでしょうか。 □■□回答■□■ 「静定構造…

竹中工務店の超高層制振マンション:THE制振ダブル心柱システムの考察

スーパーゼネコン各社のタワーマンション用の制振、免震システムの考察もとりあえず最終回となる5回目です。 □■□疑問■□■ 竹中工務店の独自技術、THE制振ダブル心柱を採用したマンションの性能はどうでしょうか。 大林:DFS(デュアル・フレーム・システム) …

空気で浮かぶエアー断震は免震よりも優秀か?法律は置いておくとして

空を飛んでいれば地震も怖くない、構造設計者なら誰しも一度は考えたことがあるアイディアです。 □■□疑問■□■ 宙に浮く建物「エアー断震」がテレビで取り上げられていました。耐震や制振はもとより、免震よりも優れた性能を発揮するのでしょうか。 □■□回答■□■…

自己修復コンクリートは有用か?構造設計者の視点から考察

日々新しい構法、材料が生まれています。技術者は常にアンテナを張っておかなくてはなりません。 □■□疑問■□■ 自己修復コンクリートというものがあると聞きました。コンクリートのひび割れが自然に修復するのであれば、複数回の地震にも問題なく耐えられるの…

構造に関する相談窓口:構造設計一級建築士に相談してみませんか

困ったときに相談に乗ってくれる人がいるのはありがたいことです。それが弁護士や医者などの専門性の高い人であれば、とても助かることが多いと思います。では構造設計一級建築士だとどうでしょうか。 お客様の中に構造設計一級建築士の方はいらっしゃいます…

月に家を建てよう:重力が無くなると家の構造はどうなるか

「重力が無ければなぁ」、これは構造設計者より、構造設計者に「できません」と言われる意匠設計者の方が感じることかもしれません。 □■□疑問■□■ 将来人間が地球外の惑星に住むとしたら、その家はどのような構造になるでしょうか。重力が小さくなれば、非常…

大成建設の超高層制振マンション:TASS Flex-FRAMEの考察

スーパーゼネコン各社のタワーマンション用の制振、免震システムの考察も4回目となりました。 □■□疑問■□■ 大成建設の独自技術、TASS Flex-FRAME(タス・フレックス・フレーム)を採用したマンションの性能はどうでしょうか。 大林:DFS(デュアル・フレーム…

実建物におけるピン接合と剛接合:構造設計における本音と建て前

構造力学の授業で必ず出てくるのが「ピン接合」と「剛接合」です。 □■□疑問■□■ 「ピン接合」と「剛接合」が具体的にどういうものなのかわかりません。また、構造設計の際にどのように使い分けするのでしょうか。 □■□回答■□■ 「ピン接合」、「剛接合」ともに…

偏心するのは悪いこと?偏心率と力学と構造バランスの話

同じ工務店が、同じ規模、同じ壁の量で、建物を隣同士で建てます。しかし、地震が起こった時に片方は倒壊したが、もう片方は軽微な損傷で済んだ、そんなことが起こり得ます。これは壁配置のバランスの良し悪しが影響しています。壁配置の評価の基本である偏…

最上階であっても柱を細くできない3つの理由:振動モードと力学の基本

通常、建物の柱や壁は下の階ほど強くなっています。 □■□疑問■□■ 下の階ほど柱や壁の負担が大きくなるのは感覚的によくわかります。それなら上の階の柱ほど細くできると思うのですが、大して細くなっているようにも思えません。 □■□回答■□■ 上の階ほど柱が細…

鉄筋コンクリートの家づくり:工事監理をしないと大変なことに

一級建築士をやっていると、個人的に「家を設計してくれ」と言われることがあります。構造が専門なので他を当たってもらうのが常なのですが、そのときは同僚の意匠設計者から「構造を見てくれ」と言われたので引き受けました。 RC造、壁式構造、スキップフロ…

清水建設の超高層免震マンション:スイングセーバーの考察

スーパーゼネコン各社がタワーマンション用の制振、免震システムの開発を競っています。 □■□疑問■□■ 清水建設の独自技術、スイングセーバーを採用したマンションの性能はどうでしょうか。 大林:DFS(デュアル・フレーム・システム) 鹿島:スーパーRCフレー…

