バッコ博士の構造塾

建物の安全性について本当のプロが綴る構造に特化したブログ

2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

優秀な建築士の見分け方:構造に関するたった2つの質問

建物が地震に対して強いかどうかは「構造設計者の技量で決まる」と当ブログでは一貫して主張しています。 □■□疑問■□■ 優秀な建築士かどうかはどうすれば判断できますか。簡単な判別方法があれば教えてください。 □■□回答■□■ デザインやプランニングに関して…

スーパーゼネコン各社の特徴:技術開発の方向性から会社方針を比較

大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店、この建設大手5社をスーパーゼネコンと呼びます。 □■□疑問■□■ スーパーゼネコン各社の技術力に違いはあるでしょうか。外からではその違いが判りません。 □■□回答■□■ 得意不得意はありますが、全体としては…

大林組の超高層マンション:制振システムDFSの考察

タワーマンションが乱立し、タワーマンションであるというだけでは市場で埋没してしまいます。新たな付加価値を持ったタワーマンションが求められています。 □■□疑問■□■ 大林組の独自技術、DFS(Dual Frame System:デュアル・フレーム・システム)を採用し…

こんな家住みたくない:構造設計一級建築士が避ける建物

構造設計者だからと言って、強い家に住んでいるとは限りません。でも、わざわざ弱い家に住もうとは思いません。 □■□疑問■□■ 構造設計者が「こんな家にだけは住みたくない」と感じる住宅・マンションがあれば教えてください。 □■□回答■□■ 1981年の耐震基準改…

木造住宅に構造計算は必要か?計算よりも大事なこと

小規模な建築物は、建物の安全性を検証する「構造計算」を行わなくても建設することができます。 □■□疑問■□■ 一般の木造住宅では構造計算がなされていないと聞きました。大地震に対して十分な耐震性が確保されているか不安です。 □■□回答■□■ 構造計算されて…

コンクリート主任技士試験の勉強法:小論文より4択重視で一発合格

コンクリート技士の上位資格であるコンクリート主任技士。少し前の話になってしまいますが、合格までの体験を記したいと思います。 ゼネコン設計部社員がコンクリート主任技士を受けるまで 試験構成と合格率 試験構成 合格率 勉強方法:過去問→テキスト→小論…

RC造マンションの耐震補強:強くするだけが能じゃない

1981年以前の建物は、現行の耐震基準を満たしていない「既存不適格」の物件が多くなっています。 □■□疑問■□■ RC造(鉄筋コンクリート造)のマンションの耐震補強を検討していますが、どのような補強方法があるのでしょうか。古い建物でも十分な安全性を確保…

超高層ビルの高さの限界:ブルジュハリファを超えて

今も昔も、人は高いものに憧れ、心奪われる生き物のようです。高さの追及は、いつの時代であっても魅力的に映るのでしょう。 □■□疑問■□■ 現在世界一高いビルはドバイのブルジュハリファですが、お金に糸目をつけない場合、一体どれくらいの高さのビルが建て…

耐震偽装事件:姉歯建築士の構造設計を再考する

2005年の11月に、姉歯元一級建築士が建物の安全性を検証した「構造計算書」の偽装を行っていることが明らかになりました。 □■□疑問■□■ 耐震性が国の基準を全く満たせていないといった報道が当時なされていましたが、2011年には東北地方太平洋沖地震が起こっ…

コンクリート強度:マンション購入前に知っておきたいRC造の基本

多くの分譲マンションは鉄筋コンクリート構造を採用しています。コンクリートはその見た目が同じでも、強さには非常に大きな開きがあります。 □■□疑問■□■マンションの広告等で「コンクリート強度が○○MPa(または○○N/mm2)」と書かれていますが、どの程度の値…

免震構造と縦揺れの関係:構造の専門家が丁寧に解説

地震が発生すると、水平方向(横揺れ)だけでなく鉛直方向(縦揺れ)にも地盤が振動します。 □■□疑問■□■ 免震は横揺れにしか効果が無いと聞きました。縦揺れに対しても安全なのでしょうか。 □■□回答■□■ まず問題ありません。縦揺れに対して、耐震建物も免震…

構造設計者の住まい:専門家がどんな家に住んでいるか聞いてみた

建物の強さの現状をよく知っている構造設計者ですが、自宅を設計することは稀です。 □■□疑問■□■ 構造設計者はどういった基準で住まいを選ぶのでしょうか。 □■□回答■□■ 値段、間取り、立地、その他みなさんが重視することと基本的には同じです。もちろん構造…

設計事務所とゼネコン設計部の違い:あなたはどちら向き

建物の設計を行うという意味では同じ仕事をしている「設計事務所」と「ゼネコン設計部」。では「自社ビルを建てたい」と思ったときにまず声を掛けるべきは設計事務所とゼネコンのどちらでしょうか。「設計を生涯の仕事にしたい」と思ったときに何を基準に就…

建物の重さの話 :耐震性・安全性を計る基礎の基礎

構造設計を行う際、建物の重さは非常に重要な指標になります。重力にせよ地震にせよ、構造部材が負担しなくてはならない力は重さに比例します。 □■□疑問■□■ 建物が重いことはわかりますが、いったいどのくらい重たいのでしょうか。 □■□回答■□■ 構造の種類、…

免震建物を支える免震ゴム:強くて柔らかいを実現する秘密

兵庫県南部地震以降、免震建物の建設数は格段に増え、2015年末現在でビル、戸建住宅合わせて約9000棟に達します。 □■□疑問■□■ 免震建物は柔らかいゴムで支えられているというのは本当でしょうか。重量が何千トン、何万トンとある建物を支えられるのが不思議…

五重塔はなぜ倒れない:構造のわからなさがわかる話

1400年以上の歴史を誇る法隆寺五重塔。その他、日本全国にいくつもの五重塔が現存しており、今なお構造技術者を惹き付けて止みません。 □■□疑問■□■ 五重塔は非常に耐震性が高く、地震で倒れたものは無いと言われています。それはなぜでしょうか。そして現代…

家づくり体験記:構造のプロが犯した2つの失敗

「紺屋の白袴」と言うが、「建築家の借家」も言えそうだ、と何かの記事で読んだことがあります。建築士も多忙なので、なかなか自分の家にまで手が回らないのでしょうか。意匠設計者が自宅の設計をしたという話はチラホラ聞きますが、構造設計者ではかなり少…

木造住宅なら耐震で十分である:構造の専門家がたどり着いた結論

家づくりに正解はありませんし、建て主の数だけ正解があるとも言えます。また、耐震性については地震があるまで正解かどうか答え合わせすらできません。それでも「正解が知りたい」というのが人情です。 □■□疑問■□■ 耐震・制振・免震のメリット、デメリット…

制振構造の限界は?効くほど効かなくなるダンパーのジレンマ

建物が揺れるエネルギーを吸収する装置「ダンパー」を設置した建物が「制振」です。免震でもダンパーを使用しますので、どちらに使用するダンパーなのか区別するために「制振ダンパー」と呼ぶこともあります。 制振・制震ダンパーの種類と特徴:構造設計者が…

博士で構造設計一級建築士でコンクリート主任技士:バッコとは?

当ブログ執筆者のプロフィールの紹介をしておこうと思います。 客観的事実:こんな資格を持っている人です 外的モチベーション:知りたいこと、知れてます? 内的モチベーション:知りたいこと、教えられます 客観的事実:こんな資格を持っている人です 生年…

タワーマンションの何階が安全?超高層ビルの地震時の揺れを徹底解説

タワーマンションが増え、サラリーマン家庭でも手が届く値段の物件も出てきました。供用設備が充実しているものが多く、高層階では素晴らしい眺望が期待できます。 ただ、いくら魅力的な物件でも「絶対に購入しない」と決めている人たちもいます。 それは、…

構造設計一級建築士試験の本当の難易度:ここ数年の合格率と一級建築士との違い

2008年から一級建築士の上位資格である「構造設計一級建築士」、「設備設計一級建築士」が新設されました。比較的新しい両資格ですが、いったいどのくらい難易度が高い資格なのでしょうか。 まずその前段の「一級建築士試験」ですが、合格率は1割強と低く、…

建築士の専門分化:意匠屋さん本当に構造わかってる?

科学技術分野の進展は目覚ましく、あらゆる分野で専門分化が進んでいます。建築の分野も例外でなく、建築士が網羅すべき範囲は広く、深くなっていく一方です。 では、一人ひとりの建築士は住宅のこと、マンションのこと、建物のことをどの程度理解しているの…

溶接閉鎖鉄筋:マンション購入前に知っておきたいRC造の基本

コンクリートの柱には主筋と帯筋という2種類の鉄筋が配置されています。柱と平行の太い鉄筋が「主筋」で、この主筋を取り囲んでいる細い鉄筋が「帯筋」です。 主筋とせん断補強筋(帯筋・あばら筋):各鉄筋の役割と違い マンションの広告、パンフレット等…

住宅展示場探訪:ハウスメーカーの営業に構造の説明をしてもらった

モデルハウス、モデルルームが好きです。 どちらかというとモデルルームの方が好きなのですが、一度にたくさんの建物を見ることができる住宅展示場は楽しいですね。ついつい営業の方にマニアックな質問をしてしまうこともあります。 思ったような答えが返っ…

耐震・制振・免震:メリット・デメリット以前に知っておくべき性能の違い

いろいろなサイトで「耐震・制振(制震)・免震」の違いや特徴が紹介されています。 超高層マンションのチラシには「ダンパー」や「積層ゴム」といった専門用語が並び、ハウスメーカー各社は建物の揺れを止めるための様々な装置を開発しています。 では結局…

「剛性」と「強度」の違い:剛性と強度のどちらが大きいと安全なの?

お客さんから建物の耐震性に関する質問を受ける機会がありますが、「剛性」と「強度」を混同してしまっている場合がチラホラあります。 「剛性」とは「硬さ」、「強度」とは「強さ」のことで、両者は全く違う意味を持つ言葉です。しかし、剛性が大きいものほ…

壁のダブル配筋とは:マンション購入前に知っておきたいRC造の基本

コンクリートの壁には縦と横にそれぞれ鉄筋が配置されています。この縦と横の鉄筋の組が壁の中に1組配置されていることを「シングル配筋」、2組配置されていることを「ダブル配筋」といいます。 マンションの広告やパンフレットの中には、「このマンションで…