大手設計事務所・ゼネコン設計部に新卒で就職するには学歴が全て

自分が楽しめること、成長できることを軸に就職先を選ぶ人も増えてきているでしょうが、やはり大手狙いの安定志向というのは依然として強いです。 □■□疑問■□■ 将来、大きなプロジェクトに設計者として携わりたいと思っています。大手の設計事務所、ゼネコン…

学生必見!構造設計者になる前にやっておきたい3つのこと

あの時もっと勉強しときゃ良かった。エンジニアに限らず、社会人がよく嘆いています。 □■□疑問■□■ 将来、設計事務所かゼネコンの設計部で構造設計をやりたいと考えています。今のうちにやっておいた方がよいことはあるでしょうか。 □■□回答■□■ 仕事をしてい…

構造設計一級建築士試験体験記:勉強法と有資格者の位置づけ

一級建築士合格後、5年以上の実務を積んで初めて受験資格が得られる構造設計一級建築士試験。ゼネコンの設計部員から見た試験について記したいと思います。 構造設計一級建築士とは 資格の位置づけ 受験者数から見る構造設計 講義 勉強方法 スタート地点 過…

兵庫県南部地震を経験して:構造設計者が振り返る阪神・淡路大震災

1995年1月17日午前5時46分、激しい揺れが神戸市周辺を襲いました。兵庫県南部地震です。 兵庫県南部地震の再体験 構造設計者が感じた兵庫県南部地震 巨大な実験施設 日本の構造デザイン 兵庫県南部地震の再体験 地震発生当時はまだ10代の前半で、ことの重大…

制振・制震ダンパーの種類と特徴:構造設計者が効果を徹底比較

制振構造はエネルギー吸収を行うダンパー(制振装置)の設置方法やその種類等によって、いろいろと分類することができます。 □■□疑問■□■ いろいろな種類のダンパーがあり、どれがいいのかわかりません。違いや特徴を教えてください。 □■□回答■□■ 使用する材…

制振・制震構造がよくわかる:アクティブ制振からパッシブ制振まで

「制振」と表記されたり「制震」と表記されたり、耐震や免震と比べてわかりにくいのが制振構造。ただ、住宅展示場に行くと木造住宅の多くに適用されており、今や標準装備の様相を呈しています。 □■□疑問■□■ 制振構造とは結局のところどういう建物を指すので…

コンクリートのひび割れは当たり前?マンションも戸建住宅も

念願の新居を購入し、ウキウキした気分の入居の日、建物にひび割れが入っているのを見つけたらどうしましょう。 □■□疑問■□■ コンクリートの壁や基礎をよく見てみると、そこかしこにひび割れが入っています。強度や耐久性に悪影響はないのでしょうか。 □■□回…

鹿島建設の超高層制振マンション:スーパーRCフレーム構法の考察

東日本大震災以前から耐震性能の高いタワーマンションを建設するべく技術開発を進めていた会社があります。 □■□疑問■□■ 鹿島建設の独自技術、スーパーRCフレーム構法を採用したマンションの性能はどうでしょうか。 大林:DFS(デュアル・フレーム・システム…

耐震構造がよくわかる:許容応力度計算から保有水平耐力計算まで

住宅展示場やモデルルームで必ず目にする「耐震」「制振(制震)」「免震」という用語。巷にはこれらの用語の説明が溢れていますが、実際のところ玉石混淆で結局は判断を下す材料になり得ていないです。 □■□疑問■□■ 耐震構造とは結局のところどういう建物を…

一級建築士試験体験記:学科と製図と勉強法と

建築の道を志して社会に出た若者の前に立ちはだかるのが一級建築士試験。少し前の話になってしまいますが、合格までの体験を記したいと思います。 旧試験と新試験の違い 受験資格 試験構成 難易度 学科試験 勉強方法:学生時代 勉強方法:社会人以降 試験当…